真実に向き合え『夢の終わり』
『最初はあんたも大層喜んでたけど、結局は自分の思い通りに動いてやくわりをまっとうするだけのごっこ遊びに過ぎないって気付く』
インクのウタは、話を聴くことしか出来ない。インクが溢れる口元に見向きもせずに、動揺して揺れる目でインクのウタを見るしか出来ない。
『ソコでアンタは自分の不都合な、インク関連の記憶を無くす事でごっこ遊びじゃなくて本当に仲間は出来た!って思い込む事にした。酔狂な考えと発想!正にイカれてるよ!』
だからウタは忘れていた。シュガー達を現実に実在すると思い込んだ。
『インクに込めた思いで産まれた怪物達と同じ方法で、記憶を詰め込んだインクを生み出して綺麗さっぱり忘れた!』
その言葉でウタは、目の前のインクのウタがどういう方法で生まれたのかに気付いてしまう。
『その結果、生まれて速攻で捨てられたインクから自我を得て今まで寂しく生きてきたのがこの私。おわかり?』
皮肉たっぷりに笑みを見せながら、蹲っていたウタの髪を掴む。
「痛っ…!やっ辞め『誰が大量虐殺者が痛がってるのを止めると思ってるの?』っ…」
『アンタが忘れてる間、ずっと一人ぼっちで楽しくワイワイやってるアンタのその幸せそうな姿を見て恨んでた。私をこんな目に合わせておいて、堂々と生を謳歌して笑ってるアンタが憎くて、どうしようもなかった』
言葉一つ一つが恐ろしい程に、殺意にまみれていた。先程までオチャラケていたインクのウタの言動とは思えない声色だ。
『でも、アンタはこんなに不幸になってくれた♪絶望して、幸せを崩された!最高にザマァ見ろって奴じゃない?アハハハハハッッ!!!』
最高の機会、絶好のチャンスだとばかりにインクのウタは正体を隠して真実に気付かせた。全てはウタへの復讐の為に。
涙で顔がグシャグシャになっているウタの髪を離して、インクのウタはその場で高笑いしだす。
「う…ぐっ…!?」
インクのウタに掴まれている髪から徐々にインクが出てきてウタを飲み込んで行く。
全身を一秒足らずで覆われて、ユックリと飲み込まれていくのはウタに最後の最後まで、一分1秒でも長く絶望させる為に遅くしているのだろう。
『アンタを最後に殺して、私の復讐は成就される。死ぬまでの時間を味わって死ね♪』
「ァッ………ァ………」
藻掻こうと足掻こうと、出来るのは天井に向かって手を伸ばすだけ。何も出来ずにウタはインクに飲み込まれ____
「え?」
次に目が覚めたウタが見たのは、隠れ部屋の天井だった。
慌てて起き上がると、ウタの体の上で上で口の端に涎を垂らしたまま眠るシュガーや別のベットで寝ているフラン達が居た。