真新しい手記・49

真新しい手記・49


新作だー!\太陽万歳!/

執筆お疲れ様です…!


『凪の狩人』


前回のあらすじ


・ドフラミンゴの最期


・巡る血と遺志の物語


・内なる獣と月光の邂逅


・そして「狩人」は産まれた


今回は前回の続きな物語。

参りましょう。



【狩人の夢と助言者】

・右手に聖剣を、左手に銃を携えた「狩人」は、夢から覚めたような心地で瞼を押し上げる。


どこだ、ここは。


おれは何者だ。


…「狩人」は、記憶を失っていた。

己が「何者」であるかを、忘れてしまった。


だが、この香りは知っている。

ある種の狩人が纏う、月の香りだ。


…それでも、己が纏う香りを知っていた。

その香りが、ある種の『狩人』が纏う『月の香り』である事も。


打ち捨てられた人形を横目に、洋館へ続く階段を登る。

扉を押し開けるとそこには、おれに近しい背丈の、赤い瞳の男がひとり。


片脚は義足のようだが、立ち姿からは隙が伺えない。

どうやら随分とやるらしい。


…「狩人」は目の前に打ち捨てられてきた『人形』をスルーし、その先の洋館へと足を運ぶ。

洋館の扉を開ければ、中に居たのは己と似た背丈の赤い瞳の男。

見えた片足は義足。しかしその立ち姿から歴戦の戦士である事が伺えた。


男が、口を開く。


「……あんたが」


「おれのことを知っているのか?」


己の問いに、男ははっとしたように身じろいだ。

どうやら知り合いだったらしいが、あいにくおれには一切記憶がねえ。


「………知ってる」

「よく、知ってるよ」


そう呟いた男は、聖剣の名を持つ狩り武器とただの短銃とを見やって僅かに目を細めた。

それらはこの夢に辿り着いた時から、己の手にあったもの。


「おれは……ロシナンテ」

「この夢で、あんたみたいな狩人の助言者をやらせてもらってる」


「前にもおれみたいなのが居たわけだ」


「ああ、いや、おれの前には大勢いたんだけど…おれが助言者になってからはあんたが初めてだ」


そう言って男、ロシナンテはずらりと引き出しの並んだ棚を迷いなく開け、赤い鉱石と工房道具とを己に押し付ける。


狩りのための道具であるそれらは、過去の記憶はなくとも知識として頭の中に残っているものだった。


「あんたの名は、ドンキホーテ・ドフラミンゴ」

「きっとこれが役立つはずだ」


「随分贅沢な血晶石だな」


「……やっぱ知ってんのか」


「どうしてってのは聞くなよ?」


「…ああ」


なんせおれも思い出せねえからな。

そう笑えば、見るからに具合の悪そうなロシナンテの口元も少し歪められた。


表情を作るのが下手な男だ。


「あんたはこの夢から出て、狩りを全うしてくれ」


「狩りね…」


「おれにも今外がどうなってるのかは分からない」

「ただ、おそろしい獣や人ならぬものたちを狩らなきゃならねえのは確かだ」


「なるほど」


おれが狩人であるならば、それは自然なことに思えた。

ロシナンテがおれを陥れようとしている可能性など、一考の価値もねえ。


はじめから脳に刻まれていたかのように、それはおれにとっての真実となった。


「それと、これも」


おれはもう使わねえからと、ロシナンテはおれに小さな鐘を手渡した。

啓蒙を触媒として、狩人を呼ぶ神秘の道具だ。


ここまで知ってるってことは、記憶を失う前のおれも狩人を務めていたんだろう。


「行ってくる」


「行ってらっしゃい。あんたの目覚めが、有意なものでありますように」



【出撃】

・助言者たる「ロシナンテ」から聞いた話により、己の名が「ドンキホーテ・ドフラミンゴ」であると知ったドフラミンゴは、墓石に祈りを捧げて瞼を押し上げる。

そこはどこかの大聖堂だった。

ずらりと並んだ窓からは、異様に赤い月光が差し込んでいる。


と、思考が啓かれるような感覚を覚える。

どうにも外は妙なことになっているらしい。


目に入るのは夢へと続く白い灯りと、赤い光に群がる使者たち。

狩人を"呼ぶ"ための徴だった。


「古狩人…名は…」


当然のように知らない名だ。

己の消えた記憶に紐づいていたのか、はたまた赤の他人か。


どちらでもいい。

この夜に、それが助けとなるんならな。


「おお、やっぱりあんたに呼ばれたか」


…チリン。と、掌の鐘を鳴らす。


ややあって、現れたのは貴族のような豪奢な装束に身を包んだ男だった。

黒髪にそばかすの男はどこか気安い様子でこちらに歩み寄ると、すっと手を差し出す。


フランクな所作と、貴い血を示す衣装がミスマッチな野郎だ。


「お前は?」


「おれはエース」

「凪の夢から、あんたを助けるために来た…狩人だ」


よろしくな、ドフラミンゴ。


さっき聞いたばかりの名を呼んだそいつはおれの手を握り、どっかで見たような笑顔でそう言った。



――ドフラミンゴとエース、狩人二人の「狩りの夜」が、始まろうとしている…



素敵な物語をありがとうございます…!


今回は「狩人・ドフラミンゴ」の初めての『狩人の夢』への訪問や『助言者・ロシナンテ』との邂逅、更に『凪の夢』からやって来た『古狩人・エース』の登場…と最初から最後まで見逃せないシーンばかりでしたね…!

大変楽しませて頂きました…!ありがとうございます…!


しかしドフラミンゴは前話までは生前の記憶を保持していたように見受けられましたが…『月の狩人』として『狩人の夢』に招かれた際は既に記憶を失っていましたね…これはコラさんの時のように月の魔物による記憶のオミット…取捨選択が行われた…?

コラさんはローと繋がってたからある程度記憶の保持がされてましたが、ドフラミンゴはそうじゃなさげ…もっと我々プレイヤー側に近いような印象を受けます。


そして『助言者・ロシナンテ』…

彼は目の前の人物が自身の兄である事を理解している…そして兄が記憶を失っている事も。

だから何も言わず、告げずに『助言者』として振る舞っているような印象。

個人的には『助言者・ロシナンテ』のネタを過去にスレに書き込んだ身ですので「昔みた幻覚が推し作家さんの手で現実になってる…!」と大興奮しております。

しかし最初から工房道具に集めた血晶石にと兄上に対して大盤振る舞いだなロシー…これじゃあ狩人兄上は『強くてニューゲーム』状態だよ。

まぁ外の現状・現場が絢爛たる惨状だからこれでもイージーゲームとはならないだろうなという確信ががが…


そして狩人兄上は現実の(恐らく)聖堂街に出撃…と。赤い月も昇ってるし割と現在の時間軸に近い時点ですね。

大聖堂って書いてあるからここはロシーの眠る身体を隠してある大聖堂かな?


で、これまた新登場な『古狩人・エース』…彼は凪の夢…『忌み者の夢』からやって来た狩人さん。

どうして兄上がエースを…?とも思いましたがそうか…前回の魚人さんや父上母上と同じで兄上が該当人物の死に目に会ってる。つまり兄上が「遺志を受け取ってる」人物だからか…御縁があるんだ。


ここから更に時を経て、二人はルフィ達に出会う訳か…ワクワクすっぞ…!

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