砂に埋もれた夢

砂に埋もれた夢


砂に埋もれた住宅街をただ歩く、空気は乾燥していて喉が焼け付くようだ。

この砂に覆われた世界で独りぼっちになって、そのまま自分も埋もれてしまうのではないか。そんな危機感を抱いてしまう。

だけど、私にはアビドスの皆さんがいる。だから私は生きていける。

そう、思っていた。


「.........ぁ」


私の居場所は、私の学校は、アビドスは、見るも無残に取り壊されていた。

先輩たちとしゃべった教室も、後輩たちと遊んだ校庭も、夢を語った生徒会室も、何もかも。

容赦なく壊れていく。重機によって崩壊していく。

やめて、こわさないで、わたしの、わたしの────


気づけば駆け出していた。砂で足場も悪いのに、惨めに。何かから逃げるように。

いや、分かってる。逃げているのは現実だ。子供のように泣きわめいて、見ないようにしてるだけだ。


「あうぅ!?」


私に体力も体幹もないのは分かってる。だからすぐに砂に足を取られて転んでしまった。

痛みを堪えながら立ち上がる。そこにあったのは───砂に埋もれた後輩たちだった。

ノノミ、シロコ、アヤネ、セリカ────皆が血まみれで、砂に埋もれていたのだ。

砂は朱色に染まっていて、後輩たちと一緒に帰ったいつの日かの空のようだった。


「嫌、嫌、嫌、嫌、イヤァァァァァァァァァ!!!!!!!!」


叫びながらおぼつかない足取りで走る、走る、走る。

目的地なんかない。もう、帰るべき場所もない。

走って、走って、走った末に疲労で前に倒れてしまう。

『にえちゃん、どうして守れなかったと思う?』

『簡単なことだよ。それはニエちゃんが無能で、役立たずだったから』

『もっとニエちゃんに才能があれば、アビドスはきっと救えたよ?』

「ごめ、ごめんなさい先輩。ごめんなさい...........」

『そんな悪い子なニエちゃんには、ほら、叱ってくれる人がいるでしょ?』


ぷるぷると震える腕で顔を上げると


「ホシ、ノ.........?」


うつむいていて、表情は分からない。けれど、ショットガンを私にむけて引き金に指を添えているのは分かる。

そのままホシノは私の頭に銃口を突き付けて、そして────




目が覚めた。吐き気が襲ってきた。

吐しゃ物をまき散らしながらお手洗いへと急ぐ。

なんとか洗面所までたどり着くと胃の中のものをすべて吐き出した。


「ハァ、ハァ、ウプッ」


なんとか少しずつ落ち着いてきて、顔を上げると


『ニエちゃん』


とっさに後ろを振り向く。当たり前だがあるのは吐き散らした私の吐しゃ物のみ。

私の横に映った、見慣れた先輩の姿などどこにもいないのだ。

私は吐しゃ物の掃除をして、再びベッドで横になった。

その日はもう一睡も出来なかった。

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