石に花咲く/枯れ木に花

石に花咲く/枯れ木に花



「Ninna nanna(ねんね ねんね)

o mio bimbo,(私の赤ちゃん)

chiudi i rai〜…(目を閉じて)

……あッ♡みひゃ……吸いすぎ…」

今の状況を簡潔に説明するぞ!!!ロレンツォが子守唄を口ずさみながら俺のペニスをしごいてきてる!俺は赤ちゃん!!!

何言ってんだよ意味わかんねえ。

というか酒に酔ってハイになって感覚の麻痺してる俺の体はクソ興奮してても心についてこなくて中々勃たなくて、勃てなくて。

ロレンツォも最初は余裕そうだったのに今じゃ半泣きになりながら上下に扱いてて面白い。かわいそー。

というかロレンツォのふともも硬すぎて笑えるんだけど。ガチガチじゃん。

カッチカチじゃん。

でも上半身はネスよりもペラくて薄くて。(いやまあ比べるものでもないと思うけど)

優しく、時に強く絶妙な力加減で健気にいじってくる様子を見てクソ興奮して、手持ち無沙汰な俺はロレンツォの乳首を口に含んで転がしてみたら。

その途端低くて慈愛に満ちたようなハミングまじりの声が媚声に変わった。

「おいおい、母親はそんなことしないぞー?」

「あっ……!♡く…くそが、きッ♡♡」

そう言って濡れてべしょべしょになった顔で、アイメイクのよれて腫れた目で反抗的に言ってきたので再度口に入れてコリコリと飴玉の様に舐めまわした。

「ッだ、♡だめっ♡♡」

いやそこはだぁーじゃないのかよ。

「子守唄」

「はぇ?」

「俺は赤ちゃんだぞ。子守唄しろや」

「………chiudi i rai〜(目を閉じて)

su te veglia del popolo………a♡

l'affetto(人々の愛情があなたを見守っている)

ッ〜!♡……e il nome da tutti è benedetto

(そしてあなたの名前は皆から祝福されている)

Michael…♡」

そうやってねと〜っとした毒みたいな声で俺の名を呼んでくると同時に俺の愚息からもドッ…と出てきて。ロレンツォの手をぬと〜っとよごして。

それを見たロレンツォはベロっと手を舐めたあとに口内を見せつけにきて、衝動的に噛み付く様なキスをした。

歯が当たって普通に痛かったし俺の精子の味がして苦くて不味くて臭くて死ぬかと思った。 

なあロレンツォ、俺の名を呼んでよ。 

そう思ったらつい声にも出てしまったようで。

ポカンとした表情をしたあとに優しく抱きしめられて。

とっとっとって言うロレンツォの心臓の音が肌を通じて伝わってきて。

優しくさすってくるロレンツォの指の硬さと暖かさが伝わってきて。

「みひゃ…大丈夫……だぁいじょーぶ」って甘く言ってくるロレンツォの声が耳まで届いて。

俺がミヒャエルならこいつは聖母マリアなのだろうか……なんておもいながら俺の意識は微睡に沈んでいって。

最後にきこえたのは、ごめんねと謝ってくる悲しげなロレンツォの声で…。

俺が悪いんだと伝える前に意識はブツっとそこで途切れた。



****

「ロレンツォ遅いなぁ……」

一応遅くなるとは伝えられていたけど今はもうすでに0時をゆうにまわった時間で。

いやまあ、俺にロレンツォを縛る権利などないのだけど一応扶養義務があるし……。

‥違うな。そんな言葉で片付けてはダメだ。

ロレンツォが心配だからこうして待っているんだ。

いつもはアスリートとしての体のことも考えて、自堕落な生活を思い返さないためにも積んでる業務がない場合は23時には寝るのに律儀に待っているのは心配で大切だからだ。

………あの時突き放したのは、はたして正解だったのだろうか?

俺にとってのロレンツォは子のような一番弟子のようなそういった立場で。

ロレンツォにとってもきっとそうだと思っていて。

だから拒否した。その線引きを踏み越えてはダメだと思ったから。

それが、その拒絶が。 

俺にできるロレンツォへの心尽くしであり。迷い子の手を引く大人としての責務であり。倫理観の働いた結果であり。そして………。

_____俺なりの愛だったからだ。

でもきっと。

俺にとっての正解がロレンツォの正解ではなくて、あの時の手を握った時の不安そうな安堵した様な表情が頭から離れなくて。バカみたいな言い訳でノエル・ノアまで味方につけて。

話をしようと思ったのに1日避けられて。

ココ3日ほどドイツ棟にこもりきりだけどどうしたのだろう?

本当に友達ならいいんだ。君が本当は恥ずかしがり屋で、寂しがり屋で、自分の事を孤独だと思ってて、自分からはグイグイと行くけれど自分のパーソナルスペースに不用意には入れないということを知っているから。

……君に理解者が出来るなら嬉しいんだ。

依存関係はいけない。

いろんな趣味や仕事や交友といった柱があるならいいけれど、“依存”はその1つがポキっと折れたら完璧に壊れてしまうものだ。

ねえロレンツォ。 

俺はただのマルク・スナッフィーとして願っている。

君が過去のことを気負わずにキラキラとした未来を進めることを願っているから。

君の幸せを願っているから。

……そうやって考え事をしていたら1時を回ってしまった様で、そろそろ今日が差し支えるから寝るかぁ…とため息をこぼした後で、もう一度「ロレンツォ遅いなぁ……」とがらんどうな部屋でつぶやいた。

Report Page