真新しい手記・14

真新しい手記・14


新作だー!\太陽万歳!/

執筆お疲れ様です…!


『語る獣』


今回も「一方その頃」のお話。

スポットライトが当たったのはゾロとロビンちゃんになります。

今話では一体どんな話が待ち受けているのか?語り部はゾロ視点でお送りされます。


物語冒頭、散歩をしてたらしいゾロですが早速ファンタスティック迷子の気配が…

ウソップの機転によりちゃんと目印も用意したにも関わらず、現在地は明らかにヤーナム市街ではない場所…「墓だらけの場所」に辿り着きます。

だってヤーナム市街で墓というとオドン教会の地下墓ぐらいしかないですし…

ゾロの目に映る「スリラーバークみてえな街並み」の「墓だらけの場所」は、ヤーナム市街の区分には含まれないですね…それは、その景色はどちらかというと……


「そっちはヘムウィックよ」


読者の疑問と予想の答えを示してくれた声。声の主は、ロビンちゃんでした。

よかった…これでゾロの完全ソロ迷子のフラグは折れたぞ…!


なんだ、ロビンもこっちに来てるじゃねえか。と思いつつ合流し言葉を交わすゾロとロビン。

でもロビンちゃんは息を切らしてる様子。何かあったのでしょうか?


ここはヤーナム市街じゃないのか…と思いつつ、息を切らしながらこちらに来たロビンの様子を聞くゾロ。

ロビンちゃんはゾロがヤーナム市街から離れるのを見たから急いで追い掛けてきた様に見受けられますが……


ゾロと合流出来て「丁度良かった」と呟くロビン。

その言葉に「集合時間にはまだ早い筈だか?」と頭に「?」を浮かべるゾロ。

ロビンは息を整えると、近くにあった大きな墓標の影にゾロを引っ張りこむ。

「(何かあったな)」と内心に何かを察するゾロに、ロビンは声を潜めて話します。


…ロビン曰く。現在ヤーナム市街では自分達「麦わらの一味」を教会関係者達が捜索しているとの事。

この島に居る限り、自分達に教会からの招集を拒否する権利はないだろうけど、ならばせめて、一味の皆が集められる前にもう少し様子を見たくてヤーナム市街から離れた街…ヘムウィックまで足を伸ばした事。


ゾロ視点からはロビンがこちらに…ヘムウィック方面に足を伸ばした訳に関しては「心なしかはっきりしない」という答えに受け取られた様子。そんなロビンの話を聞き流しつつ、ゾロは内心に先程ロビンから聞いた「教会が自分達を呼び集める用事」というヤツを考える。


…教会…「医療教会」とやらに勉強にいったチョッパー関係ではないだろう。

…ロビンはあの妙な文字(カレル文字)やヤーナムの狩人について少しは知っている様子だが、それなら一味全員を呼び出す理由にはならない。

…自分達"麦わらの一味"が邪魔だというのなら、もっと早くに相手は手を打てた筈。それこそ、一味の構成を考えるならこの島に来た際に乗り込んだ小舟ではジンベエくらいしか逃げられないだろう。


……成程。海王類ひしめく海域に一味が放り出されたら、能力者達は海に投げ出されてる時点でアウトだし他のメンバーも海中で海王類達の相手をしながら逃げ切るなんて真似は……となると魚人かつ腕も立つジンベエくらいしか逃げ切れないか。


理路整然、冷静にロビンから貰った情報を元に思考を進めていたゾロですが、不意に墓標の隙間から嫌な気配を察知します。

飛び出した気配に応戦。ロビンを自分の後ろに庇い、こちらに詰め寄ったその嫌な気配の正体とは…?ゾロ曰く「これも覚えがある」との事ですが…


「ヒュウ!見聞色も無しにこの反応速度!流石は"海賊狩り"だァ!!!」


…しゃ、しゃ、喋った…?!

ゾロの反応もさもありなん。なにせ嫌な気配の正体は、獣。しかも喋る。しかもサンジの戦闘時の様に炎を纏ってる。

ゾロと喋る獣の会話からして、動物系の能力者…という訳でもないらしい。

「喋る獣を見るのは初めてか?」と問う獣に「お前みたいに喋るし燃えてる獣を見るのは初めてだ」…と暗にゾロが答えて見せれば、喋る獣は上機嫌に笑う。


「そりゃあそうだろうな。おれは"先生"の特別製さ!」


…と謳うように語る、喋る獣。

「"先生"?」と疑問符を浮かべるロビンに喋る獣は答える。


「そうさ嬢ちゃん。おれ達みてェなのを"治療"してくれた立派なお方だぜ?」


構えは解かずしかしそう語る喋る獣ですが、次の瞬間には両耳をピンと立てて逃げの姿勢に転じます。

…どうやら教会の狩人達がすぐそこまで迫ってきている様子。

喋る獣は「狩人なんぞ引き連れてきてやがったのか!名残惜しいがこれ以上は"先生"におイタがバレちまうからな!」と逃げの一手に。

「後をつけられていなかった筈…!」と驚くロビンに、喋る獣を逃がすまいと技を繰り出そうとするゾロ。

しかしゾロの剣技はロビンの「駄目よ!」との一言と足元に咲かれた手による足払いに不発に終わり、喋る獣はそのまま暗がりにフェードアウト…姿を消してしまいました。


改めてゾロが辺りを見渡せば、あちこちに人影が。見聞色の覇気が上手く効かないとはこうも不便なものだとは…と内心にごちる。この街にいる間は目視は鉄則か、と内心に改にして。


「なんだったんだ…あいつは」


「…分からない。ヒトヒトの実の様に獣に理性を与える方法があるのか、あるいは……」


ロビンの言葉を引き継ぐ様にゾロは内心に呟く。

あるいは、逆か。

…思い出すのはドレスローザの地下墓地での事。あそこにはそれなりに百獣海賊団の構成員がいた筈だった。が、実際に海軍にしょっぴかれていったのはごく少数。代わりに見つかったのは赤く目を光らせた獣共。


ゾロが思考を巡らせてからまもなく、狩人の一人がゾロとロビンを二人に近寄ってきた。ドレスローザで行動を共にした狩人、トゥールさんと比べて今回の狩人さんは相当若い男性の様です。


「お二人とも!なぜヘムウィックまで…?」


「迷子の彼を探しに来たの」

「おい!」


若き狩人さんの問いに、しれっと「ゾロが迷子だったので」と答えるロビンちゃん。

ゾロに振り返る事もなく、淀みなく言い切るロビンちゃんが目に浮かびますね…

…まぁゾロが迷子(になりかけ)だったのは間違いではないのでね。ねっ?


若き狩人は現場の様子を見渡して言葉を続ける。


「……失礼、もしやお二人は獣を発見されたのでは?」


問う若き狩人に、ロビンは


「そうだと言ったら?」


…と返す。


「……本来、このヤーナムに獣が出るなどあり得ないことなのです」


…そう言葉を零す若き狩人。一瞬迷いを見せた後、振り切った様にゾロ達をまっすぐ見据えて言葉を続けた。


「私は未だ、この街を統べる方を…狩長を信じ切ることができずにいる」

「あなた方も心は同じはず」


…と。些か大胆が過ぎる若き狩人の告白に、ロビン達は答える。


「そうね…さっきのお喋りな獣さんから情報でも聞き出せたらいいのだけど」

「"先生"の特別製とかどうとか言ってたな」


ロビン達からの情報に「しゃ…喋る獣!?」と驚きを隠せない若き狩人。

若き狩人の様子から、どうやら獣が喋る事は狩人の間でもよくあることではないようだ…と推測するゾロ。

ゾロ達を追ってきたこの狩人…若き狩人は、目を白黒させたままで文字通り獣の臭いを嗅ぎ回り、腕を組んでは唸っていた。


「それが本当なら……お二人にお願いがあります」

医療教会まで、私と一緒に来てください。


一頻りの事を終えたのだろう若き狩人は、言葉と共にあの分かりやすい形の帽子…狩人帽を脱いでゾロ達に頭を下げていた…。



素敵な物語をありがとうございます…!


今話もハラハラドキドキの展開に、謎が謎呼ぶ登場人物達…散りばめられたキーワードに情報に、大変楽しませて頂きました…!


個人的嬉しいポイントは、まずヘムウィックの登場!

SSスレにて「あまりの寄り道っぷりに」と探索やボス戦など丸々エピソードがオミットされてしまった不遇エリアのヘムウィックが遂に…!

加盟国ヤーナムでのヘムウィックはどんな場所なのでしょうか?

ゾロが見た描写からして墓地街のままっぽいですが、ヤーナム市街や禁域(開拓地域)みたく人が暮らせるような整備がされてたりするのでしょうか?

人口過密を極めかけてる加盟国ヤーナムで、そこに整備をすれば人が住めそうな土地やら住居跡もあるのになにもせずに土地を遊ばせておくかなぁ…とか。

同じ事は旧市街にも隠し街にも言えそうですが、それは今後のお楽しみですかね?

禁域は少なくとも開拓地域以外は我々がよく知る禁域の森の姿が残ってましたし。


そして新たな敵(?)、喋る獣の登場。

獣の姿をしながらもしっかりと人としての理性を保ち、あまつさえ聖杯に潜む獣の様にその身に炎を纏っている…

初見の印象は「身を窶した男」みたいだな、でしたね。「身を窶した男」の変身体である恐ろしい獣は雷を纏っていましたが、こちらは炎を纏っているのか…という印象。

喋る獣を"治療"したという"先生"なる者…全くの謎の存在がポップしましたね…

一体どこの奇跡の医療者…何ファルガー・ローなんだ……?

しかしこの喋る獣、台詞を聞く限りゾロ達に仕掛けた闇討ちもこれが初めてではない様子。今までもこうして海賊か無法者に対して牙なり爪なりを向けてた事を伺わせますね。

でも喋る獣の闇討ちは、喋る獣自身も"おイタ"である自覚はある様子。"先生"や狩人に見つかったらいけない所業だと分かっているからか、狩人が接近していると分かった時点で即時撤退を決め込める知能の高さは厄介ですね…


ゾロの攻撃を足払いで止めたロビンちゃんの真意はどこにあるのか…

結果的に喋る獣を逃がす決定打になったロビンちゃんの行動ですが、単純に狩人達の前での戦闘をしたくなかったのか、喋る獣から情報を得たかったのか…はたまた別の思惑か…謎が深まりますね。

ロビンちゃんはゾロやサンジからも「心なしかはっきりしない」「何か気がかりがある」…とか、何か自分達とは違う考えがありそうだ、と推察されてますし、今後の動向が気になりますね。


喋る獣の正体についてゾロとロビンちゃんも推測してますが、はたして真実はどこに転がっているのやら…

ドレスローザで目にした事の回想…

悪魔の実の様に「獣に人の知と理性を与える術」があるのか、逆に「人に獣の力と姿を与える術」があるのか…"先生"に出会えば何か分かるのでしょうか…?


そしてやはりゾロの見聞色の覇気も鈍っているのですね…しかし自覚を得たゾロはもう油断はしないでしょうね。

武人とはそういうものでしょうから。


そしてサンジの時に引き続き教会の狩人が登場。

ゾロ達が出会ったのはトゥールさんよりも年若い、若きの狩人さんの様です。

若きの狩人さんとロビンちゃんの、


「Q.どうしてヘムウィックなんかに?」

「A.仲間(ゾロ)の迷子を探しに」


の問答に笑ってしまいました。当の本人(ゾロ)が居る前で一瞥もくれずさらりと「迷子」と言い切るロビンちゃんのしたたかさ、大好きです。


若き狩人さんはロビンちゃん達に問うたり最後の方の描写からして「獣の臭い」を感知できるようですね。

恐らくこの若き狩人さんは「凪の血」を輸血されて狩人となった方だと思うのですが、獣の臭いというのは「狩人」であれば輸血された血が「月の血」でも「凪の血」でも感知出来るものなんだな、と。


そして若き狩人さんの気になる発言。

「本来ヤーナムに獣が出るなどあり得ない事なのです」

「私は未だ、狩長を信じ切る事が出来ずにいる」

…ここから察するに、恐らくこの若き狩人さんは元々ヤーナムの地元住民なのではないでしょうか。


個人の妄想となりますが、この若き狩人さんは"コラソン"という恐ろしい狩人が終わらせた「最後の獣狩りの夜」以前の獣狩りの夜を、旧い医療教会の事を知る人物なんじゃないかと。

きっと彼は獣避けの香を焚き、家に引きこもり続けて夜明けを迎えた…そんな地元住民の一人なんじゃないかって。

彼の話しぶりからして、過去のヤーナムに獣が満ちていた事を知っていて、それが現在に至るまでに駆逐された(獣が狩られ、また獣の病が治療により根絶された)という事も知っているからこその「本来ヤーナムに獣が出るなどあり得ない」って発言が出るんじゃないかと。


でも実際に目の前には根絶された筈の獣の痕跡が見て取れる。

狩長が最後の獣狩り以降にヤーナムにもたらしたものを知っていても尚、彼は未だ狩長を信じ切れずにいる。

もしかしたら、若き狩人さんは狩長を信じたい、信じ切りたくて狩人になったのかな…?

それにしても今回の喋る獣に関しては若手狩人さんからしてもイレギュラーな事態っぽいですが。

…教会の狩人となっている以上は、年若い彼もまた天竜人の憐れな落とし子を狩っているのだろうか……?


謎の敵性存在「喋る獣」。

「喋る獣」が「"先生"」と呼ぶ存在。

「教会の狩人」でありながら、そのトップたる「狩長」を未だ信じ切れずにいる若き狩人。

「気がかり」を抱えてると示唆されてるロビンちゃんの胸中とその真意。


散りばめられた数々の謎がいつ解き明かされるのか…

個人的には今回登場した若き狩人さんはお気に入りキャラになりそうな予感がするので是非生き延びて貰いたい。

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