神裂くモノ「前編」
私は、その場所に走っていた。
理由は明快、恋人であるアナスタシアが攫われたから。
攫ったやつの素性は掴めている。
特異系一位……通称「最強」だ。
そして、私は「最強」の家に辿り着いた。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
轟音が聞こえる。
アナスタシアが抵抗しているのだろう、早く向かわなければ。
エレベーターは止まっているが……100階建てのビルなど、途中の部屋に侵入して階段で登ればいい。
そう考え、私は30階に侵入した。
「あと、70階……」
……なりふり構っている暇はない、床を壊してでも上がる。
拳を一回振るい、50階まで飛び上
拳を二回振るい、70階まで飛び上がる。
拳を三回振るい、90階まで飛び上がる。
もう一度拳を振るい、屋上に到達した。
「随分早かったわね、飛行系の能力でも持っていたのかしら?」
「……殺す」
私は一瞬にして距離を詰め、殴り掛かろうとするが……向きが反転し、私は落ちかける。
空気を蹴って再度距離を詰め、今度は刀を振るう。
向きが反転する。
このままじゃ、埒が開かない。
「まぁ、いいわ。いいものを見せてあげる」
奴はアナスタシアを掴み上げ、その頭に何かをつけた。
「さあ、貴方はこれに勝てるかしら?」
そういい、その女は消え失せた。