相合傘

相合傘

トレエスノホマレ(牡)

今日は花火大会!化粧よし、髪のセットよし、浴衣よし!

さあ、あっと言わせてやるぜ!トレーナーさん!

気合を入れ、トレーナーさんと落ち合った。が・・・

―大雨のため、本日の花火大会は中止いたします。ご了承ください。―

無慈悲な一文、そしてバケツをひっくり返したかのような大雨。

あたしたちはひとまず近くの建物で雨宿りをしていた。

「残念だったな。」

トレーナーさんも残念そうにつぶやく。

正直、泣きそうだ。浴衣姿、ちゃんと見て貰いたかったな、一緒に花火見たかったな・・・

「傘、買うか。どこかで仕切りなおそう。」

トレーナーさんの提案に乗り、近くのコンビニで傘を買うことにした。

2本買おうとしているトレーナーさんを見て、あたしの中に願望が湧いてきた。

―相合傘

勇気を振り絞りトレーナーさんに提案する。

「な、なあ、勿体ないし、大きいやつ一本にしないか?」

「え、でも・・・そ、そうだな、大きいやつ一本にしようか。」

あたしの顔を見て何か察してくれたようだ。

「じゃあ、行こうか。」

傘を広げてあたしを中に入れてくれる。

下駄は正直歩きにくい。でも、トレーナーさんは歩幅を合わせゆっくり歩いてくれる。

一番大きいサイズとはいえ、二人だと流石に狭い。トレーナーさんの肩も濡れてしまっている。

どうせ周りは足元ばかりであたしたちのことは見ていない。

トレーナーさんに密着しようと近づく、が、あの人はその分離れてしまう。

嫌だったかな・・・いや、違う。トレーナーさんの耳真っ赤!

勇気を出してあの人の腕にしがみつく。

驚く様子のトレーナーさんに囁く。

「いいだろ?あたしたち恋人だもんな。」

跳ね回る心臓を宥めながらあの人に密着する。

正直、歩きにくいし、足元もべちゃべちゃだ。

でも、嫌じゃない。楽しい。うれしい。

雨は災いも恵みも連れてくる。

今日の雨はきっと恵みの雨だ。

今度から雨の日は傘を持ってくるのをやめよう。

あの人とゆっくり歩むために。



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