真新しい手記・31

真新しい手記・31


新作だー!\太陽万歳!/

執筆お疲れ様です…!


『狼牙』


前回、旧市街の時計塔の主であるデュラの先導により『狩人の夢』の生地、狩人の古工房に身を移した各勢力一同。

古工房内に鎮座してた、かつてのエレジアの悪夢に立ち向かった際に使用された「対赤子用の電伝虫」…のプロトタイプを用いて、各勢力一同が力を合わせこの一夜…赤き月と恐ろしい空模様となった『儀式の夜』に染まるヤーナムの夜に挑む。


古き狩人は呟いた。

「獣狩りの夜だ」と。

「今宵は長い夜になる。各々悔いのないようにな」…と。


さて今回は舞台を聖堂街上層に移し、上層の印象的なランドマークとも言える「孤児院」が舞台。

語り部は孤児院の長、シュガー。

参りましょう。



【孤児院の長い夜、院長の独白】

・物語冒頭、孤児院の同僚たるオモチャから気遣わしげな視線と言葉を受けながらカーテンを締め切るシュガー。

そうでもしないと大きな満月の光が眩しくて目に染みてしまうから。

そんな理由をつけないと、瞳の奥の熱を説明できないのだから。


・シュガーが内心に独り零す。

「ルフィ達が革命軍の仲間だと誤解されたのは、自分のせい」かも知れない、と。


シュガーは把握していたのだ。

この新しいヤーナムの内を支える機関の長として、上層部の一人として、月前の街に少し前から外部の人間が入り込んでいるという噂を。

その人物は革命軍であろうという話も。

でも、その噂話をシュガーは「どうせこの街で暴れることなんてないだろう」と無視したのだ。


天上より追われ落ちた竜の血を癒やすのは、尊き海に住まう彼らの血。

その血を宿す魚人達が、どれだけこの島で大切にされているのかその目で見ればいい、とすら思っていたのだ。


でも、そのせいでルフィ達が革命軍の仲間だなんて思われたのなら、責任は私にもある…と。


・シュガーの内心の独白は続く。


聖歌隊や孤児院の子達と同じ血を引く「あの男」がもし、もしも『獣』になってしまうようなことがあったのなら。


そんな恐ろしい空想を、握りしめた手が白く震えているのを、カップの暖かさで誤魔化す。

馬鹿みたいよね、こんな事になってから気づくなんて。…と。


「あの男」は……

死血を拒んで、血から作られる鎮静剤すら嫌がってはローの手を焼かせる。

でも強くて、身内にはひどく誠実で。

そんなあいつがいなくなるなんて、あり得ないって私はどこかで思ってた。

思っていたんだ。

私やお姉ちゃんを助けてくれた時みたいに、ずっとあのニヤニヤ笑いでこの街にいるんだって。


いつもより味のしない紅茶を口に含んで、緊張で乾いた喉を潤す。

そんな時だった。



【月夜のオオカミにご用心】

・月夜の光を遮った夜の一室に、突如見知らぬ声が響く。


「お前が聖歌隊の長か」…と。


声の主は、まるで瞬間移動でもしてきたかのように部屋の隅に現れた。


シュガー

「あんた誰?どこから入ったの?」


ジャブラ

「おれはCP9のジャブラ。ここには同僚の送迎で来たのさ」


シュガー

「……CP9?CPに9番目なんてあったんだ」


ジャブラ

「あん?なんだ嬢ちゃん、案外箱入りか?」


シュガー

「興味も関係もないし。で、何の用?」


…シュガーの部屋に現れた声の主…その正体はCP9が一角、動物系悪魔の実の能率であるジャブラ。

その身に狼の悪魔を宿す武闘派ですね。

シュガーの部屋に現れたカラクリは、恐らくブルーノのドアドアの能力によるものでしょう。

聞かれれば所属を答える辺り、シュガーに対しては「まだ」敵対的な行動は取らない様子。何か要求でも携えて来たのでしょうか?


ジャブラはシュガーの言葉にぶつくさと言葉を零していた。

「これだから象牙の塔の学者は」とかどうとか。

…多分意味合いとしては『知識人たちが日常生活の実際的な関心とは没交渉の環境の中で難解な、あまり役にも立たない学問研究に没頭する様子や態度を示す言葉』として使ってる感じかな?

ざっくり言うなら『世間に疎くで引きこもって何やってるか分からん箱入り学者がよぉ』みたいなイメージでしょうか。

これに対しシュガーは「別にあんたらのことを知らないのと関係ないでしょ」と内心でバッサリ切り捨て。

…まぁよく考えたらCP9はCPの中でも暗部を担う、世間から隠蔽された機関でもあるから知ってたら知ってたで問題なんじゃないですかねジャブラさんや。


ジャブラは仕切り直しにと言葉を続ける。


ジャブラ

「まあいい。本題に入ろうぜ」


シュガー

「……聞いてあげなくもないわ」


ジャブラ

「聖歌隊ごと政府につけ。秘儀の"開発"はお手の物だろ?」


シュガー

「いま?」


ジャブラ

「ああ。今、だ」


シュガーの内心に須臾の如く感情が奔る。

ふざけないで、と。


シュガー

「却下」


ジャブラ

「あん?」


シュガーは内心に語る。

私達の探求は、星と凪と共にある。

そしてそれは全ての、月の呪いの下に生まれた子供達のためのもの。


シュガー

「勘違いしてるみたいだけど、ここは医療教会。病み人達のための私達よ」


ジャブラ

「意外な答えだな。ウチに来りゃもっと"深くを知れる"ってのに」


シュガー

「嘘ね」


…ジャブラからしてみたら、今回の提案をシュガーが蹴るのは意外だった模様。

学者風情に"深くへの探求"をちらつかせれば此方につくとでも思っていたのか。

しかしシュガーは「私達は探求者であるが、それ以上に医療者であり、病み人達のための私達」なのだと言ったのだ。


シュガーは内心に続ける。

宇宙は、あんた達政府がお守りをしてる天の上になんてない。


シュガー

「"地上にある我々のすぐ頭上にこそ、まさに宇宙がある"のよ」


ジャブラ

「……学者ってのは、どうにも話が通じねえ」


シュガー

「それで十分でしょ。いつも尻拭いをしてあげてるんだから」


ジャブラ

「ったく……」


引き上げだ。

そう言って、ジャブラはシュガーに背を向けた。


医療教会が政府の協力機関であることもあってか、案外にあっさりと引き下がる姿勢を見せたジャブラ。

まぁこれでしつこく政府への寝返りを打診するようであるなら、ルフィ達の前に秘儀をお見舞いするところだったと内心に語るシュガー。


とにかく、こいつ(ジャブラ)には早く帰って貰わないといけない。

ルフィ達が此方に助けを求めてくるかも知れないから、とシュガーは内心でこれからの算段をつけていく。

そう思いながら、声を発する。


「ちょっと、帰り道はこっち……」


発した声は、言葉は最後まで届く事はなく。

どん、と重たい音が部屋に響く。

シュガーの視界が回る。

彼女にカーペットが近付いてくる。

遅れたように、痛みを知覚する。


「解除は気絶が条件…だったな」


狼の悪魔が、確かめるように呟く。


「シュガー!!」


同僚のオモチャの声、仲間の叫びを最後に、シュガーの思考は暗く閉ざされていく。


世界の音が遠のく最中にシュガーは、赤い月が降ってくるのをただ見ていることしか出来なかった……



…素敵な物語をありがとうございます…!


今回はシュガーちゃん回でしたね!

内心に思うのは自分の言動のせいでルフィ達が革命軍の仲間だと誤解されたかも知れないという自責の念と、望まず獣の性を引きずり出され姿を消した狩長の事。


特に狩長…ドフラミンゴへの思いに思わず胸が締め付けられる思いでしたね…

狩人と探求者、どうにも相容れぬ思想の持ち主同士ではありましたが、シュガーちゃんはちゃんと覚えてる。

ドフラミンゴはローを困らせたりもするけど、とても強くて、身内にはひどく誠実で、何より自分と姉を助けてくれた人なんだって事を。


そして今話のタイトルで登場が確定していたと言っても過言ではないジャブラさん。

ドアドアのサポートでシュガーと対面、政府側につくように交渉、交渉が決裂したと判断したらシュガーを気絶による能力解除と無力化…と誠実確実なお仕事を読者に見せつけてきました。

これぞCP9の面目躍如って感じの活躍。

また「引き上げだ」って言葉からの背を向けて油断させといて、そこから恐らく指銃によるシュガーの無力化、最後の「解除は気絶が条件」の台詞…敵ながらカッコいいと思いましたね。

狼の狡猾さと冷徹さを感じる素晴らしい描写でした…!

また「学者ってのはどうにも話が通じねえ」の辺りでジャブラの中では交渉決裂だったんだろうなーと。


また今回はシュガーちゃんは全編を、特にジャブラとの交渉シーンがカッコいいこと!!

「私達の探求は、星と凪と共にある。

そしてそれは全ての、月の呪いの下に生まれた子供達のためのもの。」

…この台詞が特に好きで…!

きっとその「月の呪いの下に生まれた子供達」の中には、口には決して出さないけどあの男…ドフラミンゴも入っているんだろうな、と。

そして"地上にある我々のすぐ頭上にこそ、まさに宇宙がある"…ブラボプレイヤーには嬉しいファンサービスも。

聖歌隊だものね!"宇宙は空にある"のです。


…しかしながら。

物語の最後でシュガーが怪我及び気絶させられてしまった。

これが意味するもの。それは、シュガーの能力で抑えていた「月の呪いの下に生まれた子供達」の呪い、獣の血の呪いの進行が一斉に、一気に進んでしまうこと。

これにより、下手すると十年余りの間に増えた聖歌隊の「血の無き」隊員達が一斉に獣に転ずる可能性が出てきました。

聖堂街上層が獣で溢れ返る可能性…

しかも気絶によりシュガーの意識が途切れる直前、シュガーはその瞳の裏に赤い月が降ってくるのを見ている…

物語の時系列がちょっと把握しきれていないのですが、これはシュガーの気絶のタイミングとドフラミンゴのダウンによる凪の秘匿の破れはほぼ同じタイミングなのでしょうか…?

物語を読んでて、まさかドアドアが放った赤目の獣達は孤児院の子供達…?!と一瞬よぎったのですが、物語の時系列とタイミング的には違いそうな予感。

…じゃああの聖堂街に放たれた赤目の獣達はどっから持ってきたんだ…?


そうじゃなくても、これもしかしたらルフィ達「ドフラミンゴ達捜索隊」と孤児院の子供達が変した獣達が聖堂街上層でかち合う可能性があるんですよね…

赤い月は上位者の降臨の先触れであり、また人と獣の境を曖昧にする。

地上に落とされ呪いが進行している孤児院のオモチャ達…天竜人の血を引く子供達にとって赤い月は劇薬に等しい。


これから先、どうなってしまうのだろうか…

シュガーちゃん無事でいて…!

…というか現在孤児院でお世話になってるウタちゃんはどうなるんだコレ?!

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