私と奉仕

私と奉仕


「どうしようかしら……」


ソファでご主人様に抱きつかれたまま、私は1人呟いた。

女だけで外を歩けば、色々と面倒な事もある。

今日はその「面倒な事」があり、皆で屋敷に戻るタイミングがズレてしまった。

彼女の頭を撫でながら、私は考えを巡らせる。

力こそ弱いが、しがみついて離れようとしないご主人様。

普段とは違う弱々しい姿に、邪な感情が湧いてしまう。


「ご主人様、せっかくだから普段出来ない事をしたくない?」


顎に手を添え、こちらに顔を向けさせる。

うん。と頷いた彼女に着替えたいから離れるように伝え、共に更衣室へ向かう。


「スーツの洗濯は大変でしょう?」


外出用のスーツから蟲惑魔の服へ着替え、中庭にある私の領域まで歩く。

甘い匂いが漂い、握ったご主人様の手が熱くなるのを感じる。

シトリス、と私の名を呼ぶ彼女に微笑むと何をするのか説明する。


「どうかしらご主人様。今日はここで抱いてあげようと思うのだけど」


顔を僅かに赤くしてこくこくと頷くご主人様。

そのまま花から零れた蜜が広がった空間を彼女と歩き、匂いを嗅ぐだけで獲物を興奮させるそれを下準備に使う。

その中心にある葉で作ったベッドに辿り着くと、ご主人様と共に座る。

荒く息をする彼女はすっかり出来上がっており、とろんとした目で私を見つめてきた。


「順番に行きましょうね」


ご主人様の身体を押し倒して唇を奪う。

舌を入れようとするが、唇は固く閉ざされて表面をなぞる事しかできない。

抵抗の意味を理解した私は彼女の胸に手を伸ばす。

自分よりも小さなそれを掴み、優しく揉むと口が開いて甘い声が漏れた。

その隙を逃さず舌を入れ、中を舐めとるように舌を動かしていく。

酸素を奪うようにキスを続け、しばらくして口を離すとその間に銀色の糸が出来上がる。

それが切れるのを見届けると、ご主人様に話しかける。


「貴方はもう囚われの身、ここで私に食べられるのよ。大丈夫、怖くないわ……気持ち良くしてあげる」


服を脱がせて下着を取り、裸にさせると腹の上に馬乗りして引き寄せた花から蜜を掬う。

彼女の視線は蜜に固定され、その瞳は期待に満ちていた。


「香りだけでこんなに興奮して……直接塗ったらどうなると思う?」


口先だけの拒絶を無視し、両手で胸に触れる。

撫でるように手を動かし、時には揉んで蜜を塗り込んでいく。

ご主人様の身体がのけぞり、びくびくと震える度に口から言葉にならない声が上がる。


「気に入ってくれて嬉しいけど、まだ終わってないわ」


少し落ち着かせた所で触れていなかった乳首を指で摘む。

再び身体がのけぞり、今度はぷしゃりと音を立てて潮を吹く。


「凄いでしょう?もっと気持ち良くなって良いのよ?」


馬乗りをやめて後ろに下がり、動けない彼女の脚を開いて蜜に濡れた手を秘裂に近付ける。


「ここにも塗ってあげるわね」


ご主人様が頭を起こしてこちらを見ているのを確認すると、既に違う蜜で濡れたそこへ指を入れて愛撫を始める。


「もうこんなにして……いけない子ね」


何度も私の名を呼ぶ彼女の声が心を昂らせ、天井をなぞるように指を動かすと強く締め付けられる。


「イキそう?良いわ、好きなだけ気持ち良くなって大丈夫よ」


限界を告げられ、天井をなぞりながら指を引き抜くとご主人様の身体が跳ねて再び潮を吹いた。

それが私の体へかかり、白い服に染みを作る。


「またお漏らしするほど良かったのね」


短時間で絶頂を繰り返し脱力した彼女の身体を眺め、まだ触れていない場所がある事に気づく。

秘裂の上部に顔を近づけてそこから顔を出す淫核を口に含み、強く吸い上げた。

意識の外からそれに触れられたせいか、叫び声にも似た嬌声が耳に響く。

腰を捻り逃げ出そうとするご主人様の太ももに腕を絡めて抑え、更に淫核を舌で転がして愛撫し続ける。

彼女の身体が何度も震え、絶頂した事を教えてくれる。

震えが止まってから口を離し、ご主人様の様子を確認する。


「ご主人様?ちょっとやり過ぎたかしら……?」


意識を失った彼女の身体を抱き寄せて呟く。

そのまま屋敷に戻ろうとして、自分の口が愛液まみれな事を思い出す。

勿体無いと思いつつも腕で口を拭い、ご主人様の身体を持ち上げる。


「まだ帰って来ないのかしら……」


屋敷の扉まで来ると、帰ってきたジーナと出会う。


「あらジーナ、遅かったわね?」


「お嬢が捕まらないから目標にされてね、撒くのに手間取ったよ」


そう言いながら扉を開けてくれる彼女に続き、浴室へ向かう。


「それにしても貴方、変わったわね」


「変わった?」


「ええ、昔の貴方なら私にご主人様を預けたりしなかったでしょうね」


2人で廊下を歩き、会話を続ける。

ジーナは私の言葉を聞いて、小さく笑った。


「僕は君達を無条件で信用してる訳じゃないよ」


「そうかしら?昔は私達から目を離すこともしなかったのに……」


「そうだね」


脱衣所に来ると彼女が振り返る。その表情は穏やかで、私の腕で眠るご主人様に視線を向けていた。


「お嬢が君達を愛して信頼しているから……僕はそれに従ってるだけだよ」


「愛して、信頼……」


ジーナの言葉を繰り返し、私は考える。

私がご主人様を抱くと提案した時、彼女はそれをすぐに受け入れた。

寂しさを紛らわせる為の言い訳で、本当は私がそうしたかっただけなのに。


「君もお嬢を愛しているんだろう?」


「そうね……私もご主人様を愛してる」


産まれた時から自由なんて無いと思っていた。

ヒトに買われて見た事もない服に着替えさせられ、見えない鎖で繋がれたように生きると思った。


ごめんね、もっと温もりが欲しくて……嫌なら拒んでくれてもいい。


そう弱々しく私を抱き締めるご主人様の姿を思い出す。

あの時のジーナとリセはその姿をどこか呆れたような目で見て、それでも「仕方ないな」という顔をしていた。


貴方の事を知って、寄り添うから……私を好きになってくれると嬉しいな。


私がヒトに牙を剥く事を考えてない訳ではない。むしろそれでも構わないと語る視線に、心を奪われたのだ。


「ほんと、お嬢には敵わないな」


「そうね……」


会話が途切れると同時に、腕の中のご主人様が目を覚ます。


「そうだ、早くシャワーを……」


ご主人様はジーナを見つけると私の腕から降り、ジーナに抱きついた。


「苦しいよ、お嬢……ただいま。遅れてごめん」


強く抱き合う2人を見て、微笑んでいると。


「お嬢様、なんで裸なの!?」


「旦那様……?」


リセとアロメルスの声を聞いた彼女はジーナから離れ、今度は帰ってきた2人を抱きしめる。


「ごめん、ちょっとしつこかったから帰るの遅れちゃった」


「結局2人で締め上げたから……遅れて申し訳ないわ」


苦しそうに話し、抱き返す2人。

もう少しそのままでいさせてあげたいけど、ご主人様は裸だ。

軽く手を叩き、こちらに注目させる。


「皆無事に帰って来たし、ご主人様が風邪をひく前にお風呂にしましょう?」


「賛成だね。さあお嬢、僕と入ろうか」


いつの間にか裸になったジーナが彼女の手を取り、共に浴室へ入る。


「私達もいるんだけど?いくら最古参とは言え、旦那様の独占は許せないわ!」


「お嬢様の独占はんたーい!」


それにアロメルスとリセが続いて行く。


「今日は私の1人勝ち、で良いかしら?」


名前を呼ぶご主人様の声が聞こえ、それに従って私も浴室へ向かう。

これからも彼女の愛に応え続けよう。ご主人様が好きだから。



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