真新しい手記・32

真新しい手記・32


新作だー!\太陽万歳!/

執筆お疲れ様です…!


『夜空の瞳』


前回は聖堂街上層、その中枢の一つであろう『聖歌隊』の孤児院と、聖歌隊の長たる少女『シュガー』にスポットが当たった一幕でした。


物語は衝撃的な結末に閉じられ、その続きが早くも気になりますが…

今回は聖堂街上層エリアにてドフラミンゴ達を捜索するルフィ達にスポットが当てられます。

物語の語り部はブルック。

参りましょう。



【聖堂街上層は燃えているか?】

・物語冒頭、ルフィ達は今朝方にルフィとジンベエか聖堂街上層へと訪れた際に利用した抜け道を利用して聖堂街上層へと乗り込みます。

聖堂街上層にはヤーナムを支える基幹組織である『新医療教会』の、その内部組織である『聖歌隊』が運営する孤児院があり、孤児院の長であるシュガーや現在聖歌隊で世話になってるウタが在籍しています。

望まずながら『獣狩りの夜』か始まってしまった現在。彼女達は無事でしょうか…?

ブルックも内心に心配の念を零します。


「今はウタさんも上層においでです」

「政府や儀式の主が関わらずとも、人ならざるものの跋扈する今夜」

「ご無事を祈るばかりですね」


・上層に向かう道すがら、ルフィとウソップは目の前の光景に思わず足を止め、言葉を絶たれたように呟きます。


ルフィ

「あれ…」


ウソップ

「なんだ、ありゃあ…」


ウソップが指し示した先にあったもの。


ブルックの開くことも閉じることもない黒き眼窩が、強い光が広がるのを捉える。

星が、瞬く。

聖堂街の上層、聖歌隊のための孤児院が、煌めく火に巻かれて輝く。

故を知らずとも己の魂を震わす『それ』は、完成された調べのように恐ろしい今宵の夜空を照らしていた。


ウソップ

「なんてこった…上層が…」


ルフィ

「……あいつだ」


ちくしょう。とルフィは呟き、上層へと向けて走り出す。

ルフィにはあの星の瞬きが、煮え立つ雲の下に生まれた星の声の主が『誰』であるかが分かったのかも知れない。

「もしやルフィさん達を導いたあの方だったのでしょうか」…そうブルックはそう内心に零した。

今宵の上層にて、いったい何が起こったというのだろうか…


・目の前に広がる衝撃的な光景にばかり心を配るわけには行かない。

ルフィ達の前に現れる眷属達。

デュラ達の予想通り、今宵のヤーナムは獣ばかりではなく人ならざるもの達も多く現れている。

戦わなくては、今も狩長達を、新医療教会を信じて窓と門扉を固く閉ざし夜明けを待つこの街の住人達も危険に晒されてしまう。


構えたルフィ達を感知し、ゆらゆらと街を夜行していた眷属達がルフィ達へと向かってくる。


いざ尋常に……!

ルフィ達が眷属へと技を繰り出そうとした瞬間。


「離れて!!!」


聞き馴染みのある声が、ヤーナムの街道に響いた。



【登場!星の娘達!】

・聞き馴染みのある声に続いたのは、レンガ造りの堀を焼き現れた神秘の青白い光線。

眷属を焼き尽くしたそれの奥から現れたのは、白き体と翠玉の如き緑の瞳。

ブルックに「白く麗しいお嬢さん」と言わしめた麗しき令嬢の背から、聞き馴染みのある声の主が顔を出す。


ウタ

「ルフィ!!」


ルフィ

「ウタ!!」


ブルック

「ご無事で!!」


麗しき白き令嬢の背から現れたのは、歌姫・ウタ。

更に白き令嬢のその背には、見れば子供や女性が大勢乗っているのが確認出来る。


ウソップ

「うわ!!!なんだよそいつ!!!」


ウタ

「エーブリエタースだよ!大丈夫、この娘は味方だから…」


チョッパー

「み…味方…?」


白く美しい触腕から距離を取るウソップとチョッパーに、ウタは悲しげに頷く…

ブルックはその様子に悟る。

孤児院より脱出し、生き残ったのはこの白き令嬢の背にいる人々だけなのだと。


ウタ

「ルフィお願い、ローを追いかけて…!」


ルフィ

「おう」


ウタ

「湖に行かないとって、その途中で私達を助けてくれて…その後独りになっちゃったから…」


ルフィ

「ブルック」


ブルック

「ええ」


ルフィの一声に、ブルックが応える。

お嬢さん方にエスコートもなしでは、サンジさんに怒られてしまいますからね。…と、ブルックは内心に語る。


ブルック

「不肖ブルック、貴女の護衛を承りましょう」


ウタ

「いいの…?私あなたに…」


ブルック

「おや、エレジアでは素晴らしい音楽を聴かせていただきましたよ?そのちょっとしたお礼です」


ウタ

「……ありがとう」


世界の歌姫に頼りにしていただけるとは、光栄の至り。

目的地までお守りいたしましょう。

…ブルックの思いは、きっとウタにも伝わっているはず。


ウソップ

「ブルック!そっちは任せたぞ!」


チョッパー

「無茶しちゃ駄目だぞ!」


ブルック

「ええ、お任せください!」


遠ざかる仲間達を見送り、白き令嬢…エーブリエタースにも一礼を忘れないブルック。


ブルック

「さて、参りましょうか」


ウタ

「うん。行こう、ソウルキング」



【赤き月夜 黄金郷への避難行】

・ルフィ達と一旦別れ、ウタ達の護衛として動く事となったブルック。


ウタ

「エーブリエタース…!もうちょっと頑張って…!」


ブルック

「グラン・テゾーロまでもう少しですよ!」


眷属とアメンドーズ…恐らくモネ達が「彷徨う落とし子のような上位者」と呼ぶ存在達が溢れたヤーナムの市街を駆け抜け、森を抜け、山道を下りこの島の玄関口である港を目指す。


港への道のりの中で、皆を庇い攻撃を受けたエーブリエタースは灰色の血を流しながらも、それでも歩みを止めることはなかった。


向かうは港に停泊する黄金郷…黄金の街『グラン・テゾーロ』。

グラン・テゾーロは赤い月から少しでも逃れる為にローが言い残した避難所であるという。

孤児院には天竜人の血を引く子供達が集められており、市街にいては獣化や血に酔うリスクが高いのだとか。


そうして暗い森を超え、人気の無い港まで辿り着いたものの……

グラン・テゾーロを望むその場所にて見つけたのは、獣と狩人の亡骸だった。


ウタ

「え…?何が…」


ブルック

「危ない!!!」


急激に此方へと距離を詰めてきた人影。

人影は声と共に抜刀したブルックをすり抜け一気にエーブリエタースへと躍りかかる。


人影から放たれた一撃。


槍のようなノコギリのような武器をエーブリエタースの首元に食い込ませ、エーブリエタースは人影…襲撃者を薙ぎ払い武器を首元に食い込ませたまま超音波の壁を展開。

ウタがそれに併せて手元の道具から神秘の霧を放つ。


襲撃者はそれらを全て躱し、闇夜に短銃の音を響かせた後に一定の距離でぴたりと止まった。


・襲撃者が口を開く。


「やれやれ。口の軽い番犬のおかげで計画が狂ったわい」


短銃を放りだした襲撃者…彼は会場で見たCPの内の一人だった。

彼が使っていた短銃も、エーブリエタースへと放った武器も、どうやら亡骸となった狩人から奪ったもののようだとブルックは分析する。


…さてこの襲撃者、読者視点では本人が名乗らずともその正体は明白ですね。

彼はCP9が一角。動物系悪魔の実の力を宿す武人にして剣士、古風な口調が特徴的な青年・カク。

キリンの悪魔を宿す彼がまさかここでの登場とは……てっきり彼は司法の島で対戦したゾロとの再戦が初登場になるかと予想していたので驚きです。


・カクはやれやれ…といったように語る。


カク

「まったく、よりによって狩人を闇討ちする羽目になるとは」

「随分な古参のようじゃが、この獣共に勘付くとは恐れ入る」


ウタ

「あなたが…その人を…!」


カク

「なんじゃ知り合いか?こちらしてもやり手の狩人の数を減らしたくはなかったんじゃ」

「まさか番犬諸共始末することになろうとは」


ブルックは内心に悟る。

彼はやはり、話し合いでなんとかなるような方々ではなさそうだと。

かなり強者の風格である彼ではあるが、こちらも我らが船長に世界の歌姫達を任せて頂いた身。退く訳にはいかない。


ブルック

「行きます…!!"掠り唄"…」


「そこまでた」


ブルックの言葉が、途切れる。


・カクでもウタでもない、ましてやブルックの声でもない声に制止され、ブルックの言葉は途切れ、体も動かなくなってしまった。


その声の主とは……


カク

「なんじゃテゾーロ、来ておったか」


テゾーロ

「話は中でだ。私は外でそれほど力を使えない」


声の主、それはグラン・テゾーロの主にして『黄金帝』の異名を持つ男・テゾーロその人だった。


ブルックは固まった体に視線を落とす。

己の体は、表面を高硬度の金に覆われていた。これはテゾーロの能力。


テゾーロ

「黄金の街の洗礼は海水でなければ解けない仕組みでね…保険が役に立ったようだ」


カク

「本当に便利な能力じゃ」


ブルック

「テゾーロさん、貴方…」


テゾーロ

「さあ、全員こちらへ」


エーブリエタースの気配が最後に揺らいで、消える。

それを見届けたテゾーロは、金の指輪が嵌った指を鳴らして告げた。


「歓迎しよう、我が街の流儀でね」



…素敵な物語をありがとうございます…!


今回はルフィ達にウタちゃんにカクにテゾーロさん!!

衝撃の展開が二転三転、最後の最後はすわテゾーロさんの裏切りか…?!とハラハラドキドキ、大変楽しませて頂きました…!


物語の冒頭から聖歌隊の孤児院が燃えてるしよぉ…シュガーちゃんは?!シュガーちゃんは無事なのか?!無事でいて…!!

こんな形でのお別れは嫌だよシュガーちゃん…!!


そして上層から脱出して来たウタちゃんとルフィ達の合流に、何より驚いたのはエーブリエタースちゃんの登場!

やったー!!ブラボ界でも屈指の人気を誇る美少女ヒロインの一角!

しかも強いぞ!眷属達を薙ぎ払い活路を拓くその姿…見惚れてしまいますね。

今回はウタちゃんや避難できた孤児院の子供達や女性スタッフを乗せての登場。

…何気にウタちゃん含めエーブリちゃんの背に乗せられ避難してきた人達だけしか孤児院の生き残りがいなさそうな描写に胃が痛むのが止まらない…


ウタちゃんエーブリちゃんの星の娘達の護衛役に抜擢されたブルック氏。

ウタちゃんとブルックのやり取りがまたいいですね……!

ブルックがエーブリちゃんに対して一貫して麗しのレディとして丁重な対応して頂けて本当に嬉しい…


そしてロー達の行方にも新情報が。

どうやらローは湖…月前の湖方面に向かっている事が伺えますね。

つまりローは月前の湖方面に「ドフラミンゴが向かうだろう」と予想していた事に。

これは…ジンベエ達とローやドフラミンゴがエンカウントする可能性があるのか…?

またローがその予想を立てたのも、やはり月前の湖の下の魚人達の街が関係しているのでしょうか?

己の内の毒にあえぐ竜の血を癒せるのは彼ら魚人の血ですから…


…ふと思ったのですが。

魚人の血が天竜人の渇きや呪いを癒せるのは、もしや魚が登りつめ行き着く先が「龍」だからなのでしょうかね…

だってワンピ世界の「青龍」の悪魔が宿る大元はウオウオの実…つまり魚…

まぁ恐らく鯉のぼりの伝承が元になってるのでしょうが。

逆に考えれば「龍」の血の大元たる魚の血だからこそ、似てるが違う「竜」の血に宿る苦しみを緩和出来るのだろうか…と。

この系統の考察って元スレにありましたっけね…?


さて孤児院の人々の聖堂街上層からの避難先はグラン・テゾーロ。

なんか意外だな…と思いつつ市街にいる方が発病のリスクが高いならさもありなんといったところか。


市街に跋扈する眷属やアメンドーズ達から皆を庇い血を流しながらも歩みを止めないエーブリちゃんの姿に涙を堪えずにはいられません…!

エーブリちゃん…!いいこ…!

こんなに優しい娘が、どうして見捨てられなければいけないんだ…!


街を抜けて森を抜けて、山道下ってさあ港に着いたら衝撃の展開。

港に横たわるは獣と狩人の亡骸。

更には襲撃者…カクの登場。

驚きに驚きを畳み掛けてくる展開にハラハラとワクワクが止まりません!


カクの、ブルックの抜刀を躱しながらエーブリちゃんへの鋭い一撃。

カクが首元に食い込ませたノコ槍に構うことなく振り払い超音波の壁を展開。

更にウタちゃんがエーブリちゃんに併せてロスマリヌスで援護…

これを全て躱し切るカクの凄まじさよ…


…で、このカクが使ってたノコ槍なり短銃の元々の主。

カクが闇討ちにより倒した狩人…彼、恐らくデュラの盟友ですよね?

「ノコギリ槍」を扱う「随分と古参の狩人」というキーワードに当てはまるのはデュラの盟友ぐらいしかいないでしょうし…


そして最後の最後に最大級の驚きを掻っ攫ってったテゾーロさん。

まさかテゾーロさん、世界政府へ寝返りを…?と思いましたが多分違うと思いたい…

だって彼が世界政府に加担する、ドフラミンゴを排除する理由が…見つからない…気もするんだけど…天竜人関係でワンチャン何か思ってたり……ううん分からん。

というかカクの口ぶりからして、グラン・テゾーロで獣達をヤーナムまで運んだんじゃないか疑惑ががか……


とりあえず、エーブリちゃんに手を上げたり狩人様(推定:デュラの盟友)を亡き者にしたカクは許すけど許さん。

カクは推しキャラだし大好きだけどそれはそれ、これはこれ。

エーブリちゃんに手を上げた罪は重いぞ…!




※以下、ワンピ✕ブラボ分室掲示板にて掲載されたSS作者様の「今回の黒幕に関しては反則技を使えばわりと分かってしまう」というコメントを受けての黒幕考察。


…もしかして、今回の儀式の夜の主宰者ってミコラーシュだったりします?


いやね、作者様が語る「反則技」ってなんだろうと考えた時、ふと「死亡及び撃破描写が入ってない奴は実は生きてる」んじゃないかと思いましてですね。


獣狩りの夜編を読み返して、そういやミコラーシュ戦及びミコラーシュとの邂逅では、物語の最後に「さぁ、追いかけっこの始まりだ」という言葉で締めくくられてて、でも次の話ではもうメルゴーの乳母戦の描写に入ってるんですよね。

まるまるミコラーシュ戦の戦闘シーンがカットされてる。

メルゴーの乳母と戦ってるんだからミコラーシュは倒したんだろうって認識になるのが正しいのだけど、作者様の物語の中ではちゃんとボスやNPCの生存及び死亡描写はキチンと描かれてるから…

なんか…不自然かも…?と思っていたり。


まぁ一番の理由が「儀式の夜を執り行える技量を持ちつつ、凪の上位者に接触したい奴」が現状ミコラーシュぐらいしか思いついてないだけなのですが。

月前の湖、隠し街、ミコラーシュであればどちらにも接点がある。

ミコラーシュは白痴のロマを知っていた。

隠し街の主宰はミコラーシュが長を務めるメンシス学派である。


ミコラーシュがもし今回の黒幕であるなら、ドフラミンゴを排除したがったのは恐らくドフラミンゴを排除しないと凪の上位者に接触できないから。

凪の上位者の領域、凪の辺獄の守護者は兄上の血より生まれし者だから。


…あくまで一個人の妄想ですがね。

まだまだ黒幕に関してはわからない事だらけなので……好き勝手言えるのも今のうちかなぁと。

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