白と黒の邂逅

白と黒の邂逅

無敵ロイヤルキャンディ

キュアエコーこと坂上あゆみとそのパートナー妖精のグレルとエンエンは休日の昼前にTVを観ていた。1人と2匹が観ていたバラエティー番組ではコーナーとしておいしーなタウンのハンバーガー店が紹介されている。

「あのハンバーガー美味そうだよなー」

「そうだねー」

「おいしーなタウンってデリシャスパーティプリキュアがいる街だったよね?ボクも会ってみたいなー」

「……2人とも、もうすぐお昼だし今から行ってみる?」

「行けるのか!?」

「でも今から行ったらお昼ご飯食べ損ねちゃうよ?」

「大丈夫、わたしも少し前まではそう思ってたから。でもみゆきちゃん達から教えて貰ったんだ」

あゆみはそう言って上履きとカバンを準備してから2匹と一緒に自室に戻ると、決められた手順で本棚を操作する。すると目の前が輝きはじめて、大量の本が並べられた大きな木の前に飛ばされていた。

「すげーな、本が一杯だ!」

「ここはふしぎ図書館っていうんだって。みゆきちゃんが言うには、ここには世界中のメルヘンが集まっていて……」

「あゆみさん?」

「えっ、れいかちゃん?」

先客が来ていた事に驚くあゆみ。れいかは自前の書道用の道具で『道』の文字を大量に書いていたようだ。

「グレルとエンエンもお久しぶりです。何処かにお出かけですか?」

「ああ、オレ達おいしーなタウンのハンバーガー食いに行くんだ!」

「あと、もし出来たらデリシャスパーティプリキュアのみんなにも逢えたらなって」

「そうでしたか、わたしも最近はよく行きますけど、あの街はとてもいい所ですよ」

「そうなんだ。ありがとうれいかちゃん!」

れいかに見送られた後、あゆみはもう一度本棚を操作する。おいしーなタウンはもうすぐだ。




「うう、あゆみさん達に気づかれていないでしょうか……。どうしてわたしは、あの人の前だと気が動転してしまうのでしょう……?」


〜◇〜


「……さて、ここなら大丈夫かな。2人とも、もう出てきていいよ」

おいしーなタウンの森の中、あゆみのカバンに隠れていたグレルとエンエンが顔を出す。流石に多くの人の往来がある街中で妖精である2匹を出す訳にはいかないと考えたあゆみはハンバーガーをテイクアウトして森の中でレジャーシートを張って食べる事にしたのだ。

「もうオレお腹ペコペコだよ」

「ボクも……」

「それじゃあ、みんなで食べようか!」

「「「頂きまーす!」」」

口に入れると濃厚な肉汁が溢れ出し、レタスのシャキシャキ感で脳が活性化するようなあゆみには未知の感覚。2人と一緒に来てよかったとあゆみは心からそう思った。

「オレこれならいくらでもいけそうだよ」

「うん。おいしーなタウンの人達、みんな幸せそうだった。デリシャスパーティプリキュアは、ここの人達の幸せを守ってるんだね」

「……プリキュア?」

「「「!?」」」

「誰!?」

咄嗟に振り向くと買い物袋を手に提げた少年が近づいていた。エンエンは咄嗟にあゆみの後ろに隠れ、グレルはおもちゃの剣を構える。

「あゆみとエンエンに手を出すつもりなら、オ、オレが許さないぞ!」

「ああ違う、違うから落ち着いてくれ!……えっと、俺は品田拓海。ここのプリキュアの……仲間だ」

「デリシャスパーティプリキュアの!?」

プリキュアの仲間と聞いてエンエンが思わず身を乗り出す。それから、しばしプリキュアの話題で会話が進む2人と2匹だった。


「やっぱりプリキュアって沢山いるんだな。俺が会ったのは他にも夢原達に花咲達、他にも青木や相田、後はララに花寺達にローラ達、ソラ達にも会ったな」

「れいかちゃんにも会ってるんだ……ですね。」

「別に敬語じゃなくてもいいぞ?その方が慣れてるし」

「えっと、それならお言葉に甘えて……。拓海さんは、プリキュアのみんなの事をどう思ってるの?」

「?言いたい事は色々あるけどいい奴らだと思うぞ?個性的過ぎて大変だなって思う時はあるけど」

拓海はそう言って自嘲気味に笑う。しかしそんな様子の拓海に、頷きながらもあゆみは自らの想いを紡いだ。

「そうだよね。みんな、いい人達だとわたしも思う。……わたしもプリキュアだけどみんなと違って直接悪い存在をやっつける事は出来ない。けど、そんなわたしだから出来る事があるって優しいみんなと一緒にいて気づけたんだ」

「あゆみ……」

「……倒すだけが戦う事、守る事じゃない。お前が思っている以上に、お前は強いよ坂上。あの時の俺よりはずっとな」

「拓海さん……?」

「それじゃあそろそろ俺は行くよ。いつまでも道草食ってる訳にはいかないしな」

「ごめんね拓海、買い物帰りなのに」

「気にすんなって。じゃあな坂上、そしてグレルとエンエン。今度会ったら美味い店紹介するよ」

「……拓海さん!」

立ち上がった拓海をあゆみは呼び止める。

「あの……わたしの事、あゆみって呼んでくれたら嬉しいな。わたし、拓海さんともお友達になりたいから」

「わかった。……あゆみ、また今度な」

「……はい!」

「またなー」

「バイバーイ」

去っていく拓海を見送る1人と2匹。彼の事情を知った時にあゆみがどんな反応をするか、それはまた別のお話。

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