皐月賞後の一幕(改訂版)

「外からドゥラメンテー!
外から、何と! ドゥラメンテー!
これほどまでに強いのかーっ!?」
第75回皐月賞、レースは直線抜け出したゲンジツスティールと
キタサンブラックを、外から伸びてきたドゥラメンテが
凄まじい末脚で2人をまとめて差し切って勝利を手中におさめた。
途中、コーナーで彼女が外に膨れて、あわや他の出走ウマ娘に
ぶつかりそうになるアクシデントはあったが、レースの結果に
影響を及ぼすほどのものではないとされ、最終的な着順は
1着ドゥラメンテ、2着ゲンジツスティール、3着キタサンブラックとなった。
前走の共同通信杯では2着となり、惜しいところで
勝利を逃したドゥラメンテだが、皐月賞を制したことで
名実ともに世代の主役へと名乗りを上げていくこととなる。
ドゥラメンテとは音楽用語で「荒々しい」の意。
彼女の名に違わぬ、荒ぶるラストスパートだった。
「重賞、並びにG1初制覇おめでとうドゥラメンテ。
しかし...第4コーナーでのドリフトには私も少しばかり肝が冷えたよ。」
「...本当はあんなに膨れるつもりはなかった。
ただ、曲がろうとした時に脚に変に力が入ってしまって
他の出走者達やトレーナーにも迷惑をかけてしまった...」
検量室にて彼女の帰還を待っていたトレーナー、ニラムも
コーナーでの一件を咎めながらもG1を勝利したことは非常に嬉しそうな様子である。
「他にも色々言いたいことはあるが、レースで
勝った後に私がとやかく物を申すのも無粋というもの。
────ともかく、今日はお疲れ様。
二冠目の日本ダービーでも期待しているよ、君の描(えが)く『リアル』を。」
「気遣いに感謝する、トレーナー。
...彼女達もダービーに向けて巻き返すべく必死に策を練るだろう。
だが、ダービーも必ず私が勝つ。
勝利は『前提』───私に流れるのは、そういう血だ。
(私が見据えるのは世界の頂点、凱旋門───
その頂に立つ為には、ここで立ち止まっている暇などないのだから)」
勝利を逃した他の出走ウマ娘達やトレーナー達の事など露知らず、
ドゥラメンテとニラムは勝利インタビューへと向かうべく検量室を去るのだった。