硝子探偵

硝子探偵


俺は風祭。しがない探偵だ。ある探偵に弟子入りし、現在は助手しながらも自身で難事件、怪事件を解決している。

今回はそんな俺に出来た弟子のような存在、斎藤硝太少年について少し話をしたいと思う。

彼との出会いは師匠、 財界探偵越前はじめがある芸能プロから受けた依頼だった。

『ある人物の周りで複数の不審死が起きている。十中八九、件の人物が関わっているが証拠が出てこない。謎を暴いてくれ』

本来は師匠が調べるはずだったが師匠は別件の事件、「無人タンクローリーが財界の重鎮が集まるホテルに突っ込み爆発炎上」させた事件の捜査に参加することになり、俺に任された。

調べてみると確かに件の人物にはすぐに行き着いた。

カミキヒカル、芸能プロダクション社長をしている人物でかつては劇団に所属し役者としても活動していた時期がある。

確かに彼の周りでは不自然なぐらいに

「自殺」「事故死」「病死」といった自然死のオンパレード。

そして行方不明の四文字が並ぶ。

予想以上に怪事件かつ難事件の予感がしたのは忘れられない。

その聞き込みや地道な調査で不審死や行方不明者の周りに正体不明の存在が現れていることがわかった。 

陰気な長身痩躯、体の線が出ない服装、顔を見せないような帽子、髪型…怪しいが正体が掴めないそんな存在。

ある自殺者は「ブギーマンに殺される」と喚きながら飛び降りたことから一部捜査員は「ブギーマン」と呼び関係性は無いのか調べていたらしいが現れることが殆どなく、事件との関連性が掴めず、注意喚起されるだけだったそうな。

だが、その「ブギーマン」の特徴を洗う中である人物との共通する仕草と癖を見つけた。

貝原亮介。

かの有名なアイドル、星野アイを殺した加害者である。

彼は自殺した、と聞いているが…まさか…と思いながら調べていくとカミキヒカルはそれぞれ星野アイ、貝原亮介に接点があることに気づいた。

繋がりを整理し、動きを調べて行くうちに15年前の彼ら、らしき少年二人組の足取りを掴み、俺は気づくと宮崎の高千穂まで飛んでいた。

そこである医師の遺体を発見した芸能人の集団とその家族…斉藤硝太と出会い、彼の洞察力、観察力を見込み

共にこの事件を捜査するようになった…そんな経緯だ。

色々大変だったが、事件解決後は探偵としての仕事もやり出した彼に仕事を回して2人で調査したり、彼に此方が依頼することもある。

事件解決してから2年が経った今、彼は本来副業だった家政夫の仕事を主としながら探偵業を営んでいる。

「横領して逃亡した四宮グループの一部長探せ、か…死体で見つかって欲しいなぁ…生きていたら後の方が可哀想だし」

電話で調査を依頼するとびっくりするほど冷淡な反応が彼から帰ってきた。

少しスレて来た気がする。

「おいおい…生きていて貰わないと此方が困るからやめてくれ。○んでいたら俺は同期を調べないといけなくなる」

「よりにもよって龍珠組にもちょっかいかけてトンズラとかアホでしょう?僕これから稼ぎ先の漫画家先生の修羅場をフォローとかいう激務もあるのに」

こちらの非難に嘆息混じりで返す彼。確かに、会社の金を横領したあげく取引先の企業の知的財産権が絡む機密を海外に流出させようとする、と理解に苦しむ2コンボ決めたのには呆れしか無いのは分かる。

よりにもよってあの日本最大の暴力団、龍珠組傘下の企業に手を出した、というのには。

「斉藤くんから俺に依頼したんだろ?

探偵稼業の箔をつけたい、現状家政夫業がメインだ

と。いつかの君に貸した恩を返すと思って欲しいね。

まあ早く見つければ誰も死ななくて済む。

頼むよ斉藤硝太くん」

「宮崎の件や諸々の件出されると困りますね…

わかりました。7日以内に調べて送ります。小心者で金がイタズラにあるヤツの動きは分かりますし」

彼は調べ物が異常に上手い。彼が7日以内というなら4日で調べ上げるだろう。

「斉藤くん、対象の家族はいち早く保護してくれ。最悪当人が吊るされるのは自業自得だが家族まで連座で沈められたり、魚の餌は可哀想だからな」

見せしめ、人質、報復…龍珠はこの手の行為を嫌ってはいるが必要とあればやる強さと怖さがある。

バカ本人は死のうが仕方ないが巻き込まれる側は可哀想だ。

「ええ、いち早く保護したら専門の人間に逃げさせます。ではまた風祭さん」

「ああ、また。」

そして彼は言葉通り1週間以内、僅か4日で全ての仕事を終わらしたのだった

「お疲れ。よく奴さんの潜伏先分かったな」

「分かった、というか分析してですかね。あの手の奴はとにかく今いる場所から離れようとしますから。高跳びが計画的なら大変でしたがやらかして、ですからね。

まずは国内、人が少なくて顔が割れない、即座に逃げられる、となると都心から離れて九州あたりにまず逃げるかなぁと

後は個人の嗜好を考えて…でしょうか。

ご家族も早めに確保して逃し屋に引き渡したので一先ずは安全でしょう。

…当の本人は堀の中ですけど」

事もなさげに言ってのけるが、追うことに関しては一級品だ。彼という人材は武器になる。

「またよろしく頼むよ。龍珠から伝言だ…

『今度顔を出せ』だとさ。あちらのブラックリストのやつを横からかっさらって警察に引き渡したからなぁ…

死にはしないが、滅茶苦茶怖いかも?あっはっは」

「彼女に対しての不義理はしていませんが知らない仲じゃないですからねぇ…怪しい動きしてる組員のリスト渡したら機嫌が収まるとおもいます?」

後日斉藤くん曰く、「滅茶苦茶怖い人に無言で囲まれた後に出てきた龍珠さんが笑顔で怖かった」そうな。


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