真なる原初神への信仰

疑似サーヴァント、カレン・C・オルテンシア。彼女がマスターである藤丸立香と肉体関係を結んでから、数ヶ月が経った。
当初こそ減らず口を叩いていたカレンだが、幾度となく身体を重ねるうちにそれは消えていった。
代わりにカレンを支配したのは、立香に対する強烈な恋慕の情。それは彼女の行動指針にも大きな影響をもたらしていた。
───
シミュレーターでの模擬戦を終えた直後、カレンはカルデア制服を纏う立香の股間がいきり立っていることに気づいた。戦闘の興奮か、それともカレンの纏うキトンから見える素肌に興奮したのか。カレンとしてはどちらでも良かった。
「…今にも暴発しそうですね。私で良ければ付き合いますが」
「…じゃあ、お願いしようかな」
立香がカレンの腰を抱いてくるが、彼女はそれを拒まない。何故なら、今のカレンは立香の雌だからだ。
真実の愛を知り、フォンデュのように融け落ちた鋼の信仰。液状化したそれは立香の手で新しい型に入れられ、カレンに新しい信仰をもたらした。
───数多の神話を征服し、主神となった立香こそを主と崇める、立香のためだけの鋼の信仰を。
「っ…♥」
カレンは、立香に抱かれるのが嫌いではなかった。
悪魔憑きのような独りよがりのセックスはしないし、殴る蹴るの暴行も加えない。何より、カレンのことを愛する女として見てくれる。
「私、元々はとても病弱だったんです」
立香のマイルームに向けて歩く中、立香の腕を抱いてしなだれかかるカレンがぽつぽつと語り始める。
「『被虐霊媒体質』。スキル化しているのでご存知でしょう? 悪魔に反応して霊障をもたらすこの異能により、私は片目を失明し、味覚が薄くなり、走ることすら不可能になりました。生傷が絶えないので、本来なら包帯のない裸体とは無縁でもあります」
「うん」
「───ついでに言うと。私、処女ではないのですよ? 悪魔に憑かれた男に何度も、何度も犯されてきました」
「…うん」
「そんな中で、私は何かを探していた。例えるなら、死の間際の最後の救い、“暗黒の聖者”とでも言うべき何者か。…ですが、今の私がそれを探す必要はないと考えます」
「…それは、どうして?」
静かに相槌を打つだけだった立香が、初めて問い返してきた。カレンはそれに対し、少しだけ逡巡してから答えた。
「…今が満ち足りているから、では不満ですか?」
「? 満ち足りてるの?」
「ええ。あなたは、私を綺麗だと言ってくれた。エロースのもたらす悦びを初めて……本当に初めて教えてくれた」
「カレン…」
「これまでの信仰を捨て、“真なるエロース”たる立香のために生きる日々。かつての私が唾棄するであろう日々。けれど、そこには鋼の信仰をも融かす素晴らしい愛がある。炭鉱のカナリアではない、カレンという“人間”の幸せがある。本来人の形を保ったまま死ねるかも怪しかった私が、あなたの子を産み育てられるだけの健康な身体と幸せを得た。だから、もう良いのです。カレン・C・オルテンシアに暗黒の聖者はいらない。それがたとえ、血縁者だろうと復讐者だろうとです」
立香に愛された今のカレンは、かつて信仰した主の教えすらドブに捨てられる。“真なるエロース”たる立香とそのチンポに、恋慕どころか崇敬の念さえ抱いていたからだ。
…本来エロースは、カオス・ガイア・タルタロス等と同じく、ギリシャ神話世界の始まりから存在した原初神である。
時代と共にアレスとアフロディーテの子へと変じていったが、本来は原初神の中で最も崇高かつ偉大で、どの神よりも卓越した力を持つ神であった。ある意味ではカオスに並ぶかそれ以上かもしれない。
ゼウスに襲撃された立香が、カレンの中のエロースを通じて接続した力の正体がこの原初神エロースだ。「インド神話の主神となる程の力を持つ者はエロース以外ありえない」というある種の逆説的証明も駆使して得たそれは、ギリシャの神性相手に勝利を約束する鍵となった。
これこそがゼウス撃退の真相。カレンのカラダとココロを支配した立香は、それによりさらなる力を得たのだ。ある魔性菩薩が、『サクラ』達をリモコンとして月を手に入れたように。
「私の苦難の人生は全て、エロースの代弁者たる力を得て立香と巡り会うためだけにあったのです。そう、真なるエロースである立香と巡り会うためだけに」
「言い過ぎだよ。オレはそんな大層なものじゃない」
辿り着いた立香のマイルーム。その扉をくぐりながら謙遜する立香の言葉を、カレンは珍しく否定した。
「いいえ、いいえ♥ 今やゼウスを超える程の愛と力を得た今の立香は、紛れもなく真なるエロースです♥ あなたこそ、私が仕えるべき真なる主♥ 未来永劫の大主神なのですよ? 旦那様♥」
カレンが立香のズボン越しチンポに手を添え、愛撫する。
崇敬の念すら抱きながらのそれは、今のカレンにとって主への祈りにも等しい。何故なら、立香こそが唯一の神。その存在そのものが主の愛の証明。ならば、その立香への愛撫が主への祈りになるのは当然だろう。
「カレン…」
主たる立香の寵愛を受けようと必死なカレンに、立香は応えた。
───
カルデア制服とキトンが、絡み合うような形で床に脱ぎ捨てられている。それは、すぐ上で繰り広げられる着用者達の痴態の激しさを物語っているようだった。
「カラダの相性がっ♥ 良すぎる、のもっ♥ 考えもの、ですねっ♥♥」
「相性良いと、何かまずいっ?」
「ふふっ、むしろその逆ですっ♥ これでは、世の下等なオスもどき共がかわいそうだな、と思ったのでぇっ♥」
そう言うカレンの表情に、世の男達への哀れみは一切ない。オスもどき達は立香とのセックスを盛り上げるスパイスでしかないのだなら。
立香のチンポを気持ち良くするという栄誉を賜ったカレンは、オスもどきのことなど忘れ、この上ない幸福に感謝しながら喘いだ。
「あぁっ♥ もっと♥ もっと立香と、旦那様と姦淫したいです♥ だって、幸せすぎる♥ ご主人様のエロース気持ち良すぎて幸せすぎるんですぅっ♥♥♥」
立香の眼前で、絹糸のような銀髪が揺れる。
金色の瞳は立香しか映さず。
瑞々しい唇は、キスの合間に立香を讃える言葉を垂れ流す。
小ぶりながらも女を感じさせる胸や腰は所有権が立香に明け渡され。
華奢で、守ってやりたくなる四肢は立香に絡みついている。
「私っ♥ ようやく見つけました♥ 私が信仰するべき、本当の主を♥」
ゴッドやデビル程テンションが高くない、いわゆる素面で立香を褒め称えるカレン。その脳内に、かつての信仰の面影はない。
「立香っ♥ りつかっ♥ あなただけを愛してますっ♥ だから私をっ♥ 私を愛してくださいぃぃいいいッ♥♥♥♥♥♥♥」
カレンの愛の告白は、立香に射精欲を開放させる最後のトリガーとなった。
ズンッ!!! とチンポをマンコにぶち込み、そして。
────ドビュッ!!! ビュッッ!! ドビュルル! ビュゥゥッッッ!!!
「あぁぁぁぁあああんっっ♥♥♥♥♥♥♥」
二人は同時に果てた。
(───あぁ。この世の雌は等しく立香を信じ、従い、全てを捧げれば良い。それを伝えることこそが、愛の伝道師たる今の私の使命…♥♥♥)
主と共に絶頂に至る多幸感に襲われるカレンの中で、この世の真理が解き明かされていく。
その壊れきった論理のままに、カレンは口を開いた。
「旦那様♥ 私に旦那様の素晴らしさを伝道する許可をください♥ ギリシャ出身のくせに中立を気取る天秤の女神も、ケルトの海神を宿した鉄の女も、必ずや旦那様の虜にしてみせますからっ♥♥♥」
「…じゃあ、お願いしようかな。オレの守護天使に」
「ッ! はいッ♥ はいッ♥♥ 全ては真なる主たる立香の、旦那様の御心のままに♥♥♥」
守護天使として立香の命を受けたカレンは、その秘所から歓喜の潮を吹いた。
───
〈クラススキル強化〉
鋼の信仰:A-
自身に〔恐怖〕無効状態を付与
自身に〔魅了〕無効状態を付与(藤丸立香が発動させたものには無効▼)
自身のBuster攻撃耐性を少しアップ
↓
鋼の信仰(立香):EX
自身に〔恐怖〕無効状態を付与
自身に〔魅了〕無効状態を付与(藤丸立香が発動させたものには無効▼▼)
自身のBuster攻撃耐性をアップ▲
立香がマスターの時のみ、全ての攻撃に対する耐性を得る(軽減値40%)▲
信仰を捧げるべき真の主と出会ったカレンの精神性を表すスキル。
真なるエロースたる立香と巡り会えたという奇跡、それこそ主の……立香の愛が実在する証明だと彼女は考える。
〈宝具名変更〉
遍く無償の無限の愛(ザ・グレイテストヒッツ・“コーリング・アガペー”)
↓
遍く雌に性なる愛を(ザ・グレイテストヒッツ・“コーリング・エロース”)
あまねくめすにせいなるあいを。
基本は宝具名変化前と変わらないが、『真なるエロースたる立香の威光を遍く雌に示す』という関係上、アガペーではなくエロースで地上を照らしている。
立香との絆レベル:20→100
♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥…
主への信仰レベル:10→-(消滅)
〈絆礼装変化〉
真なる主への賛美
効果
アムール〔カレン〕(ルーラー)装備時のみ、自身がフィールドにいる間、味方全体のNP獲得量を100%アップ▲
マスタースキル発動時、自身のNPを50%増やす▲
解説
少女は生まれつき病弱で、それゆえか自分の運命に客観的だった。
どのような平穏であれ、彼女にとって季節は常に冬だった。
そんな少女が後ろ髪を引かれる事柄など、あろうはずもなかった。
───少女は大きな勘違いをしていた。
未練も無念も持つ事がなかったのは、病弱かつ特異な肉体がもたらす諦観のせい。
エロースを唾棄していたのは、本当のエロースを知らなかったせい。
その愚か極まりない勘違いは、全て彼が正してくれた。
藤丸立香……遍く雌が傅くべき、少女が真に信仰するべき、大いなる主。原初神エロースの生まれ変わり。
主の雌となった少女は時に愛の矢を放ち、時にオルガンを奏でる。
大いなる主の威光を知らしめ、その輝きで遍く雌を救うために。