真新しい手記・48

真新しい手記・48


新作だー!\太陽万歳!/

執筆お疲れ様です…!


『Bloodborne』


前回のあらすじ


・ローとルフィの喧嘩、完結編


・ルフィとローの夢語り


・触れられた『喋る獣』の件


・最後の最後で投げられたとんでも情報爆弾


今回は物語の時間軸から少しばかり離れた、ちょっと不思議な物語。

物語の語り部は、主人公は…そう、ドフラミンゴ。

彼の最期と、その顛末。

誰も知り得なかった筈の物語。

参りましょう。



【我ら血によって人となり、人を超え、また…】

・時は少し巻き戻り、ローに秘匿の全てを隠した場所への鍵を預け、またローを白い壁の向こう側に逃がし、全てを秘匿の内に隠し通したまま己の手にある『獣狩りの短銃』を引鉄を引いたドフラミンゴ。


最後の狩りの獲物は、己自身。


己の血が、冷えていく。

頭をブチ抜いてもまだ命を手放せねえとは。

全くどこまでも往生際の悪い血だと、今際の際に自嘲する。


ああ、だが、やっと静かに眠れる。

…安堵が、ドフラミンゴの身を包んだ筈だった。



【赤と薄紅。それは走馬灯か、明晰夢か】

・遠く近く、声が聞こえる。


「ドフラミンゴ!」


シャンクス?


「なあ、この水銀が鍵ということだったが…なんの鍵なんだ?」


なんだ、おれの記憶か。


…不意に聞こえた赤髪の彼の声を、どこか冷静に受け止めるドフラミンゴ。

脳裏に埋もれていた記憶が、今、蘇る。


「月前の湖の…秘匿を守る鍵だ」


「なんでおれに?」


「おれが消えりゃあ、次はお前が知るべきものだからな」


「へえ…」


走馬灯ってやつにしちゃ、どうにも締まらねえ。


…己の、死した筈の瞼の裏が映し出す景色にそう呟く。


「とう!」


「何をやってんだてめェは…!」


「そんな保険みたいなもの、必要ないだろう?」


あの馬鹿、よりによって"強い血"に反応する希少な触媒用水銀の瓶を湖に投げ捨てやがった。

その上からっとした笑顔には、反省の色は微塵も見られねえ。


…シャンクスは、ドフラミンゴがシャンクスに託した「水銀の鍵」を、それが詰まった小瓶を月前の湖にポイーっと投げ込んでしまったのだ。

その上に、カラリと晴れたシャンクスの笑顔には、反省の色は見られず。

これにはドフラミンゴも「何をやってるんだ」と一言申すが、シャンクスは言葉を続ける。


「ローがあれだけ頑張ってるんだ」

「お前もいつか…信じられるようになる」


「馬鹿なことを…」


「ドフラミンゴ」


「……なんだ」


「お前は、獣にはならないさ」


どいつもこいつも知ったようなツラで、適当なことを言いやがって。


ぐらりと、記憶が傾く。

意識が深いところに落ちてゆく。



【とおいひの、きおく】

・深く深くへ落ちた意識が、遠いあの日に見た色彩を捉える。


「よかった…ご無事で!」


しろい、つめたい、はだ。


「ここは危ねえ」

「坊ちゃん!すぐに旦那様方の所へお連れしますから」


遠いあの日の彼の人が、そこにいた。

ドフラミンゴは呟く。


「おれを、うらんでいないのか」


「恨むだなんて、とんでもねえことです!」

「おれぁ旦那様のご命令を無視してまで坊ちゃんを助けに行ったんですよ」


めいれい。そうなのか。


「そうです坊ちゃん」

「おれは一度だって、"命令"で坊ちゃんを助けた事なんてありゃせんのです」


そうか。


「…おれは、おまえに蹄が刻まれていたから、助けにこねえといけなかったんだと思ってた」


「まさか!」


懐かしい、大きな口を開けた豪快な笑い方だ。


「さ、着きましたよ!」



【めぐるちのなぎさにて】

・遠い日の、白く冷たい肌の彼に連れられてやって来た場所で目にしたもの。

それは……


父上、母上。


「ドフィ」


父が、己を呼ぶ。


父上がいる。

そうだ、分かっていた。

おれが、己が狩ったのは、殺したのはただの獣なんかじゃねえ。


あれは父上、だったんだと。


「お前にはひどく酷なことをさせてしまった」

「本当にすまなかった」


「おれは、あんたを殺した」


…彼岸と此岸の狭間。

これは夢か、それとも。

やっと出会えた両親。

あの日、永遠に別れてしまった父親と、言葉を交わす。


「それは違う」


…己が貴方を狩ったのだと、殺したのだと言うドフラミンゴ。

しかし父はそれを否定する。


暗い覆いの奥から見上げていた父は、いつの間にか見下ろせるほどの背丈になっていた。


「そうだ、まだ、こちらを伝えられていなかったね」


「…父上」


「私を止めてくれて、ありがとう」


見慣れた獣狩りの短銃を、言葉と共に父の両手から受け取る。

元はトレーボルが使っていたんだろうそれは、ガキだった己には、ドフラミンゴにはやたらと大きかったのを覚えている。


「ドフィ」


「母上」


母が、己を呼ぶ。


「ロシナンテを守ってあげて」

「あの子は…優しすぎるから」


それは、母上の最期の言葉だった。


月光に照らされた母は、美しいままの姿で己に、ドフラミンゴに聖剣の名を持つ狩り武器を手渡した。


「ロシーは…あの子はあなたにとって、なによりも代えがたい存在だから」


…母の言葉が、背中を押す。


青い光が、狩りを全うせよと闇を照らす。

遺志のうねりが、彼方の声が己の手を引く。


おれはたしかに、愛されていた。



【それは、光の先を歩むはじまりの】

・自分は確かに、父に、母に愛されていた。

その確信が、背中を、身体を満たして光の先へと押し上げる。


導くは闇を照らす青き光。

光は囁く…『狩りを全うせよ』と。

遺志のうねりが、彼方からの声が手招きをしてる。


「いっておいで。私たちの愛しい子」


父の、母の声が己が背を見送る。


光を追って、遺志に引かれて空を駆ける。


…ドフラミンゴの心は謳う。


己が何者で、どこへ向かっているのか、そんなことはもはや関係がなかった。


ロシー、ロシナンテ。

お前を諦めちまうなんぞ、おれらしくもねェ。

これじゃあヴェルゴの奴に呆れられちまうな。


合理だろうが客観だろうが真実だろうが踏み越えて、お前を探し続けるのがおれだった。


お前の為に、そしてなによりもこのおれの世界の為に。


暗闇に、おれによく似た灼けつく獣が見えた。



【そして新たに生まれるのは】

・光を追った先、暗闇にて相まみえたのは「己によく似た灼けつく獣」


…ドフラミンゴは獣へと語りかける。


昔からてめェが煩くて煩くてかなわなかった。

そろそろ消えてもらうぞ。


普段よりずっと軽い聖剣を振り抜き、光波で獣を切り伏せる。

短銃で一発お見舞いして、空いた穴に腕をブチ込んだ。


「じゃあな」


右腕でそのまま内臓を引き抜く。

それは夜を駆ける、遺志を継ぐ狩人の業だ。


「あの日から…随分待たせちまったな」

「ロシナンテ」


炎の中に、血をぶちまけた獣が消えていく。


暗い視界に、白い使者たちが蠢いた。


「迎えに来たぞ」



―ああ、狩人様を見つけたのですね



…今宵、また一人「狩人」が産まれる…



素敵な物語を…ありがとうございます…!


兄上…!ありがとう…ありがとう……!

この喜びを、打ち震える心の機微をどうしたためようかと…!


物語はドフラミンゴ視点で進み、赤髪の彼とのある日の走馬灯から始まり、白肌のかつての魚人の奴隷の彼に連れられ出会った両親。

父とのやり取り、母とのやり取りを経て得られた『愛』と『確信』…そして右手に剣を、左手に銃を。

暗闇に目を見開き、己を確かに見出した彼にもう迷いはなく。

青い光に導かれ羽ばたいた先に居たのは「己とよく似た獣」で。


それを狩り終えた時、聞こえた『声』は……


我々狩人の、ブラボプレイヤーの心を揺さぶって離さない素晴らしい描写と巧みな台詞回し、リスペクトに溢れた演出に万雷の拍手を…!

『Bloodborne』のタイトルに相応しい、素晴らしい物語でした…!

何より私は!推しの回にこのタイトルが使われた事が嬉しい!


…物語の最後、ドフィは己の内の獣を焼き払い、『狩人の夢』へと招かれた…という解釈で良いのですのよね…?

これで漸くドフィは、弟を、ロシーを迎えに行くことが出来たのですね…


…あれ?じゃあ今話のこの狩人ドフィは暫定で『狩人の夢』に招かれているとしたら、前話の最後に出てきたドフィは…?ルフィ達の居るあの場所は多分『忌み者の夢』の筈で……

だって『凪の上位者』は『忌み者の夢』にいて、『月の狩人・コラソン』は『狩人の夢』にいる筈だから……んんん…?


あれでもまだ今話の狩人ドフィは『狩人の夢』に足を踏み入れてない…?

ブラボのシステム的には使者達と人形ちゃんの声を聞いただけではまだ駄目で…一回死んでから初めて招かれるけど…

でもコラさんは灯りから直接『狩人の夢』にログインしたしな…?


…いや、もしやルフィ達がいる場所は『忌み者の夢』ではない…?

あれはいわゆる『ローの夢』というか『ローの固有結界』みたいな場所…?

そこに『忌み者の夢』からエース達が渡ってきた可能性も…?


あかん啓蒙が足りぬ……

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