🚢✖️祭(リバ前提)

※擬人化(ｳﾏﾐﾐ)

※背後注意

誤字脱字あったらごめんなさい

「よっしゃ！今日こそお前に勝って！思いっきりお前のこと見下してやる」

「はっ、そう言ってこの間ヒンヒン鳴いてたのは何処のどいつだよ。吠え面かかされても知らねえぞ」

バチバチと火花が散る様な緊張感の中、勝負の火蓋は切って落とされる。

それが例え、あまりにも似つかわしくない絢爛な一室の中であってもだ。

『は～い、ゴルシちゃんの勝ち～』

煩く騒ぎ立てるでもなく、ただただ勝ち誇った様にニヤつくその顔と声色が先程から何度もリフレインする。

ああ、チクショウ。

今日も勝って、散々煽りちらしてやろうと思っていたのに。アイツの泣き顔を拝み倒してやるつもりで来たというのに。

そんな思考は、一瞬強くなった快感によって簡単に中断される。

「う、ぁっ…」

「こんな時に考え事か？イケないなぁ、ナカヤマ君は」

そう言って尻尾の付け根を掌で擽る様に撫でられ思わず腰が引ける。

いかにも遊び人です、とでもいう様な風貌と態度をしている癖にコイツの行為には性急さが全くない。むしろ真逆だ。

身体中を弄られじわじわと与えられる快感に、もどかしさや不満を覚えることは多々あれど抵抗することはない。敗者は大人しく、唇を噛んでその歯痒い波に耐え忍ぶだけだ。

とは言ってもだ。いくら勝負とはいえ所詮は子供じみたお遊び。その勝敗如きになぜこうも従順なのか、側から見ればただただ疑問だろう。

口で説明するのは難しい。そもそも説明するだけの確かな理由があるのかと言われればきっとNOだ。

だがそれでも俺たちにとって『賭け』は絶対で、その結果が持つ『絶対性』は揺るぎないものなのだ。コイツとの関係はずっとそういうものだった。ただそれだけで良いのだと思う。

「は…っ、」

自身の吐く息が段々と荒くなり、熱っぽくなっていくのが嫌でも分かる。

前回あれだけ得意気にアイツを見下ろしてやった顔が、目が、熱を帯びて変化していくのを見られたくなくて自分よりもデカい図体の肩口に顔面を押し付けた。

「顔隠すなよ、お前が何時も言ってんじゃん」

ぐい、とやや力任せに引き剥がされながらいつの間にかシャツの中に潜り込んだ手が素肌に触れ、腰や腹を撫であげていく。此方を覗き込むその射抜く様な視線が、今この瞬間自分にだけ注がれていると一瞬でも意識してしまえばそれだけで堪らない気持ちになる。

全くもってどうしたものか。ひとたび自分が受け入れる側に回っただけで、こうも思考が『乙女チック』になってしまう。気色悪いこと甚だしい。

これ以上この思考の渦に囚われることにどうにも我慢ならなくなり、目の前の胸ぐらを掴んで噛み付く様にキスをする。

「…早くしろよエロ親父。触り方がねちっこいんだよ」

「あ？ゴルシちゃんの方がぴちぴちだろうが…お前こそ年上の癖にみっともねえ顔しやがって。」

俺に抱かれたくて堪らない癖に。言外にそう告げたいのがひしひしと伝わってくる。

…ああ、だから嫌だ。こうも自信満々に、今更俺の事なんか全てお見通しだと言わんばかりに断じるコイツの言動に滅法弱いと気付いたのは割と最近のことだった。そしてそれに一切抗えず分かり易い態度を見せてしまう自分にも。

「…ほんっとに可愛いなあ、フェスタは」

「…っ、シップ」

“ここ”でしか呼ばない互いの名を口にすれば、完全にスイッチが入る音がした。

百面相の如く変化する表情を楽しみながらも、ギラギラと目の前の獲物を捕食する様な光を奥にたたえ此方を見据えるその瞳に歯向かう意思など持ち合わせているはずもなく。

じわじわと熾火の様に燃える熱を感じながら、これから訪れる『敗者』の享楽をただ黙って享受するのみであった。