真新しい手記・46
新作だー!\太陽万歳!/
執筆お疲れ様です…!
『真相へ』
前回のあらすじ
・聖堂街、海兵 VS ルッチ戦…の、後語り
今回は場面が大きく変わり、雪と静寂が満ちる凪の國に迷い込んだルフィと、そこに突如立ち塞がったローの物語の続き。
一体何が語られるのか…?
語り部はローが務めます。
参りましょう。
【凪の國から】
・ローから「今すぐこの街を出ろ」と伝えられたルフィ。しかしルフィの答えは勿論…
「いやだ!!」
ドフラミンゴにもそう返したように、拒否の姿勢を見せる。
ローの『シャンブルズ』で廃城の前に呼び出されたルフィは、逃げろと言ったローにそう答えた。
…ルフィは、『まだ』何も分からないままだから。
ルフィの、絶望の内に灯(あかり)を灯すその姿は、暗闇に目を見開く今のローにとっては、ひどく眩しく見えた。
「やめろルフィ」
「おれ達には…いや、誰にもコラさんは起こせねえ」
「やってみなきゃ分かんねえだろ!」
吼えるルフィに、ローは以前の態度から一変して拒絶するかのように答える。
ローは内心に語る。
…いや、分かる。分かってしまった。
ドフィが、あの人を決して起こそうとはしなかった理由さえ。
鍵の先、悪夢に沈んだビルゲンワースの湖で、秘匿されていた全てをおれは目にした。
「…神の天敵」
「…?」
「ミョッさんが言ってたやつか」
「ああ…なるほど、天竜人なら知っていても不思議じゃねえ」
「Dがなんか関係あんだろ?でもおれもじいちゃんもエースもDだぞ?」
頭の上に「?」を飛ばしたルフィが、雪の中で腕を擦りながら言う。
そうだ。
お前の…ルフィの言う通り、"ただのD"なら腐るほどいる。
だから本当はもう、この街の呪いとお前は何の関係もねえ。
お前と、ルフィと共にある悪魔はあの夜狩られ、街を呪う悪夢から"解放"されているのだから。
「Dは特殊な血だが、それだけじゃもうほとんど何の力も持たねえ」
「政府の奴らが躍起になってお前を追ったのは、ただの早とちりだ」
「…早とちり?」
「ああ」
ここに来るまでに"色々"見てきたんだろうルフィは、怒りを押し込めて拳を握った。
誤解がこの街に悲劇をもたらし、そして真実がおぞましい呪いを呼び起こした。
【Once Upon A Time】
・ローは静かに語りだす。
「昔話をしてやる」
「神サマと、神サマの眠る国の話だ」
「神サマ……コラさんも、そう呼ばれてた」
語りだすローを、黒い瞳は、ルフィの眼はローから逸れることはない。
お前もそこまでは知っていたんだな。
話をしたのはシュガーかデュラか、狩人狩りか、それともモネ辺りか。
「…かつて、白に覆われた美しい国があった」
「その国では古くからひっそりと神サマが祀られ墓を守られ…だが、秘匿のうちに人々はそれを忘れた」
そしておれも、その一人だった。
「人々は眠る神の聖体を暴き、ある者は富の為に、ある者は探求の為に利用し…やがて呪いを産んだ」
雪が風に巻き上げられ、コートをまだらに白く染める。
ルフィは、雪を落としながらも、じっとローの話を聞いていた。
「そして国は滅び、聖体を身に宿した死にかけのガキが一人残された」
まだらに白く染められた、なんにも知らねえガキが。
「ガキの名はトラファルガー・D・ワーテル・ロー」
「"奇跡の医療者"の名で呼ばれたその正体は…」
雪の上に、奇跡の仮面を投げ捨てる。
ドフィも、コラさんも、こんなもので救えはしない。
風が、やんだ。
「おぞましい寄生虫だ」
「…なんだそれ」
「……エレジアの…悪夢の赤子は覚えているな?」
「ウタを捕まえてたやつだ」
「おれは」「"それだ"」
「???」
「Dの血は天竜人を宿主として"寄生"し、自身をその赤子とする……」
「この街に辿り着いた時点で、コラさんはおれに呪われていたんだ!!」
「ロー!お前なに言って…」
慟哭のようなローの言葉達に、ルフィも思わず言葉が詰まる。
ローが動いた。
「"ROOM"!!」
「!」
「さっきのカベ!!」
ローが能力を展開する。
それはルフィが凪の國へと誘われた光の壁。
ナミやジンベエ達が観測したものの「何も起こらなかった」と首を傾げたあの光の壁だ。
「"タクト"…」
ガチガチと震えるルフィに、体温を奪う雪玉を殺到させる。
お前は口で言って諦めるようなタマじゃねえから、こういうやり方を取らせてもらうぞ。
「おれが居たばかりに、コラさんは狩りから逃れられなくなった!」
「あの人をおぞましい夜に放り出したのは…おれだ!!!」
「やめろ!ケンカの理由がねえ!!」
お前(ルフィ)には無くとも、おれ(ロー)にはある。
お前を"正しい航路"に戻す理由が。
コラさん、もう少しだけ我慢してくれ。ルフィさえ逃がせたら、もうあんたを傷つけることなんてしないから。
剣を手に取った日から長く経って、人よりずっと傷の治りが早いことにも、能力の負荷が限りなく低いことにも慣れきってしまった。
そこに何の対価も求められないなんて、そんな都合の良い話があるわけもなかったのに。
この力があんたを蝕むのなら、奇跡なんてもう起こせなくてもいい。
「……来い、ルフィ」
「"ギア2"!!!」
突然切られた戦いの火蓋。
雪が融け、高熱に水蒸気が上がる。
そうだろうな、これで大人しく引き下がるお前じゃない。
「"シャンブルズ"」
「ワープした!!」
「"鬼哭"!!!」
「"ゴムゴムのォ"…」
「"JET銃乱打"!!!」
ローお得意の「シャンブルズ」による配置移動…からの「鬼哭」の一撃。
初めて見る能力に、この反応速度と対応力。
お前は強い。だが、おれも諦めるわけにはいかない。
儀式さえ終われば、夜が明ければこの街にはまた平穏が訪れる。
それにルフィが前に進まねえと、コラさんもドフィも報われねえ。
「"切断"!!!」
「飛ぶ斬撃…じゃねえ!」
「"注射ショット"…!!!」
「"ギア4"…」
「"ゴムゴムのォ"…」
「"大蛇砲"!!!!」
「!!」
「"シャンブルズ"!!!」
ルフィの前では殆ど能力による戦闘を見せてこなかった。初めて見せる手の内の数々にも関わらず、ルフィは全力を以て応戦し、食らいついてくる。
クソ、強いな。
お前なら、なんて希望を追ってしまいそうになるほど。
それでももう、あの頃には戻れない。
おれも、お前も。
「ケンカなんかしてる場合じゃねえだろ!!」
「早く"ギシキ"を止めねえと!!!」
ルフィが吼える。
「この街のためにか?」
「笑わせるなよ。アラバスタやドレスローザで祀り上げられ、今更ヒーローのつもりか!!」
ローも応えるように吼える。
おれもお前も、罪を犯してきた。
頂上戦争から増え続ける避難民を、実験体が獣に変わってゆく様をおれは見てきた。
「ヒーローじゃねえ」
ああそうだろうな。
おれ達は、ただの——。
「おれは、おまえの友だちだ」
――凪の國、廃城前。雪下にて、友の拳が混じり合う…
素敵な物語をありがとうございます…!
まさかまさかのルフィVSロー戦…!
避けては通れぬ道と分かってはいましたが…!ぐぬぬ…心が…締め付けられる…
「奇跡の医療者」の仮面を脱ぎ捨てたロー
秘匿の全てを知ってしまったロー
自身の能力の代償を、対価を『誰』が払っていたのか知ってしまったロー
故に、ドフィと同じように、ルフィをこの街から逃がそうとするロー…
…ローの語り口のせいでずっと脳内で「昔話をしてあげる」と某青い木蓮のお姉さんの声が鳴り止まないのはさておき。
それでもローは、拳を交えたルフィの強さに「お前なら」と希望を持ってしまいそうになる、揺れ動く心を捨てきれない…
自分もルフィも、あの頃にはもう戻れないと分かっていても。
ルフィが前に進まなければ、恩人達が、コラさんもドフィも報われない。
だからこそ、例え拳を交えてでも、ルフィを分からせなければならないのだ。
ローにとっては。
………。
ルフィー!早くなんとかしてくれー!
あの欲張りで頑固者のローをガツンとなんとかしてくれー!!
ケンカして早く分かり合ってくれー!
…しかしローの台詞の端々から感じる「お前ならそうするだろうな」「そう来なくっちゃな」感が凄い。
男の友達!!友情!!って感じがして非常に好きです。