真新しい手記・54

真新しい手記・54


新作だー!\太陽万歳!/

執筆お疲れ様です…!


『海賊王になる男』


前回のあらすじ


・ヤハグル探索チームの探訪記


・CP9メンバー達の意外な登場


・ヤハグル探索チームにルフィ達(コルボ山三兄弟with狩人兄上)が合流


・「狩人」になったサボ


・ルフィ達、悪夢へ向かう


今回は前回のお話の続き。

死体となったトゥールの腕に抱えられた『檻を被った頭蓋骨』に触れ、悪夢の最奥に向かうルフィ達の物語。

語り部は狩人兄上が務めます。

参りましょう。



【狩人、悪夢に降り立つ】

・ドフラミンゴが儀式の悪夢に目を開けば、淀んだ空から見下ろす白い月と目が合った。

崩れかけた道の向こうには、月光を遮る高楼がそびえている。


「あっちか!」


降る赤子の声へと走り出したルフィが、松明を掲げる歪んだ獣に拳を構えた。

ほとばしる青い雷光に怯むことなくそのまま腕を振りぬく。


「おわっ!?」


直後、獣の腹から巨大な虫が飛び出した。

獣性を導く寄生虫。

ここまで育っちまえば、もはやその宿主は獣とすら呼べねえだろう。


「焼け、エース」

「そいつらは炎を恐れる」


「いいんだな?」


「遠慮はいらねえ」

「どうせ悪夢と共に消える連中だ」


次々と現れる獣共を、神秘の炎が焼いていく。

諸共に焼き殺された寄生虫は体外へと逃げることもできず、存在を遺志へと変えていった。


「」全部狩る必要もねえんだろ?」

「先を急ごう」


工房から持ち出したという散弾銃を牽制に使いながら、サボがはぐれ者の眷属共をすり抜け鉄扉を押し開けた。


反応した奴は適当にイトで縛り上げておく。

膂力しか取り柄のねえ連中を拘束するのは得意だ。


「上だな」


「よし」


この無意味に巨大な建造物をまともに登ってやる義理もねえ。

渡り廊下からあたりをつけ、言った端から腕を伸ばしていたルフィを追って移動する。


だが、ルフィ以外の二人へ向けて伸ばしたイトは、白い光線に焼き切られた。


「このレーザーは隠し街の…!」


「…アメンドーズか「」


6本の指が渡り廊下の手すりを掴み、持ち上がった頭部には無数の瞳が並んでいる。

隠し街にも貼り付いていた落とし子の一体が、どうやら悪夢に迷い込んだらしい。


「エース!サボ!「」


「先行けよ」

「すぐ追いつく」


「おれ達はこいつを狩って、地道に建物を登ってくよ」


そんな台詞を吐いて背を向けた兄二人に、ルフィは再び上層へ向けて腕を伸ばした。


「行ってくる!」


「ああ」


遠ざかっていく炎の臭いと銃声は、なるほど上位者狩りに相応しいものだった。



【高楼の頂にて】

・自身の能力を駆使し、上へ上へと驚異的なスピードで駆け上るルフィとドフラミンゴ。


「ここだな」


高楼の天辺、白骨に覆われた鳥葬場に、悪夢の主…トゥールが立っていた。


「よう…トゥール、だったな?」


「……やはり、月の狩人など、産み出されるべきものではない」


赤子の赤子、ずっと先の赤子まで。

絶えぬ凪が、私たちを慈しみ守りますように。


聖句を唱えた男の傍らで、血を失った死体が蠢いた。


サークルが展開され、骨の周囲を獣の毛皮が、豚の目玉が、蜘蛛の足と影共の獲物とが覆っていく。


「終わりにしましょう」

「私は永劫の悪夢に沈み、貴方は朝に目覚め、そして…」


妙に耳に馴染んだ音と共に、男は仕込み杖を変形させた。

今は手長の狩人の得物で知られるそれは、獣狩りの血に飲まれまいとする意思の産物だ。


「解放の悪魔は、その意味を失う」


凪の血を身に宿した男は、月に惹かれた赤子と共にドフラミンゴ達を見据え覇気を纏って呟いた。



【戦闘!悪夢の主と造られた赤子戦!】

・白い月明かりに照らされた高楼の鳥葬場にて、戦いの火蓋が切って落とされた。


「"あっち"は任せるぞ」


「おう」


寄せ集めで造られた赤子の指先が動き、石畳が剥がれて宙に浮かんだ。

渦巻き迫るそれに、ルフィはごく冷静に対処している。


改造の赤子。

ローが身に宿したその能力を、こいつは見たことがあるのだろう。


戦闘に能力を利用してこなかった男…ローは、想定される技のいくつかをドフラミンゴ達に伝え市街へと向かった。

振るわれる刃を大きくかわす姿を見るに、あいつには友人にも理解できるよう物事を噛み砕いて喋る才能はあったらしい。


「貴方の相手は私だ」


「随分とがっつくな」


長年の潜入で錆び付いた技も、元の精度を考えりゃ舐めてはかかれねえ。


六式を狩りに組み込むそのスタイルは、聖血の主と似たものだろうか。

夢で出会った助言者は、かつて海兵だったと聞いている。


おれの、己の弟だったと聞いている。


「あれほどまでに彼の方を愛しながら、何故貴方は解放の悪魔を導いたのです」


「さあな、おれは"そいつ"のことは忘れちまったが……「」


それでも壊れた記憶の中に、嫌というほどこびりついているものがある。


「外は眩暈がするほどうるせェってのは覚えてるぜ?「」


「だがそれこそが、この世界の理」


「だからだろうな」


血に流れる遺志は、ドンキホーテ・ドフラミンゴという男の背中を映し出した。


天上から降る赤子の泣き声。

秘匿された赤い月に、血の呪いの最奥。


明けぬ夜に瞳を覆った男が何を考えていたのか、想像すら出来ねえわけじゃねえ。


「"産まれ直し"が無事に済んでりゃ、おれが軛を焼いていた」

「半端な凪じゃあ、どうにも満足できねえタチでな」


「……危険だ」「貴方は」


「フッフッフッ!!」

「それでこそ"鬼札"…だろう?」


それすらも、己には興味のねえ話だが。


イトを駆使して動線を紡ぎ、短銃と聖剣で間合いを調整する。


おれは月の狩人だ。

この夜を終わらせ呪いを狩る。

今は『それだけ』でいい。


「ルフィ!」


「遅くなったな!」


アメンドーズを片付けた二人の狩人の加勢に、一気に戦局が動いた。



【造られし『改造の赤子』の真髄】

・エース達の加勢により、神秘の炎はイトを伝い、悪夢の主と赤子を焼いていく。


「エース!んん??」


「うわ!なんだ!?」


「おれが居る…?」


突然混乱した三兄弟は、それでも刀身を伸ばした赤子の刃を避けて飛び退った。


だが、ひでえ有様だ。


サボは腕が伸びねえと叫び、

ルフィは炎が使えねえと腕を振り、

エースだけが二人と己の姿を見比べ考える素振りを見せている。


改造自在とは言うが、精神にまで力が及ぶとは。


「ルフィ!エース!体がそれぞれ入れ替わってるんだ!!」


「おれ今サボか!」


「なるほど?それなら…」


青白い雷撃をわざわざ掻い潜ったルフィ、もといエースが勢いのまま腕を振りかぶる。


「"ゴムゴムの"…」

「"銃"!!!」


覇気を纏った一撃は、それなりの威力で目玉にまみれた豚の頭を吹き飛ばした。

反動で崩れた姿勢を、イトを渡して補助してやる。


「おっと失礼!」

「しかしルフィお前、よくあれだけの技を使いこなせるようになったな!」


「いっぱい練習したからな!」


サボの体に収まったルフィが笑い、両手で構えたノコギリ槍の峰で刃の一振りを叩き折った。


「こういうの久しぶりだ!」


「おれも負けてはいられねえ」

「能力も秘儀と同じ要領なら…」

「"火拳"!!!」


手加減もコントロールも無しの炎がイトごと鳥葬の塔を焼いていく。

危うく巻き込まれるとこだ。


「さて…」

「"海原白波"」


ついに大きく姿勢を崩したトゥールを、イトに変えた白骨を操り捕えた。


あと、残るは。



【その男、】

・精神と肉体を入れ替えられても尚、お互いの肉体に宿る力を理解し戦闘に生かす三兄弟。

そのお陰で、トゥールの捕縛に成功する。


さぁ、残るは…


『ニカ』


改造の赤子が、頭部らしい場所に植え付けられたカラス犬の嘴を開き声を零した。


白く濁った瞳は、小刻みに痙攣を起こしながらもサボの体へと向けられている。


「だれだそりゃ!」


兄の姿で、男が叫ぶ。


「おれはモンキー・D・ルフィ」


過剰な覇気が、能力を剥がしていく。


…あるべき魂が、あるべき肉体へと収まる。


今度は麦わら帽子の下で、大きく口が開かれた。



「海賊王になる男だ!!!!」



覇気を纏った体が膨らみ、弾性を帯びた脚がよどんだ雲を突き破って伸びてゆく。


「いけ」


「ルフィ!!!!」


兄達の声が、押し上げる。


「"ゴムゴムのォ"…」

「"大猿王戦斧"!!!」


振り下ろされた巨大な脚は、悪夢の儀式を高楼ごと打ち壊した。


赤子の遺志が流れ込み、遥かな約束をこの血に囁く。


全く、馬鹿なガキだ。

ここにてめェの旧友なんぞいるものか。


瓦礫の山で悪夢の主を見下ろし立ち上がったのは、ただの、ひとりの海賊だ。


「そうか君は……」

「解放の悪魔などでは……ないのだな」


麦わら帽を被りなおした男に笑みを見せ、凪の守り手たる狩人は静かに目覚めを受け容れた。



ーー悪夢の主が目覚める。夜明けは、きっと近い。



素敵な物語をありがとうございます…!


熱い…!!

熱量と勢いに満ちた、素晴らしい戦闘描写にワクワクが止まりませんでした…!


序盤のルフィとドフィの能力パルクールの描写も好きですし、お邪魔虫なアメンドーズをさっくり仕留めて「徒歩できた」な兄ーズも好き…!


ドフィVSトゥールの聖剣VS仕込み杖の戦いも是非映像で見てみたかった組み合わせだ…!ビルドでいうなら上質+神秘VS技量のマッチ…実際のブラボでの対人だとどんな戦いになるのだろうか…?


造られた赤子とルフィの戦い。

能力についてはローから話を聞いただけではあるけど、それだけでちゃんと対応出来てる辺りルフィの、ルフィ達の実力の高さを窺い知れますね。


なによりコルボ山三兄弟の精神シャンブルズには「そうきたか!」と大興奮でした!

ルフィinエースの「ゴムゴムの銃」

サボinルフィの、ルフィにしては珍しい「武器を使った戦闘」

エースinサボの「火拳」…

夢とロマンが詰まった描写に万雷の拍手を…!

何気にルフィinエースをイトでサポートしてあげた狩人兄上の優しさが好き。

というか狩人兄上の全体的に周りを見渡して的確にイトや口頭でサポートしてくれてる姿に胸を掴まれましたね…!


造られた赤子がルフィを『ニカ』と呼んでたり、中々に意味深な描写もありつつ。


「おれはモンキー・D・ルフィ」

「海賊王になる男だ!!!!」


…これに心底痺れましたね…!!!

熱い台詞、熱いキャラ、熱いタイトル回収…本当に素晴らしい…!

この物語を読めた事に感謝を…!

いつもありがとうございます…!

大変楽しませて頂きました…!!


…後、「ゴムゴムの大猿王戦斧」で高楼ごと倒したの、アーロンパークのオマージュかな?と思ったり。

あの物語もまた、解放の物語ですよね…

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