真新しい手記・38

真新しい手記・38


新作だー!\太陽万歳!/

執筆お疲れ様です…!


『深層へ』


前回までのあらすじ。


・ナミ達チームのヤハグル探索

・悪夢のようなエネミー大集合!アメンドーズもいるよ!


・ナミ達チームも光のドームを確認。

しかし何か実害がある訳ではなく、こちらも様子見。


・ヤハグル探索にて傷だらけのスパンダムと邂逅。

やり取りの末、彼から以前の電話の話の続きを聞く事に…?


語り部は引き続きロビン。

参りましょう。



【CP9長官はかく語りき】

・スパンダムの話は中々に衝撃的。

内容をざっくりまとめると…


:ルフィは悪夢の赤子の、卵の卵らしい。曰く「最悪の不穏分子」


:卵の卵である理由は"D"にあり。

:"神の天敵"こと"D"の血筋。その話はただの天上のお伽噺にあらず。


:"D"は神の血を糧に赤子となり、やがて"母体"を上位者と成す。

:"D"は「"赤子を抱いた"女性しか上位者にはなれない」という、曰く「死ぬほどローカルな常識」を横紙破りにしてくるのだという。


ここまでを語るスパンダムの声は、恐怖と拒絶の交じるものであった。

例えるならそう、変わった姿の虫を見たサンジのような。

話はまだ続く。


:天竜人の血は旧い神々、上位者に連なるモノである。


"野犬"(スモーカー)は勘付いていたようだが…と付け加えるスパンダム。

この話に対し、ロビンが口を開く。


「彼ら(天竜人)の血は、獣の病を秘めている」

「それも神秘を宿す血が、より大きな…呪いに感応した形として」


ロビンがミョスガルド聖やデュラに聞いた話等を踏まえた仮説をスパンダムに伝えれば、


「よく分かってるじゃねえか」

「…伊達に世界の呪いに首を突っ込んだ連中の生き残りじゃねえってワケだ」


スパンダムはあっさりとロビンの仮説を肯定した。


ロビンは思考を巡らす。

これから話される事は、今スパンダムから語られた以上の秘匿。

知っただけでひとりの天竜人が"消されて"しまう、それよりも深く暗いもの。

天上を除いて天竜人は血に呪われてしまう。その呪いの形が獣である。

その事実よりも、それ以上の事が。


・スパンダムの語りは続く。


「よりにもよって凪の能力を宿した奴がそのまま神に"なりかけて"やがるってのもゾッとしねえが」

「より最悪なのは麦わらと共にある存在…」


スパンダムが何度も息を吸っては、吐く。

幾度目かの後、ようやく再び口を開く。


「"史上"最悪の悪魔、解放の神、ニカだ!!」


スパンダムの言葉に、ロビン以外の麦わらの仲間達は「なんだそれは?」と言いたげな反応を返す。


「奴(ニカ)は呪いにより封じられていた…はずだった」

「だがそれを、かつての獣狩りの夜、ひとりの狩人が解放しちまったんだよ」


「それが彼…コラソンね」


スパンダムの説明に、ロビンが推測を返す。恐らく事実であろう、推測を。


おそらくな、と呟くスパンダムを前に、ロビンは再び思考を巡らす。

スパンダムの話を聞き、その話に合点がいったのだ。

ロビンの聞いた話では、コラソンがルフィと接触したのは一度。

ルフィを『どこかの暗い海辺で、白い"何か"の中から』助けた時だと。


スパンダムの口が語る。


「身内びいきのドフラミンゴが政府の味方の顔で奴(コラソン)を守り続けたせいで"解放"の発覚こそ遅れたが…」

「エレジアでニカの覚醒が観測されてようやくこっちも腰上げた所だったんだぞ」


スパンダムの語る話に、ナミが「守り続けたって…」と呟けば、スパンダムの語りはヒートアップする。


「ちょっと考えりゃ分かることだろうが!!」

「頂上戦争であいつ(ドフラミンゴ)はご丁寧に海兵どもの溜飲を下げ、麦わらを見逃した…!」

「そもそもお守りのトラファルガーとなかよく航海してきたろ?」


スパンダムの弁に、ナミが「それはローがルフィの友達だから」と言いかける前にサンジがナミの言葉を制する。

サンジ、そしてロビンは今までの話から「ルフィとローが『夢』にいた事を把握できていない」…つまりルフィとローの正しい接点を、友人となったきっかけをスパンダムは知らないという事を察し、サンジはスパンダムに余計な情報を与えない為に言葉を止めたのだ。


スパンダムは気付かず構わず続ける。


「ともかく…あの夜コラソンがニカを解放し、麦わらが能天気に凪を宿した天竜人を"親"に選んじまったせいで、もうおれ達人間には一刻の猶予も残されちゃいねえ」


ロビンが「スパンダム、あなた……」と呟くのも、スパンダムは止まらない。


「凪の神には今まで通り夢で軛を守り続けてもらう」

「そのためにも"解放"の赤子には、完全に"産まれ落ちる"前に凪の底で眠ってもらわなきゃならねえんだよ!!」


スパンダムの語る姿は必死だった。

ロビンの脳裏に、エレジアで見た白い影が過ぎる。


あれが世界の、人間の存在を揺るがす赤子。



【凪の帯、凪の底のゆりかご】

・凪の底、と聞きロビンは呟く。


「凪の帯に…インペルダウンね」


その言葉に、スパンダムが反応する。


「流石は学者と言うべきか?ニコ・ロビン!」

「凪の帯に挟まれたこの偉大なる航路は、夢見がちなバカ共の遊び場じゃねえって話だ」


その言葉に、ロビンは内心に語る。


凪の帯と偉大なる航路、それに赤い土の大陸。

わざわざ規格外の労力をかけて凪の帯の底に造られた、能力者達の最終収容施設。


語られぬ歴史の一部はやはり獣を宿す神の血筋と、そして"D"と共にあった。


また、スパンダムの話に麦わらの仲間達も声を上げる。


「凪の帯は、偉大なる航路は"造られた"海域だった?」…とナミが。

「それが凪の神様の力だってのか?ヤーナムの凪の海と同じ…」とゾロが。

「で、てめェ等はそいつを潰されると困るってわけだ」とサンジが。


麦わらの一味の言葉に、スパンダムが声を荒げる。


「"おれ達"がじゃねえ!」

「この呪いに支配された世界の軛、その片一方をぶっ壊して、てめェ等もタダで済むわけねえだろう!」


そこまで言ったスパンダムは、肩で息をしながらロビン達に向き合う。


「おれとて今のてめェ等全員をCP9だけで抑えられるとは思ってねえんだ」

「それにイロイロ眠っていがやるこの島にはバスターコールも仕掛けられねえ」


ロビンが「だから私達にこの話を?」と問えば、スパンダムは「おれを除いてCP9は事の詳細を知らねえ。連中が動くためにいるのがおれだ。だがそれも…」と言葉を返す。


より情報を持っている『ゼロ』ってのがフザけた動きをしてやがるせいで身動きが取れなくなった…と、麦わらの仲間達に指摘される。

それは事実なのだろう。そして……



【考古学者の一手と話の終わり】

・ロビンは涼やかに告げる。


「だそうよ、デュラ」…と。


驚くナミ、流石ロビンちゃんと笑みを浮かべているであろうサンジ。


ロビンはサンジがこの聖堂に反応した時点で、子電伝虫の通話を切らずに進んでいたのだ。

つまり、今までの会話は通信本部のデュラやコアラ、ミョスガルド聖にも伝わっている事になる。


スパンダムが色々話してくれたお陰でよく分かった。とロビンは内心に呟く。

そして、


「"D"の血がこの世界にとってどんな意味を持つとしても…今の私は麦わらの一味の考古学者」

「私の為に世界を敵に回してくれた船長さんを、世界のために差し出すなんてもってのほかよ」


そうきっぱりと、スパンダムに告げる。

子電伝虫の音声越しに、デュラも言葉を紡ぐ。


「我らもその件での助力は出来んな」

「貴公はまだ…あの夜の夢を知らん」


手を取り合うことはない、とロビン達に告げられたスパンダムは


「……てめェ等も"知る側"ってワケか」


そう呟くと、今度こそぐったりと象にもたれかかった。

ロビン達に対しクソ共、と悪態をつきながらも敵意は感じられない。


「なら行けよ」

「呪いってのが親父から聞いた通りのモンなら、おれはもう付き合いきれねえ」

「なんにせよ、そっちも儀式をなんとかしねえ限り航海もクソもねえんだ」


スパンダムの言葉に、最初からそのつもりだ。と答える仲間達。


それを聞いて、スパンダムは今度こそ「…とっとと行きやがれ、馬鹿野郎共」と捨て台詞を残した。


彼の捨て台詞を背に再び歩み始める仲間達、そしてロビン自身。

皆を追いかける足が、ひとつの気付きによって止まる。


コラソンは"神"になってる

いえ、なりかけてる以上、彼の傍らには"D"がいたはず。


けどそれは、本当にルフィなのかしら。


スパンダムに、あの夜の夢を知らないと言ったデュラの言葉。

あの夜、狩人の夢にいたのはルフィだけじゃない。


もしかしたら、彼を待ち続けた少年、ルフィ達の追うもうひとりのDこそが――。


…ロビンの気付きは、今はまだ、言葉にならず。



素敵な物語をありがとうございます…!


真相の一端を垣間見たかもしれない今回のお話。大変楽しませて頂きました…!


我々読者視点ではスパンダムは「なんか凄い勘違いをしてるな…」となりますが、物語の中で、限られた情報を繋ぎ合わせてこの結論に辿り着いたスパンダムはそれはそれで凄いと思いますね。


ドフラミンゴの弟、狩人コラソンは獣狩りの夜に"解放"の赤子を呪いから解放した。

コラソンは神の血筋、そして"解放"の赤子を宿すは"D"の血筋。

コラソンは凪の神となりかけている。

"解放"の赤子はエレジアの悪夢にて覚醒を観測された。

なによりも"解放"の赤子を宿す"D"はコラソンを知っていた。


ドフラミンゴはコラソンを政府から隠し守り通し、また"解放"の赤子を宿す"D"…麦わらを頂上戦争から逃がした。

鬼の子たるエースの首を取るという実績と、ヤーナムに縁深い海賊、トラファルガー・ローを使って。


ここまで「状況証拠」があればそう思い結論に至ってもさもありなん…


そしてスパンダムから情報を引き出し、デュラ達に情報を繋げるロビンちゃんのファインプレー!

さすがロビンちゃんだ…!一味の中でもこういう頭脳戦を描けるのは考古学者たるロビンちゃんならではですよね。


スパンダムもスパンダムでちゃんと「信念」があるんだなって感じ取れる言葉や立ち回りなのが良きですな。

ただのひ弱で権力に固執するだけの男ではないのだ。


ロビンちゃん達は先に進みますが、この先に何が待ち受けているのか…

まだまだ片付いていない謎は盛り沢山。

願わくばスパンダムもちゃんと夜明けを迎えられますように…ファンクフリードと一緒に満身創痍で聖堂にいるからさ…


地味にスパンダムに情報を与えなかったサンジのファインプレーにも拍手を送りたい。出来る男、サンジ。


次はどんな物語が待ち受けているのか…

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