白い世界の中で 2
(https://telegra.ph/白い世界の中で-01-28の続きです)
(クソ飼い主事件後カイザーのメンタルがドン底の世界線)
(チョキ宮視点)
「ユッキーは今日お休みだからね」
その宣言がされたのは朝に凪くんを起こして準備をしている時だった、最近色々あったしゆっくりしてほしいらしい。凪くんもサッカーで大変なのに優しいなあ。
ブルーロックでの俺の仕事は凪くんのサポート、だからそれが無くなると部屋の掃除とかベッドを整えたりくらいしかやる事が無かったりする。休みって言われたけど落ち着かないから凪くんがトレーニングに行った隙に終わらせてしまった。
「凪くん、頑張ってるかな」
本格的に暇になってしまった俺はベッドの上で寝転がりながら呟く、ぼーっと天井を眺めていると前に巻き込まれた事件を思い出した。昔カイザーくんに見捨てられた飼い主が彼を取り戻そうと俺ごと連れ去った事件を。
あまり思い出したくない事ではある、あの元飼い主のせいで皆に凄く心配をかけてしまったし凪くんに貰った大切なチョーカーもボロボロにされてしまったから。凪くんが泣いている俺の頭を撫でながら今度は丈夫でかっこいいの付けてあげるねと言ってくれたけどやっぱり悲しい。ボロボロにされたチョーカーは出来る限り綺麗にして大切に保管している。一生の宝物にするつもりだ。
もう少しゆっくりしたらいつもの場所に行こう、もし途中でカイザーくんに会えたら二人で太陽の光を浴びよう。カイザーくん何でもないように振る舞ってるけど結構参っちゃってるみたいだし癒しは大事だよね。そんな事を考えていると枕元に置いてある俺のスマホが震え出す、どうやら着信みたいだ。珍しいと思いつつ画面を見ると電話の主はカイザーくんだった。
「カイザーくんどうしたの?今はトレーニングの時間じゃあ『剣優』…いつもの場所、行く?」
『行かない、来い』
「うん」
これは駄目かもしれない、カイザーくんの声があの時みたいになっている。我慢して我慢して頑張ったけど糸が切れちゃったんだろう、カイザーくんは弱い自分を見せたがらないからきっとネスくんもそばにいない。だったら俺がそばにいてあげなきゃ、じゃないとカイザーくんが一人ぼっちになってしまう。
「すぐ行くよ、待ってて」
俺はベッドから降りすぐに部屋を飛び出した。誰もいない廊下を早足で歩き続ければ何度か来たことのあるカイザーくんの部屋の前に着く。何故かドアに入室禁止の貼り紙がしてある。
部屋に入ると色々と物がちらばっている、中でも目を引いたのはベッドの上に積み上がったシーツの山、何だろうこれ?
「カイザーくん?」
いるはずの部屋の主がいない、わざわざ電話してきたし部屋にいるのかと思ったけど入れ違いにでもなってしまったのだろうか。探しに行くより待ってた方がいいよね。
散らかってるし片付けでもしながら待ってようと思い俺はまずシーツの山に近付いた、本当にこれは何なんだろうか。不思議に思いながら手を伸ばしたら突然山が崩れて中から見慣れた人が現れる。
「カイザー、くん?」
虚ろな目をしたカイザーくんがそこにいた、伸ばした手を掴まれて物凄い力で引き寄せられる。突然の事に俺は抵抗も出来ずシーツの山の中に引きずり込まれた。