私が知った世界

私が知った世界

 


これは私の姉が風邪にかかり念のために、大きな病院に行った時の話です。姉が心配だった私は父に必死に駄々をこねて一緒について行きました。幸いにも深刻な問題は見つからず薬を貰い帰ろうとした時、それは起こりました。

チュドーン‼︎‼︎

「ふざけんなぁ‼︎このヤブ医者がぁ‼︎」

目の前で道化のメイクを施した大男が病院の一角を吹き飛ばしながらそう叫んでいるのを見て

幼かった当時の私は何が起こっているのかすぐにはわかりませんでした…。一瞬の静寂の後次々と人々が騒ぎ始め、先に我に帰った父が「フ、フロー‼︎逃げるぞこっちだ‼︎ついてきなさい‼︎」と姉を抱きかかえながら私の手を引っ張り、病院の外へといの一番に駆け出しました。


「大丈夫か⁈フロー!急に引っ張ってしまってすまないどこか怪我はないか⁈」必死に私に声をかける父になんとか私は返事を返しました。周りの方々も次々と外へ避難していた時、先ほどの騒ぎを起こした大男が入り口から男の子を連れながら出てきました。まさか人質を?何故こんなことを?グルグルと頭の中で考えが回ってはいましたが幼かった私はその大男を見ながら怯えるしかありませんでした。…その時です。誰が最初にその言葉を放ったのかは今では覚えていません。しかしその言葉には幾万の恐怖と怯えが籠っていたのを覚えています。

「おい…あの子供フレバンスの生き残りじゃないのか⁈」

「フレバンスって…あの″白い町〟の!?」

その言葉と共に恐怖と怯えが人に感染していくのを私は子供ながらに…いえ、子供だったからこそまざまざ感じとりましたーー

「そ、そんな!みんな逃げろ!白鉛病だ感染するぞ‼︎」

「いやぁ‼︎なんで滅んだ国の人間が生き残っているのよ⁈」

「おい‼︎海兵は何してるんだ⁈早くあいつらを捕まえ…いや!撃ち殺せ!」

ーーーそれが化膿し悪意と化していくのも

人々の心無い言葉が聞こえたのでしょう、青筋を浮かべた大男が睨みつけてきました。

「テメェら何も知らずに‼︎コイツを……」しかし、その叫び声は続くことはありませんでした。胸元に抱かれた少年が何かを呟くと男は悔しさを滲ませなながら踵を返してその場を去って行きました…。

「ああ…まさか白鉛病がまだ残ってるなんて!すまない二人とも!こんなことなら出歩かず医者を館に呼ぶべきだった。ともかくこの場を早く離れよう……クソッ海賊王があんなことをしでかしてからといもの年々治安が悪化してきている!」そう言いながら私の手を離ないよう強く握り父は帰路に着きました…。

ーー何が違うのだろう

私はふと私を心配する父の顔とあの大男が雪のように白い肌をした少年に向けた顔を思い浮かべながら考えました。何が違うのだろうかあの少年と私…あの大男が彼の親なのかは分からない…だか大切にしているのは分かった。だってあの顔は父が私と姉を心配している時にする顔と何も変わらなかったから…同じ親から心配されるもの同士、何も違わない筈なのに…本当ならあんなことをしでかした大男の方が悪い筈なのに…人々はまるで命を脅かす悪魔を見るかのように、本来守られる立場にいるべき筈の小さな命を見つめていました…。それを私は父に聞く事はできませんでした。ただ強く握られた手の痛みを感じさせない程の言いようの無い胸の痛みを抱えながらその場を離れることしかできませんでした。…これが私の幼き頃に知った私が治療すべき病の一つ断たねばなるまい病原菌の一つの話…


Report Page