神すら変える出逢い

神すら変える出逢い


我は太陽神に連なる生まれである。苛烈でありながら温かな恵みをもたらす陽光も、静かに寄り添うように優しく照らす月光も、荒々しく強かな生命を育む大海原の煌めきも親しみを抱くものであった。何より我は刀鍛冶の祖神である。鋼を熱し邪悪を祓い、時として職人の眼をも焼く焔は権能そのものだ。

故に、おおよそ“光”と呼ばれるものは身近な存在であり強く心を揺さぶられるようなものでは無い、そう認識していた──御影玲王に出逢うまでは。


神代から存在する天津神の価値観が、今更変わる訳が無い。その筈だった。しかし我が名と同じ姓を持つが故に、験担ぎの一環として自身を祀る社に連れてこられた幼子に目を引かれた。目を離せなかった。その魂が、あまりにも美しかったのだ。

一切の瑕疵も曇りもなく光り輝く無垢な魂。空の彼方にて煌めく星々のように、人を導く才を持つ魂。陽光とも、月光とも、大海原とも、焔とも異なる美しさ。

とある国では“焼き焦がすもの/光り輝くもの”を意味する星。最も明るい恒星。青星-シリウス-の如く眩き魂。


神代に比べ、今の世は人と神の距離は遠くなっている。外つ国に比べればまだ縁が深いとは言え、そう気軽に人の子に寵愛を授けられる時代ではない。重々承知している。それでも、もう御影玲王に出逢っていない頃には戻れないので。見なかったことには出来ない程に、その魂の煌めきに眼を焼かれてしまったので──ただ御影玲王の側にいて、その輝きを見守る為だけの分御霊を生み出した。


どのような存在であろうとも、その魂を曇らせる者は許さない。たとえ自分自身であったとしても、余計な干渉をして美しき人の子を歪ませる者を許すことなどあろうものか。その眩い魂が輪廻から外れるその時まで、幾度見送ることになろうとも、我が分御霊は永遠に側で見守り続けよう。それ程までに、我は──ありのままのお前を、御影玲王を愛している。


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