知らない顔を描く

知らない顔を描く


くノ一ちゃんの過去を勝手に捏造しています

あんまりござる口調じゃない

くノ一ちゃんを勝手に母親似にしています

なんか暗い








毎年この時期になると憂鬱になるでござる。

ため息をつきつつ壁にかけられたカレンダーを眺める。

5月の第2日曜日。またの名を母の日。そしてその翌月には父の日があるこの魔の2カ月間は、両親がいない拙者にとっては地獄でしかないでござる。

もう一度ため息をつき、机の上───詳しく言うと机の上の真っ白い画用紙に視線を移す。

『お母さんの似顔絵を描こう』

そう言われて渡された(拙者の場合は誰か好きな親族の方でいいと言われたでござるが)この宿題は、他の子達にとっては簡単でも拙者にとっては無理難題でしかない。

拙者が生まれたその日の死んだ両親の顔なんて覚えているわけがないでござるし、好きな親族なんてもっといるわけがないでござる。一体誰を描けというのか。

いつものように架空の親戚でも描いて出してしまおうか。

本日3回目のため息をついたその時、ふとあることを思い出した。

「お前は母親にそっくりだな」

いつだったか拙者の顔を見た親戚がポツリとそう呟いていたのを聞いたことがあったでござる。

その瞬間とある考えが拙者の灰色の脳を駆け巡った。

───鏡で自分の顔を見ながらその顔そっくりに描けばいいのではござらんか?

考えついてしまえばそれ以上に良い考えが無いように思えてくるので不思議でござる。

急いで立ち上がり引き出しから折りたたみ式の鏡を取り出して開く。

───良かった今年は嘘を描かなくても良さそうでござる。

鏡の中の自分はニッコリと笑っていた。

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