真新しい手記・45
新作だー!\太陽万歳!/
執筆お疲れ様です…!
『ヴェルゴ中将』
前回のあらすじ。
・海兵組 VS ルッチ
今回はVSルッチ戦の後語り。
語り部はベビー5ちゃんがお送りします。
参りましょう。
【月夜の後に】
・月夜の血闘の後、遺志が、主を喪った『命』の欠片が、この身に、熱い血に流れ込んでくる。
受け取った『それ』に遺されたのは、生涯の唯一と…ベビー5達海兵の姿だった。
「ヴェルゴ…中将」
ぽつりと零すように口から落ちた言葉と共に、ベビー5は内心に語りだす。
ずっと、私が狩長に、若様に出会うその前からずっと、王の隣にあった人。
今思えば、コラソンさまってお呼びしたのはとても短い時間だったわ。
心臓の名はいつの間にかコラさんのものになって、その次はローのものになって。
だけどいつだって、若様の心と共にいた。
「なにが……」
「…デリンジャー?」
「なにが『いい狩り』だ!!!!」
荒い息で闘魚の牙を剥き出したデリンジャーが、怒りのままに石畳をヒールで割りながら血溜まりに近付いていく。
私達がアジトにいた頃、ほんの赤ん坊だったデリンジャーは、本当の父親みたいにヴェルゴ中将を慕っていた。
他の、偉大なる航路で中将に拾われたはみ出し者たちと同じように。
私達は正義を誓う海兵で、この海のはみ出し者で、そして家族だった。
「みんなを、ヴェルゴ中将を殺しやがって!!!」
「お前がやったのは狩りなんかじゃない!!!ただの…」
「やめろ」
悲しみと怒りの織り混じる言葉を吐きながらCPの遺体を踏み砕こうとした脚を止めたのは、ドレーク少将だった。
「まだ…おれ達海兵にはやるべきことが…守るべきものが残っているだろう」
「…っ!」
デリンジャーとドレーク、二人のやり取りをベビー5は、バッファローは、何も出来ずにただそのやり取りを見ていた。
私は若様に救われた。
海兵になってからは、ヴェルゴ中将が一緒にいてくれた。
こんな私をみんな、必要と、してくれた。
「……今後の指揮はおれが取る」
「スモーカー中将!もう街に戻るんだすやん!?」
「てめェ等がここでやるべきことは、あとひとつだけだ」
ぼんやりと涙を流す私を、ベビー5を振り返ることもせず、新しい指揮官は…スモーカーは煙を吐き出し葉巻を踏み消す。
「整列!!!」
海兵の道を選んだあの日から叩き込まれた号令に、自然と体が動いた。
スモーカー中将はほんの少しの笑みを口元に浮かべた遺体へ向き直って、そして再び、号令を。
「全員、敬礼!!!」
――ヤーナム・聖堂街。月夜の血闘にて命を落とした戦士達に、今、海の兵達の黙祷が捧げられた。
素敵な物語を…ありがとうございます…!
ヴェルゴ中将……あぁ…やはり……
お話としては短い物語でしたが、とても大切な、大切なものを私達に伝えてくれた回ではないかと思います。
父親のように慕っていた人を失った。
デリンジャーの悲しみと憤りは怒髪天のかくやなものでしょう…
それはきっと、程度は違えどこの戦いを生き抜いた皆が同じ気持ちの筈。
ベビー5ちゃんの視点で語られる物語は、女性特有の柔らかさを感じますね。
自分達ははみ出しもので、でもみんな家族だった。
この一夜で、彼女達は大勢の家族を、皆を失った。
それでも。
最後のスモーカーさんのやり取りが、台詞が心に染みますね……
どんなに怒りを、悲しみを、涙に暮れていようとも、海兵としての所作が骨の髄まで染み込んでいるベビー5達を見て、彼女達こそがヴェルゴ中将が遺したもの。
かけがえのない宝。ヴェルゴ中将が生きた証。
そう思ったからこそ、スモーカーさんは口元に笑みを浮かべたのではないでしょうか…?
死者に善悪も貴賤もなく。
敬礼を、黙祷を、一握の慈悲を。
それはきっと、彼の人の『狩り』のあり方にも通ずるような。
どうか、彼らの死に、安寧の帳が降りますように…