真新しい手記・8

真新しい手記・8


新作だー!\太陽万歳!/

執筆お疲れ様です…!


『再会』


今話はジンベエ視点のお話。

ヤーナムでの最初の夜が明けた後のお話。読み進めると今話のタイトル『再会』にも様々な意味が込められているように思えます。


さて物語冒頭、ジンベエは宿の一室にて同室の誰かが飛び起きる音で目が覚めます。

音の立て主はルフィ。「ねえちゃん!」と叫びながら掛け布団を引きずったまま駆け出さんとする尋常じゃない寝起きの行動。その様子にルフィと同室かつ部屋の扉に近い位置のベッドで寝ていたジンベエは慌てて羽織を引っ掛けルフィを先に部屋の外へと飛び出してしまったであろうルフィを追いかけます。

…掛け布団、どうなっちゃったんだ…?

というか他の一味との報連相は…?!

下手すると「朝起きたら船長と操舵士が朝食も取らずに宿を飛び出して行方知らず」なんて事態に…?他の皆は大丈夫なのか…?


朝方のヤーナムにて、その往来で周囲を見回すルフィの背中に追いつき声を掛けるジンベエ。ルフィもそれで漸くジンベエが宿から自分を追いかけてきたのだと気付きます。


「ジンベエ!ローがいんのどこか分かるか?!」


ジンベエと合流早々、ルフィが話を振ります。どうやらローを探していたようですね。

ジンベエが「恐らく教会の建物だろう」「正確な位置は分からん…」と答えると、ルフィは


「ねえちゃんとコラさんを起こさねえと!」


と再び朝のヤーナム市街へと走り出す。

…いやぁこの一連の流れのルフィの勢いの強さと早さ、テンポの良さに比例するかのようなジンベエの内心の困惑の対比がいいですね。

我らが船長に姉もいたのか?

コラさんとは一体誰なのか?

「起こさなければ」とは一体どういう意味合いなのか?

尋ねる暇も無く遠ざかるルフィの背中…

あのルフィが、ジンベエが知る限り食事に目がないルフィが、宿で朝食も取らずに起きたそのままに飛び出して人探し…

その気迫はかつて兄を、エースを救い出さんと動いていたその時を思い出させる程。

そして地味にヤーナムの朝は、いや朝も「人の群れを割って進む」と表現されている辺り、人の往来、その人口の多さを暗に語りかけてくるようです。


街を駆け抜けて進むルフィ、追うジンベエ。

市街を進み、聖堂街と呼ばれる区画にかかる大橋に差し掛かったルフィが人混みに向けて声を上げる。


「ねえちゃーん!」


ルフィの声に応える者はいないが、同時に呼びかけを止める気配もない。

…加盟国ヤーナムはその人口の過密さや人種の坩堝であるからして、家族と離れた者が家族を探すために声を上げる…なんて光景は日常のひとつなのかもな、と思ったり。


「捕まえた!」


ルフィがややあって人混みの中から「姉」と呼んだ人物の腕を掴んだ。

その人物は、"灰の長髪"をつばの広い帽子の内にまとめた"灰の眼"を持つ人物であった。

"ルフィを見下ろしていた"…という描写から、ルフィよりも背が高い事が伺えます。

おや、この人物はまさか…?!と期待に胸を膨らませながら場面は次へと移り変わります。



さぁやってきました次の場面。

切り替わって早々に飛んできたのは…


「で、食事も摂らずにウチまで転がり込んできたってワケね」


…中々に切れ味鋭いお言葉でした。

これにはジンベエも「面目ない…」とちょっぴり萎縮してそうな雰囲気。

呆れながら言葉を掛けてきたのは、幼いながらに孤児院の院長を務めているという「彼女」。

「彼女」は孤児院の子供達にも、先程ルフィが捕まえた「ねえちゃん」らしき人物にして、ルフィとジンベエを現在地である聖堂街の上層にある孤児院へと案内してくれた人物…灰の髪の狩人にも慕われている様子。

「ねえちゃん」らしき人物こと灰の髪の狩人は、恐らくルフィ達に捕まった後に事情を聞き、現在地である孤児院に案内してくれたのでしょう。

そして案内された孤児院にて、朝食も摂らずにここまでやってきたルフィ達に、孤児院の院長でもある「彼女」が朝食と早めの茶菓子を分け与えてくれた…と。

そりゃジンベエさんも「面目ない」って呟きながら頭を下げますわな…


そんなジンベエを余所に、ルフィは「パンとナントカクリームめちゃめちゃウマい!」と爆速で胃に食べ物を詰めている様です。いつもみたいにほっぺをリスやハムスターみたいに膨らませながら食べてるんだろうなぁと絵面が浮かびますね…!

孤児院の院長さんから「スコーンとクロデットクリームね」とのツッコミと共に「全部食べちゃいそうな勢いだけど、そんな調子でよく人探しに出ようと思ったわね…」とまた呆れられます。いやご尤もです…

院長さんの台詞に構う事無く「茶もなんかいい匂いだ!」と話すルフィ。

そんなルフィに「好みに合ったようで良かった」と笑みを浮かべて返す灰の髪の狩人さん…どうやらこの狩人さんは「狩人狩り」とも呼ばれているらしい。


「しかしまさか、彼女に見紛われることがあろうとは」


縁というのはやはり不思議なものだよ、と狩人狩りさんは感慨深げに呟く。

ルフィ達と初めて会った時の衣装から狩人の装束へと着替え、ルフィに飲み干されていく紅茶のおかわりを入れながら…

…この穏やかなそうな一時の中でも、紅茶もスコーンもクロデットクリームも爆速でルフィの胃袋に収められていってるんだろうなと思うとクスリと笑いが込み上げてきます。これしかも朝食をご馳走になってる後なんだよな…よく入るなぁ…


どうやら院長さんも狩人狩りさんもローからルフィに関する話を聞かされていたらしい。

成程、だから初対面であろうルフィ達を招き入れてご飯もご馳走してくれたのか…しかしロー君顔広いね…同じヤーナム出身ってだけでこうも運の良い縁と巡り会えるとは、ルフィ達にとっては幸先の良い事かも知れませんね。


ルフィと狩人狩りさんの会話により、どうやらルフィのいう「コラさん」が狩人狩りさんの狩りの師匠であった事が判明。

そしてルフィの「ねえちゃん」の事も、狩人狩りさんは狩りの師である「コラさん」から聞き及んでいたとの事も。

…ひっそり「コラさん」のフルネームが「コラソン」である事が判明しましたね。


「コラさん」は「コラソン」であり、本当の名前は「ロシナンテ」である…ルフィが思いがけず手に入れたこの情報が、この世界線においてどれほど重要な情報であるかを理解する時は来るのか否か…楽しみであり怖くもあります。


狩人狩りさんの話が終わるや否や、ルフィが「そういやコラさんも黒い羽マントだった!」とポンと手を打ちます。

狩人狩りさんも「師は中々に印象深い姿だったから…君が覚えてくれていたこと、きっとお喜びだろう」と返す。

狩人狩りさんとの「コラさん」の思い出話に太陽のような笑顔を見せるルフィの隣で、ジンベエは一人頭に疑問符を抱えていた。

…ルフィは確か東の海の出身であった筈

…そして狩人と言えばヤーナムの自治組織にして現在は世界政府の"協力"組織…

いったいどのようにしてルフィと知り合ったのか…?

それもただ行き会うだけでなく、姉と呼ばれるまでになる者がいたとは…


疑問符の尽きぬジンベエの姿を見かねたのか、院長さんが思わぬ助け舟を出してくれます。


「もしかしてあんた、船員になんの説明もしてないの?」


と、ルフィへ投げかけたのです。


頭に「??」を浮かべるルフィ。

院長さんは続けます。


「そっちの…ジンベエだっけ?腑に落ちないって顔に書いてあったわよ」…と。

…流石、少女の姿と顔を持っていても孤児院を纏め上げる院長さん。人の様子をよく見ていますね。的確な助け舟だ…


「そうなのか?」とこちらを向くルフィに、ジンベエも「食事のみならず、助け舟まで出されてしまっては仕方がない」と観念し、今までの疑問をルフィに問います。


「ルフィお主、一体いつ、どこでその姉やコラソン、トラファルガー・ローと知り合うた?」

「昔見てた夢だ!」


…ジンベエにしてみたら、なんとも予想外な答えが帰ってきた。

呆気に取られるジンベエを尻目に、ルフィは嬉しそうに言葉を続ける。

…昔、夢に見た屋敷で、ローから"コラさん"やソラというヒーローの様々な話を聞いたこと。

ねえちゃんと呼ばれる人形も一緒にいたこと。

夢の中で応急手当やナイフの扱いを教わり、そうしているうちに基礎的な医学を叩き込まれて船医が仲間になるまではルフィが船員を診ていたこと。

ある日コラさん…コラソンに救われてからは、一度も夢をみなくなっていたこと。

…いや情報量!情報量が!!多い!!

自分だったら理解が追い付かずネットミームが如く背景に宇宙背負うぞ…?


「そんで昨日久々に夢見たと思ったら、ねえちゃんもコラさんも独りぼっちだったんだよ!二人とも起きれなくなってんだ!!」


そう言葉を締めくくるルフィに、ジンベエも漸く朝のルフィの行動に合点がいく


「なるほど。それで『起こす』と言うておったのじゃな」…と。


更に話を同じく聞いていた院長…シュガーが「ふうん…だから現実の二人を探してるんだ」と呟きごちる。

ここで院長のお名前が登場。紅茶に角砂糖を溶かしながら年齢にそぐわぬ思慮を瞳に乗せながら呟くその姿は、彼女が只者ではない事を予感させます…

幼い少女の風貌でありながら孤児院の院長という重役を背負うシュガー…院長というその称号はきっとお飾りのものではないのでしょう。彼女もまた大きな謎を秘めているのでしょうね。

砂糖(シュガー)のように甘くはない、そんな予感がします。


ジンベエはシュガー達を眺めながら、今しがたルフィから聞かされていた自分のように、かつて彼女達もローからルフィの話を聞く折に、同じように「夢の中で出会った」と言われたのだろうかと思案する。


一通り話し終え、シュガー達に「二人は何か知らないか?」と尋ねるルフィ。

「知らない」とスッパリ切り捨てるシュガーですが、「でもそういうことなら…」と「参考人」を呼んでくれる様です。


ルフィ達とシュガー達の茶会の会場となっている孤児院内の中庭。そこに備え付けられていた小ぶりな鐘をシュガーは鳴らしに行きます。

彼女により鳴らされた鐘の音は「重なるような響き」を持ち、「身体が軽くなるような」「考えが明瞭になるような」感覚を得る…

…癒やしの力。悪魔の実の能力にもそのような類のものがあると聞くが、ヤーナムでそれらが道具の形を取っているという噂…その噂は真実であったのかと内心に呟くジンベエ。


鐘の音を聞き、シュガーのいう「参考人」が姿を現す。

現れた女性に、ルフィは目を零れんばかりに見開いた。


「わっ!ホントに来てたんだ!」

「よかった!ちゃんとお礼を言いたかったから」

エレジアの皆を、ゴードンさんを、私を助けてくれてありがとう。


紅白の髪を結い上げた歌姫…ウタは、そうルフィに笑いかけた。



素敵な物語をありがとうございます…!

今回も沢山の新情報に気になるキャラクター達の登場、大変楽しませて頂きました…!


まず狩人狩りさんとシュガーちゃんがこういう形での早速の登場に胸が高鳴りましたね!

ルフィが「ねえちゃん」=人形ちゃんの姿と見間違える形での狩人狩りさんとの邂逅に持っていくのは上手いなぁ…と…!

人形ちゃんはカインハーストの血族たるマリアの似姿、そして狩人狩りさんもまたカインハーストの血族の生き残り…同じ血族であればその姿が似通っていても不思議ではない。

そして狩人狩りさんの案内で聖堂街上層の孤児院、その院長であるシュガーの登場に絡めるとは…!


孤児院での紅茶のくだり、特に「孤児院の子供達は嗅覚が鋭い子が多く、その引き換えに味覚が薄い子らもいるからお茶の香りには気を遣っている」との一文に、あぁ孤児院の子供達って要するに天竜人の落とし子達、獣の血を強く引く子達が多いからか…と一人納得してました。

コラさんも嗅覚鋭かったものね…コラさんは「にんげん」の中で生きてく為にタバコで誤魔化していた一面もありましたね


また「スコーンとクロデットクリーム」や「大きな銀の匙で茶葉を掬う」の一文に、英国ヴィクトリアの仄かな面影を感じて大変にっこり。英国はアフタヌーン・ティーの文化華やぐ紅茶の国だものね。きっと紅茶の淹れ方も拘っているのだろうな、とか思いを馳せてました。


ルフィと狩人狩りさんのコラさんトークに花を咲かせるシーンも大変に好きです…!黒い羽マントの面影は、二人の間に確かに「コラさん」の面影、象徴としてあるのだな、と。

黒い羽マント…烏羽の狩装束は、確かにその意志(遺志)と共に継承されてるのでしょう。師から弟子へと。


またルフィが夢の中でローから海の戦士ソラ談義を受けていた事に驚いたり。

この世界線だと北の海組の海戦ソラ談義についてこれるルフィがいるってこと…?!


物語冒頭から中盤の終わりまで終始疑問符浮かべてたジンベエさん苦労してるなぁ…と生温かい気持ちになりながら読んでましたね。正直情報の置いてきぼり感が凄かった。

疑問が解消(?)されて良かったね…


シュガー院長の切り口鋭めな言葉が中々にクセになりそうです。でも人をよく見ているし的確に助け舟出してくれるし…

しかしシュガーがルフィの目的を知ってしまった事がこの先の展開にどう影響をするのか未知数だなぁ…ちょっと怖い気持ち。

シュガーに関してはルフィ達は初めましてで全くのノーマークだろうから、シュガーのホビホビの実の能力やその副作用も含めてこの先の物語にどう絡んでくるのか楽しみです…!


物語終盤の孤児院の中庭にある鐘の音とジンベエさんの考察も中々に興味深いですね…

あれは秘儀『聖歌の鐘』に通ずるものなのでしょうかね?また『鐘の音』というのはフロムシリーズではわりと重要なファクターとして扱われる印象があるので注視していきたい所存。

悪魔の実の能力のようなものがヤーナムでは道具の形を取っている…これって「青ざめた珀血花」も同じような部類なんでしょうか…?

というかジンベエさんの考察を読んで真っ先に浮かんだのが秘儀、特に兄上のインスタント秘儀でしたね…


そして最後の最後でウタちゃんの再登場だヤッター!!

ルフィ達が訪れてるって誰から聞いたんだろう?やっぱりローかな…?それともテゾーロさん達から?

本編でも告知されてましたし孤児院に連れられてきてた幕間もありましたから、しっかり伏線回収されてて唸りましたね…!


次話の展開はどうなるのか…!

こわごわしながら楽しみにしつつまた読み返したいと思います…!

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