禁断の楽園

禁断の楽園


花の魔術師の導きを受け、ストームボーダーにより、突如として観測された、一切の情報が不明、否、理解不能な異聞帯へと突入したノウム・カルデア。彼らの目に映ったものは禁断により荒廃した、楽園の残骸だった。

「これは・・・」

地は辺り一面の焼け野原。遠くには山脈と僅かな森も見えるものの、どちらも枯れ果てている。

「空想樹はここからじゃ確認できないな、異聞帯である以上どこかには必ずあるはずなんだが」

「まずは周囲の安全確認と調査だね。ここが異聞帯である以上必ず、村や町があるはずだ。まずはそこを探そう。幸い今回は強力なサーヴァントが4」

ダ・ヴィンチの言葉を遮り警告音が流れる。

「っレーダーに反応アリ。1,いやその後から3,5,あーもう。ぞろぞろ出てきた!」

「モニターに出します」


「最初に出てきたドラゴンが、後ろから出てきた白い人型の生物に追われてる・・・?」

「このままじゃあのドラゴンさんが・・・先輩!」

「もちろん。出して新所長!」

「まだなにも分かってないんだぞ!?まったく、無茶だけはしないように。いいね?」

「「はい!」」

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

「戦闘終了。面白みのない戦いでした。面白くても別に、うれしくはありませんが」

「一体一体は別に強くなかったな。これがこの世界の人間なのか?そうは全く見えないんだが・・・」

「大丈夫?!」

「どんな状態だ?」

「かなり弱っていますね。できる限りはしますが、そもそもどのような治療が効果的か、すらわかりません。こちらのリソースにも限度が有りますので、そこはご了承を」

とりあえずドラゴンをストームボーダーへ運ぼうとしたところで、

「またレーダーに反応ですー。先ほどと異なる反応が5つこっちに。さらにその後ろから先ほどと同じ反応が・・・わー沢山」






「あっ一体が突っ込みましたね。おー凄い速度で減っていきます。ただ他の4体と、うち漏らしは依然進行方向変わらずです」

 

 

  

「えーと・・・。これはいったいなんだね?」

「ハム・・・スター?」

「はい。映像を見る限りどう見てもハムスターです」

「いやどう考えたっておかしいだろ!?なんでハムスターが武器を持って戦ってるんだよ!?」

「南米も恐竜だったし、そもそもカドックのところも・・・」

「ハムスターが三匹、女性剣士が一名、無数の人型存在、接触まであとわずかです」

 

ハムカツがぼやく。

「あーもう次から次へわらわらと!わいらにだって限界はあるんやで!」

やけくそ気味にボスカツが応じる。

「ちっ。いっそ全力であいつらを潰してから探すか?」

「いいや、ここはモルト殿が押しとどめている間に、ラフルル・ラブ殿を探すべきでござる」

二人?を抑えるのはカツえもん。通称病むカツだ。

最後にアイラが続く。

「いきなりドレミ団から離脱して行ったけど一体どうして・・・しかもボルトロンのD2フィールドがある方向に・・・とにかく助けないと!」

「ちょ、前になんかおるで?!なんやアレ?」

「スノーフェアリー風・・・ではなさそうでござる」

「じゃあモルトとかアイラと同じヒューマノイド爆か?」

「うーん。あの2人からは火の力を全く感じないから違うと思う。それよりあのドラゴン一体なんなの?それこそモルトのガイギンガと同じくらいの圧を感じるんだけど!?」

「あれは・・・ラフルル・ラブ殿?!」

「思いっきり捕まっとるで!」

「でも禁断の力も感じないよ・・・?」

「ちっ。めんどうな感じやな・・・とにかく助けるで!」

 

「俺とハムカツで引き付けるから、その間にカツえもんとアイラで・・・」

「ううん。あのドラゴンが本当にガイギンガと同じ強さなら、私たち全員が万全の状態でも無理。それに、それ以外のドラゴンも、一瞬見えた気がするし・・・」

「話してる間にモルトから逃れた奴らがきたで!このままじゃどっち道、挟み撃ちや!」

「こうなれば、死力を尽くしてラフルル・ラブ殿を救出し、離脱するのみでござる」

・・・

 

「えーと。思いっ切り敵認定されてません?」

「うん。ラムダリリスのペンギン(リヴァイアサン)を借りて音声を拾ってみたけど、思いっ切り誤解されてるね」

「なんで笑顔で言ってるのかね?!」

「簡単なことです。少なくとも先ほどの謎の人型存在と違い、言葉が通じるということですから。あとは誤解を解くだけです」

「確かに言葉が通じるなら可能性はあるだろうが・・・なんかすっごい覚悟決めてない?」

「・・・・・・あの二人のコミュニケーション能力に期待しましょう」

「おい!いやまぁあの二人なら大丈夫だとは思うが・・・」

・・・

「さあいくでぇー革命チェンジ」

「おう。こいやこれで・・・」

「ストーーップ!!話を聞い・・・っ」

2人の影からカルデアのマスターを狙ったカツえもんの剣を、サーヴァントが迎撃する。

「くっ。阻まれたでござるか」

「ねえマスター。とりあえず四肢を切り裂いて大人しくさせない?」

「さすがにそれは・・・」

「私たちの話を聞いて下さい!私たちはあのドラゴンさんを助けようとしてるのです!」

「はぁ。何ゆうて・・・」

「まずいよ!追いつかれた!私一人で抑えきるのは無理だとは思う!」

「くっ・・・。いや、わいらハムカツ団は最後まで諦めへんで!!」

「だから話を聞いてって!あれはこっちで引き受けるから!」

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

「はいおしまい。キス・アンド・クライの用意はできていて?」

「とりあえず、今のでこちらにきた個体は最後みたいだ。後ろに残ってたのも全部倒されたようだからひとまず安心と言っていいだろう」

「それで、あんたらは一体なんなんや?侵略者やらイニシャルズとかとはちゃうみたいやけど」

「私たちはノウム・カルデア・・・

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・ということなのです」

 

「ええと、つまりわいらの世界は滅ぼしにきたけど、わいらの敵ちゅーわけでもないってことであってるかいな?」

「はい。その認識で間違いないかと」

「それは・・・その・・・なんちゅうか」

現在の状況がかなりややこしいことを知り、ハムカツ達の言葉が途切れる。

「まぁ、わいらが誤解して、あんたらを攻撃したのは事実や、すまんかった」

「すまん」

「すまんでござる」

「ごめんなさい」

「いやあれは完全にしょうがないよ。ただ、もしできるならこの世界について色々教えてくれると嬉しい。特にラフルル・ラブさんを助ける方法とか」

「お任せやで。いまどんな状態なんや」

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

「これは・・・思ったよりもひどいんな・・・モルトはん‘‘アレ‘‘もってへんか?」

「すまない、持ってない。侵略者とイニシャルズのせいで職人も減った上に材料が手に入らないからな・・・」

「すみません。‘‘アレ‘‘とは一体何でしょうか?」

「ん?ああそれは――」

 

「――はい?」

「すみません。もう一度言ってもらえるでしょうか?」

「だからカレーパンや、カレーパン。まさか・・・そっちにはないんか!?」

「いえ、カレーパンと呼ばれるものは存在していますが・・・」

「外はカリッとサクサク、中は熱々の激辛絶品カレーパンさえあれば・・・」

「(なんかシレっと要求が上がってないか?)」

「ともかく、私たちの知ってるカレーパンと概ね同じと考えてよさそうだね?それなら任せてくれたまえ。なんてったパン作りの達人がいるからね!」

「そうですね。新所長なら安心して任せられます」

「ここで私に回ってくるのかね?!ええい!任せたまえ!藤丸くん!キミ達はカレーを作りなさい。カレーパン用のカレーについては技術顧問に聞くこと!」(水分量とかが違うらしい)

・・・

 

 

 

「ということなので、手伝って下さい!!」

「・・・事情は概ね把握させてもらった。しかしなぜ私を・・・?私が好むものはカレーではなく麻婆豆腐なのだが・・・」(アジ・ダカーハ繋がり)

「それが、カレンさん、エリセさんも呼んでみたのですが・・・この異聞帯では残念ながらお二人とも来られないようでして」

「そうか・・・私は神父であり、今はカルデアのサーヴァントだ。求められたからには応じよう。どこまで力になれるかはわからないがね」

「はい!よろしくお願いします」

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

「「「完成だ!!

しました!」」」

「お手伝い頂きありがとうございました」

「いや。私は手を貸したにすぎんよ。完成させたのは君たちだ。では私はこれで」

「こっこれは、正にカリッとサクサク、中は熱々の激辛絶品カレーパンや!!これなら・・・」

「ですが、意識を失っているラフルル・ラブさんに、どうやって食べさせるのですか?」

「?そりゃあもちろん、――こうや!!」

「ああ!!意識を失っているラフルル・ラブさんの口に強引に激辛アツアツカレーパンを!!」

 

「あっつあついあついあついあついからいからいからいあついからいあついからいあつからしみませせんみじゅもらへえまふか?」

「「ホントに起きたぁ?!!」」

「当然や!!カレーパンは毒だろうと病気だろうと治し、体にあふれんばかりの力が漲る最強食品やで!!」

「そうだったんですね・・・」

「あの!!みじゅ、みじゅを!!!」

「はいすみません。こちらです!どうぞ!!」

・・・

「ううぅ。まだ口の中が辛い、というか痛い・・・」

「もう一杯、お水をお持ちしましょうか?」

「い、いえ大丈夫です。それよりも早くここから――」

「レーダーに反応あり!また先ほどと同じ個体です」

「また?!一体どれだけ・・・」

「ここにはVのマスター・イニシャルズ『ボルトロン』の支配領域です。ここにいる限り、定期的に来ます。一度離脱しましょう。話はその後に!」

「わかった!ただラフルル・ラブくんはストームボーダーに入れる?」

「あっ私、人型にもなれるので大丈夫です!」


「そうだったんか!?わいらそんなことできへんで・・・」

「とにかく乗って!直ぐにだすよ!」

・・・・・・・・・

「ここまでくれば、どこの支配領域でもないから大丈夫やで!」

「了解しました。キャプテン」

「わかってる。しばらくはこの空域にとどまる。対空監視を厳に」

「それで、ラフルル・ラブ、どうしてドレミ団から離れたんだ?あそこはミラダンテⅫがいるおかげで唯一完全な状態でイニシャルズに抵抗してただろ」

「ええ、それは——」

[それは、ワタシがミラダンテⅫに配下の一人をこちらに回してほしいと、要求したからだよ]

「っ!通信!?どこから!?」

[話はワタシの開発したステルス性ドローンで聞かせて貰った。こんにちは、異なる世界からの来訪者よ。ワタシこそが真の天才、『伝説の正体 ギュウジン丸』だ]


「先輩、恐らくこの方が黒幕です」

「ああそうだなキリエライト。間違いない、なにせ自分で正体だと言っていたからな」

「ダ・ヴィンチちゃん逆探知はどう?」

[キミ達・・・この天才を一体なんだと思っているのかね?]

「ふざけんなや!そもそもクリーチャーにウイルスを感染させて侵略者にしたのも、ドキンダムXが禁断解放して大暴れする原因をつくったのもみんなお前やないかい!そのせいで・・・団長も!!」

[その件についてはワタシにも思うところがある。よってドキンダムXを制御する手段を完成させようとしているのだが・・・]

「だが、やんや?」

[ワタシが海底の研究施設を出ている間に、イニシャルズに乗っ取られてしまってね。更に悪いことに、ワタシが乗っていた正体不明はエネルギー切れ、その直ぐ近くにVのマスター・イニシャルズのD2フィールドを貼られてしまったんだ]

「・・・つまり自分じゃ動けないから助けてくれってことか?」

「はい。私はあのか・・・ミラダンテⅫ様からVのイニシャルズの目をかいくぐり協力者と合流するように言われていました」

[そう。キミにはワタシの研究を手伝っ]

「いえ。一度合流したらさっさと帰ってきていいとのことでした」

[ひょっとしてミラダンテⅫくんもワタシの事が嫌いなのだろうか・・・]

「この大陸にお前のことが好きな奴がいるわけないやろ」

「間違いなく禁断を止めるために渋々だろ」

「私に命じた時も心底嫌そうでした」

[全く・・・天才が導くべき・・・いや、今はそれよりもだ、ワタシはこの地点にいる。Vのマスター・イニシャルズを討伐し合流して欲しい]

「倒す必要はあるのか?避けながら行けば・・・」

[どの道倒さねばならない。それにそのサイズの船では隠蔽も不可能だ。かといって少数行動は余り推奨できない。ミラダンテⅫくんはやむを得ないと判断したようだが]

「それはなぜ?」

「レッドゾーンや。団長とミラダンテとデス・ザ・ロストでようやく倒したはずのバケモンで・・・団長の宿敵や。音速を越えて突っ込んでくるヤツに適うのなんて現状じゃ、それこそミラダンテⅫくらいなもんやで」

[と、いうわけだ。なにワタシもここからでもサポートしよう。まずこのドローンの映像と音声をそちらにも共有しようじゃないか]

「うわ!すごーい!これこの大陸全土の詳細データだ!!」

[ワタシは天才だからね、この程度などいとも容易い。ただD2フィールドの中までは確認できないし、映像にはズレがある。レッドゾーンには気が付けないからそこは注意したまえ、ではここで一旦通信は切らせて貰う。ここからそちらに通信するのにも結構なエネルギーがかかっているのでね。無論、正体不明の起動に必要なエネルギーには程遠いのだが]

「勝手なことだけ言って切りよった・・・」

「なんで燃費が悪いこと自慢してるんだ?アイツ」

「どうせ。ワタシの作った物はこんなにも凄い!と自慢したいだけでしょう。ミラダンテⅫ様の足元にも及びませんね」

「みんな凄い辛辣だな・・・元凶のようだし当然といえば当然だが」

「実際これは受けた方がいい・・・よね?」

「技術力からして天才の自称に偽りはないのでしょうが、ハムカツ氏達の発言が気になります。ギュウジン丸について詳しく聞かせて貰えますか?」

「ああ。とは言ってもさっき行ったことが大体なんやけどな。なんでも、昔はこのランド大陸で研究者やってたらしいんや、んでいつからか『より良く導くために天才が支配するのは当然』とか頭オカシイこと言い出してランド大陸から追放されたはずやったんだが――」

「実は戻ってたんだ。そしてウイルスを作成して「侵略の日」を起こしてクリーチャーを侵略者に変えた。」

「後は見たままです。このランド大陸に封印されていた『伝説の禁断ドキンダムX』を禁断解放して平和な楽園を地獄に変えた。最もドキンダムXが大暴れしているのは予想外だったようですね。だからこそ、こうしてドレミ団やあなた方に連絡をしているのでしょうけど」

「結構な危険人物だね・・・」

「ですが利害は一致しています。協力することは可能でしょう。あとは――」

「ハムカツ達はどう?」

「・・・団長はみんなを守るために戦ったんや。ならハムカツ団もみんなを守るために戦うで」

「そうだな。オレ達だけじゃ精々、マスター・イニシャルズ一体が限界だろう。協力するしかないさ」

「私はもともとミラダンテⅫ様から言われていますので」

「決まり、だね」

「ではこれより、Vのマスター・イニシャルズの討伐及び、ギュウジン丸との接触に向けての計画を立てましょう。先ずはVのマスター・イニシャルズについてです。なにか知っている情報はありますか?」

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