私が奪ったんだ
ウタ「何・・・これ・・・?」
電電虫『ウタという少女は危険だ! あの子の歌は世界を滅ぼす!』
アト「お姉ちゃん、ゴードンがご飯できたって・・・お姉ちゃんそれって・・・!?」
ウタ「じゃあ、何、シャンクスじゃないの? 私が歌ったせいでみんなが・・・アトが・・・」
アト「違う! 違うよお姉ちゃん!」
ウタ「ごめん、ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい、アト! ごめんなさい、シャンクス! ごめんなさい、みんな! 私が私のせいでアトからシャンクスを引き離しちゃって!!! 私がアトから全部・・・、全部・・・!」
アト「違うの! 違うんだよ、お姉ちゃん・・・! 私だよ、私が奪ったんだよお姉ちゃん!!!」
ウタ「・・・アト?」
アト「あの日、私が楽譜を渡したせい! お姉ちゃんがああなったのは私のせいなんだよ!!! 」
ウタ「どうして・・・?」
アト「私、お姉ちゃんにあの日嫉妬してたの! お姉ちゃんはいつもみんなのお姫様で明るくてキラキラしてて・・・。あの日はより一層輝いて見えた! シャンクスにも抱きつかれてた!」
ウタ「・・・」
アト「だから私には読めない楽譜を渡したの! そうしたら、そうしたら・・・ウタにもできないことがあるって安心したくて、でもあんなことになって…!!」
アト「ごめん、なさい。ごめんなさい! ずっと黙っててごめんなさい! ウタからシャンクスを奪ってごめんなさい! ごめんなさい…ごめんなさい…」
ウタ「アト」
アト「!!」
ウタ「私ね、アトにはずっと嫉妬してたんだよ。私には描けないきれいな絵でシャンクスたちを喜ばせて衣装のデザインだって私よりも上手。」
アト「お、ね、ぇ、ちゃん?」
ウタ「だからいつも負けられないって思ってたんだ。だから、私もそんなことがあったらアトに嫉妬してたかも」
アト「どうして?」
ウタ「アトは悪くない」
アト「ねぇどうして?」
ウタ「アトは優しいから抱え込んだだけだよ、だからもう一度いうねアトは悪くない」
アト「あんなことがあったのに・・・!」
ウタ「アトは誰よりも優しくて素敵なシャンクスの娘」
アト「どうして私を抱きしめてくれるの!?」
ウタ「アトが苦しんでいるならいくらでも抱きしめるよ、アトがアトを許せないなら、私からのお願い。お願いします、アト。アトという優しい子をどうか許してあげてください」
アト「おねぇ、おねえちゃああああああああああああああああああああああああんんん!!!」
ウタ「よしよし、泣き虫さん・・・」
アト「ありがとうね、お姉ちゃん」
ウタ「ううん、大丈夫だよ。それにこっちこそごめんね、私も取り乱しちゃった」
アト「それでお姉ちゃん、この件は・・・」
ウタ「・・・アトに任せるよ。アトが好きなようにして」
アト「う、うん。わかったよお姉ちゃん。この電電虫もそうするよ」
ウタ「ほーらっ、こんな時間だしゴードンさんも待ってるだろうし、はやく行った行った! 私はこの散らかしを片付けるから!」
アト「う、うん。そうだね、ありがとうお姉ちゃん。何から何まで…」
ウタ「大丈夫! 私は『お姉ちゃん』なんだよ?」
アト「うん! じゃあ先に行くね!」
アト「やっぱりお姉ちゃんはすごいや。私の悩みなんて全部吹き飛ばしちゃう。お姉ちゃんほど強いひと、私シャンクス以外にみたことない! そうだよね、あれはあの楽譜が悪いし誰も悪くない!」
アト「・・・ゴードンにはちゃんと話さないとね。でも怖いな…」
アト「そういえば、どうしてゴードンのことお姉ちゃんはさん付けで呼んだだろう?」
ゴードン「アト、ずいぶん遅かったがウタはよべたかい?」
アト「うん、お姉ちゃんはあとからくるって」
ゴードン「そうかい、では先に食べ始めよう」
アト「うん」
『大丈夫! 私は『お姉ちゃん』なんだよ?』
どこが?
『アトという優しい子をどうか許してあげてください』
嗤わせるどの口がほざいた?
『アトに嫉妬してたかも』
かも? 実際嫉妬していただろうが卑しき大淫婦めっ
ウタ「私は嫉妬していた。あの子は悪くない」
『ウタという少女は危険だ! あの子の歌は世界を滅ぼす!』
ウタ「言うとおりだ、危険なのは私、あの子は巻き込まれた」
大虐殺を起こした上に家族の絆すら破壊した
これを悪魔と呼ばずしてなんと呼ぶ?
ウタ「そうだ、私のせいだ…私がエレジアも! ゴードンも! シャンクスも! アトも! みんな! みんな! みんな! みんな! みんな!」
ウタ「私が奪ったんだ」
(副題:UTA ALL ALONG)
ならたった1つだけ方法がある
『みんな』を救う方法が
『みんな』が望む方法が
ウタ「それって・・・」
本当はわかっているのだろう?
やらなければ何も償えないぞ?
ウタ「・・・わかったよ、やるよ。私」
ウタ「私は歌姫じゃない、救世主になる。そしてアトをシャンクスたちにもう一度引き合わせる!」
ウタ「そのために、『謌(ウタ)を歌う』」