知っていること
白い雪が音もなく舞い落ちてくる。風のない静かな夜に、雪は眠るように地上に降り積もる。地平線の彼方まで続く真っ白な空間は、まるで雲海のようでとても美しい。
私は冬が嫌いだ。
さむいし、冷たい。
川が凍って魚が獲れない。木の実も雪に隠れてしまう。何より、人も暖かい家の中で大人しくしていて、あまり外に出てのない。それが少し寂しい。
私は冬が好きだ
さむいし、冷たい。
でも、冬のつらさを知っている。他のみんなと同じように、私は春を待ち望んでいられる。自然の移り変わりを実感している。
私を包む冷たさが、私に生命の営みを教えてくれる。
私はこの星の一部であり、この星と一体になって生きている。
だから私は待っている。
この星の冬が明けるのを、ずっとここで待っている。
雪が解けたら外に出よう。
川の流れに従って歩いてみよう。
魚を獲って、木の実を拾って。
そして春が来たら、あの花畑に行こう。きっと新しい命がたくさん生まれてるだろう。私はここで待っている。
この星で、ずっと。