目玉

真っ暗闇の穴の中に落ちた絵里は、だんだん手足が動かなくなるのを感じた。
ぎっちりと暗闇の中になにかが満ちていて、それが自分に絡みついて捕まえている。
「だれなの……? なにするの? やめて、やめてよ……」
絵里の声が真っ暗闇の中に響く。
両手を引っ張られて動かせないままなのに、服が捲りあげられていくのだ。
だんだん恐怖の中に、羞恥心がまざってくる。
(見てる……! なにかが、わたしのこと、じっと見てる……!!)
廊下で感じた視線、吞み込まれる前に感じた視線。
すぽん、とスカートが引き下ろされて、下着もいっしょに脱げてしまった。

「きゃああっっ」
絵里は悲鳴を上げて足をばたつかせてみたものの、ほとんど足が動かせない。
左右に足を開いたまんま、パンツを履いてない股間を晒している。
「う、ぅぅぅぅ……やめて、やめてよぉ……見ないで………」
そこに視線を感じて、絵里は羞恥心で涙をこぼして必死に哀願する。
その時にはじめて、暗闇の中に絵里のものではない、べつの音が聞こえた。
嗤い声だった。
◆ ◆ ◆

「もう、やだ……やめてよぉ、わたしのこと、ぜんぶ見たでしょ……?」
絵里の声が暗闇にむなしく響く。
ついには丸裸にされて、両手を高くバンザイのポーズにされて、両足も左右に大きく開いたまま、何も隠すことのできない絵里の身体を無数の視線が舐め回している。
「ひゃぁ……っ、な、なにするの、やだ、やだあああああああああああっっ」
羞恥心で顔をぐしゃぐしゃにする絵里の足の付け根に、なにかが触れる。
なにもわからないまま、絵里は必死に身をよじり悲鳴を上げた。
まだ見ていなかったもの、絵里の中まで、暗闇の中の視線が覗こうとしていた。