痛くしてほしいゴッホちゃんがマスター(藤丸立香♂)にひたすら優しく抱かれる話
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・純愛ぐだゴホ要素がかなり濃いです
・冗長
・目が滑る
・エロくはない
・書いた人は濡れ場の描写が苦手
・ゴッホ視点
・地の文多め
・ゴッホジョーク少なめ(エミュ難しすぎないか?)
・冒頭ほんの少しだけメタい表現が入ります
わたし────クリュティエ=ヴァン・ゴッホは甚く苦悩している。
その原因は紛れもない、わたしが敬愛してやまぬマスター・藤丸立香だ。
もしこれを読むきみがこれからわたしの書き綴る苦悩の内容にうんうんと唸りながらも共感あるいは同情の念を抱いてくれるというのなら、一つ前提として伝えておかねばならないことがある。
わたしと彼は、現在恋仲と呼ばれる関係にあるのだ。
いや、本当に。愚かなわたしの愚かな夢想などではなく。困ったことに幻覚ではないらしい。
彼がわたしに紡ぐ芯の通った言の葉も、彼の穏やかな春の陽射しのような笑顔も香りも、すべてすべてが鮮明に思い出されてしまう。
それほどにまでわたしは彼に恋い焦がれているにも関わらず、わたしと彼は未だに初夜と呼ばれる蜜月を迎えたことがないのだ。
おそらく彼はわたしに性的興奮を覚えていないのだろう。わたしが出来る限り淫靡に誘おうとも「あんまり肌を見せるものじゃないよ」と彼はわたしを気遣うのだ。わたしはどれだけ痛くされても構わないのに、甚く痛くしてほしいのに、わたしの想いは彼に届いていないのだろうか。
彼の為なら何だって出来る。何だって受け入れる。だからマスターさまのお好きなように、わたしに痛みを与えてください、と。そう希うことは許されないのだろうか。
────とまあ、わたしは誰が読む訳でもないチラシの裏にでも書くような事柄を、わざわざ己の心の内を整理する為だけに便箋と──ヴィンセントだけに!──いう高尚なキャンバスへと書き連ねてみたのだ。
『これを読むきみ』だなんて存在を仮定してみたが、本当に、誰が読む訳でもない。この文章が実は小説としてこの世に送り出されているものであった、だなんてメタフィクションの予言めいたフラグを立てていたという衝撃の事実が明らかにでもならない限り、この独白は誰のもとへ届くこともないのだ。
そんな自己満足で己の不安や不満を──いや、不満ではない。これはわたしが一方的に悪いのだから──ペンに載せて少しばかり発散してみると、ますます己の非を明確に著してしまったかのように思えて気が沈んできた。どうしてこうなった。
そしてわたしは自己満足の羅列に満たされた紙を丸めて屑籠に放り投げる。
はぁ、と溜め息を吐いていると、自室の扉から規則正しい3回のノックが聴こえた。
「ゴッホちゃん、いる?」
“彼”だ。ああどうしてこんな時に、わたしに何か用があるのだろうかいや無ければノックして部屋になんて来ないだろうと思案する前にまず扉を開かなければうんマスターさまは霊体化出来ないから!とわたしはごちゃごちゃになった頭の中をなんとか収納スペースに押し込んで、
「は……はい!マスターさま、どうぞお入りください!」
と、上ずった声と取り繕った笑みで彼の来訪を歓迎した。
◆
二人でベッドに座る。座り心地のよいソファでもあればいいのだが、生憎そのようなものはこの部屋には存在しない。
「あの、お茶でも淹れましょうか……?って、ゴッホはお茶なんて点てられないしどうしようもないですね、今度リキュウに習ってみようかな……なんて、エヘヘ……」
ゴッホジョークにも満たない謎の発言をぶちかましてまた自己嫌悪。マスターさま無言だし。
いや無言だと思っていたのだが、神妙かつ緊張を隠しきれぬ表情をした彼は口を開けば唐突に、
「今夜、いい?」
と言い出した。
流石にゴッホ硬直。今夜という言葉の指すものが何か分からぬような初心な生娘ではなかったので、その意味は理解できた。
────初夜を、迎えたい。初夜を誘われたのだ、あろうことか彼から。
今までもわたしは何度もアプローチを仕掛けてきたわけだがそれは悉く躱されて、そして彼からのアプローチ。
わたしは彼から性的な目で見られるような存在になれたのだろうか。彼の嗜虐趣味を目覚めさせることが出来たのだろうか。
そう思うとなんだか感慨深くて、返答のないわたしに向けて困った顔をしている彼の服の裾を掴んで、
「……はい。マスターさまの、お心どおりに」
と、彼にしなだれかかり、うっとりと囁いた。
◆
そして今、わたしは彼の部屋のベッドの上で、部屋に備え付けられたシャワーブースから彼が出てくるのを待っている。
彼の匂いがするこのベッドには何度も忍び込んだが、今わたしがここにいるのは忍び込んだ故ではなく誘われた故なのだ。
シーツや枕からも彼の匂いがする。それだけでわたしは下腹部の疼きを感じられた。
これから起こるわたしへの痛みの応酬に想いを馳せる。彼に与えられる痛みが早くほしい。
するといつの間にかシャワーの音は聞こえなくなっていて、
「ごめん、待たせちゃったね」
とノースリーブのシャツと下着を着た彼がシャワーブースから出てきた。
そして彼はバスタオルで髪の水分を乱雑に搾り取ると、そのままバスタオルの入っていたカゴの中へと投げた。
彼はわたしの腰掛けるベッドに近づく。そしてお互い何も喋らずに、彼はわたしをベッドへと押し倒した。
帽子と靴は霊体化した。残る服は霊体化するのではなく、彼に脱がせてもらうことになった。
どれだけ乱雑に脱がせられてしまうのだろうと期待したが、彼はわたしの男性用オーバーオールを留めるベルトをやさしく外し、そのままオーバーオールをゆっくりと足先から外へ追いやった。
同時に首部分のアクセサリーも外される。
今わたしに残された装飾は上着のみだ。
(ああ、ああ、早くわたしを抱いてください、マスターさま!わたしが向日葵にその身を転じてしまうような痛みで、わたしのこころを満たしてほしいのです)
期待に顔が歪んでいるのが自分でも分かる。
そんなわたしの目をしっかりと見据え、彼はそれを口にした。
「俺は今から、キミを優しく抱くよ」
確信めいた声色で。
「───────え?」
それは暖かな死刑宣告であった。
わたしは別に彼の嗜虐趣味を擽ることが出来たわけではなかったのだ。
痛くしてほしい、というわたしの想いは、きっと彼に伝わっていたのだろう。しかし彼はそれを拒み、わたしを優しさで蕩けさせることを選んだ。
意図がわからない。わたしを、やさしく抱く意図なんて────
すると彼はまた口を開いて、こうわたしに語りかけた。
「俺はキミに気持ちよくなってほしい。でもそれは痛みじゃなくて、もっと柔らかくて……もっと幸せになれるような、そんな気持ちよさであってほしい。
俺はキミのことが大好きだけど、ごめんね。どうしても譲れないものが俺にもあるんだ。
上手く出来るかは分からないけど───俺なりに頑張るからさ」
ひどく真摯な、青空の瞳だった。わたしに痛みを与えないにも関わらず、わたしに快楽を与える。彼は本気でそう言っているのだ。
マスターさまのお心どおりに。そう言ったのはわたしだ。だからわたしは彼の行為を否定出来ないし、そもそもそんなつもり毛頭なかった。
「……わかり、ました。マスターさまがそう仰るのなら、ゴッホはすべてを受け入れます」
わたしはそう言って頷き、彼もまた「ありがとう」と返す。
そして少しの吐息のみで形成された空白があって────期待で濡れそぼったわたしの蜜壷に、彼は人差し指を挿れた。
「っ、あぅ……♡」
くちくち、とやさしい刺激がわたしの中をはしる。彼の指がわたしの蜜壷を刺激すると同時に雌の肉芽に指が当たって、わたしは身体を震わせて甘い絶頂を迎え入れた。
ああ、なんで。痛くない。痛くないのに、わたし、こんなにもきもちがいいのだろう。
「二本目、挿れるよ。いい?」
「……っ、はい……お願いします」
人差し指と、中指。ふたつの刺激がうねうねとわたしの蜜壷の中を奔って、頭がちかちかする。
ぬちゅぬちゅとわたしのみだらな愛液の音がして、どうにもいたたまれなくなった。
そしてまた肉芽に指が当たれば、ついに肉芽の皮が剥けて中の芽が丸出しになってしまった。
そこを彼が愛液を纏った人差し指でぬるぬると刺激する。
「あ、あっ、あぅ……♡」
少しばかりの痛みと、脳をとろけさせる快感。わたしは遂に耐えきれなくなって、気づけば股のあいだから愛液とは違う透明な液体を垂れ流していた。
「三本目……大丈夫?」
わたしはこくんと頷く。そして彼は薬指まで使って、わたしの蜜壷を刺激し始めた。
ぐっちゅ、ぐっちゅ、と先程までよりも大きく響く水音がどうにもいやらしい。
指の動きも次第に激しさを増し、ぐちゃぐちゃとわたしのなかを掻き混ぜるような動きになってゆく。
「あっ、あはっ、あ、あ、ひあッ!♡」
強い快感に思わず仰け反ってびくっと痙攣し絶頂。
指を入れている彼も、わたしのなかがうねっていることを理解しているだろう。
とても、みだらだ。みだらなすがたを彼に見せてしまっている。けれどそんなことはもう今更で、わたしはわたしのすべてを彼に捧げるのだから、気にすることなんて何ひとつ存在しないのだ。
「よかった……気持ちいいみたいで安心したよ」
ほっと息を吐く彼。そして彼はゆっくりとわたしのなかから指を抜いて、小さく開いてひくひくと痙攣するわたしの蜜壷だけが残された。
「……そろそろ、こっち、挿れていい?」
彼がわたしに問いかける。
下着越しに見える彼のペニスは既に緩く兆しており、わたしを性的な目で見ていなかったわけではないと理解出来た。
待ち望んだ挿入。待ち望んだまぐわい。
ああ、わたし、今から親愛なるきみと結ばれるのだ。
「……マスターさまの、お好きなように……ゴッホを、抱いてください」
痛みは要求しなかった。それは彼の望むものではなかったから。
彼は大きく頷くと、下着を脱ぎ始めた。その下にあったペニスはおおよそ日本人男性の平均サイズなのだろうか。わたしには男性のペニスの大きさが分からないので何となく、だが。
そして彼はわたしの蕩けきった蜜壷に亀頭をぴたりとあてると、「はいるよ」と言って─────亀頭の部分を蜜壷に侵入させた。
肉芽が擦れてびく、とわたしの身体が反応する。彼はそのままゆっくりわたしのなかへと押し入っていって、途中で指では届かなかった場所に到達した。その先はほとんど拓いていないので、どうしても強い侵入感を感じてしまう。
「……っあ、いた、い……?」
痛み。それはわたしが待ち望んだ感覚であったはずなのだが、今の痛みはひどく甘くて、わたしの望むぞくぞくするような痛みとは何かが違った。
「痛い?……大丈夫?抜こうか?」
とわたしを気遣う彼に対してわたしはぶんぶんと首を横に振り、
「いえ……続けて、ください。ゴッホは、これがいいです、から……」
と、彼の頬に両手を添えた。
ゆっくり、ゆっくりと、わたしの胎に愛しい彼の屹立がしずんでゆく。その感覚にわたしは胸を震わせる。
痛いからきもちいい。それが本来のわたし。
けれど痛いのにきもちいいのだ、今は。
「はあ、あ、はぁっ……」
「っ……は、う……ん」
どちらのものともつかぬ吐息が交ざりあいひとつになる。
わたしの胎はどんどん彼を受け入れる。
圧迫感が心地好くて、おなかがいっぱいになるような感覚がして。
「ね、ゴッホちゃん……もうちょっとで、全部入りそうだよ」
それはつまり、わたしの胎に彼のすべてが入り込むということ?
ああそれは、願ってもないことだ。わたしは彼の背に腕を回し、
「……きて、ください……」
と呟いた。
それを合図にして、彼はまたわたしのなかにどんどん入り込む。
にちゅ、にちゅ、と拓かれてゆく感覚。わたしのすべてが暴かれてゆく感覚。
そして遂に、彼とわたしの皮膚がぴとりとくっついた。
わたしの胎に、彼のすべてが収まった。
「ああ、あ……はいっ、た……♡」
大きく心地好い圧迫感。そして、わたしの胎の中にある存在感。とても温かくてわたしのからっぽを満たしてくれて、なんだか嬉しくて、わたしは涙を零してしまった。
「え!?わ、やっぱり痛かった!?」と慌てふためく彼がおかしくてわたしはくすりと笑う。
「いいえ、いえ……マスターさま。もう少し、このままで……」
この感覚を味わっていたい。いま、わたしはやさしさというしあわせに浸ってしまっている。
痛みではない、彼のひろい愛にわたしは溶かされる。
「マスターさま。よければ、くちづけをしていただけませんか」
ぎゅう、と脚を彼の腰に絡みつけてそう願う。
「……うん」と彼は笑って、わたしのくちびるに自身の口元をあわせた。
拙いキス。全く大人なんかじゃない、子供が必死に頑張るような幼いくちづけ。
わたしの胎に彼が収まったまま、長くくちづける。次第に息が苦しくなって、ふたりはお互いの口を離した。つう、とふたりに繋がる唾液の糸。
「ね、ゴッホちゃん。動いていい、かな」
彼は言う。
「……はい。一緒に、もっときもちよく……」
わたしは応える。
それだけでもなんだかこころがあたたかさを増して────
彼はまた律儀に「いくよ」と言ってから、抽挿を開始した。
「あ♡あう、うっ♡ひぅ♡」
甘い声が抑えきれない。じゅるじゅるとわたしのいいところを何度も何度も刺激されて、軽い絶頂を繰り返している。
そしてまた小さなキスを交わす。
決して激しくはないピストン。けれど彼も射精感を抑えるような表情でわたしを悦楽の海に沈めてくれる。
ああ、胎があつい。なにかがあがってくる感覚にずっと襲われている。
きっと彼のセックスは上手い方ではないのだろう。それでもそこに込められたわたしへの愛をひどく感じ取れてしまうのだ。
「ね、なか、なか……だして、いい?」
マスターがわたしに問いかける。答えなんてもう決まっているようなもので、たとえわたしが子を孕める身体であったとしても、同じ返答をしていただろう。
「はい……わたしのなか、あなたさまの精でいっぱいにしてください……♡」
ぎゅ。腕と脚をより強く彼に絡みつかせた。
「ゴッホ、ちゃ……〜〜〜〜ッッ!!」
彼のペニスからびゅるるる、と勢いよく精が吐き出された。あつい体液がわたしの子宮の奥壁にべちゃべちゃとあたる。
「〜ッあ♡あ……♡」
その感覚すら快感で、とぷりと音を立てるわたしの胎は、痛みなんかなくてもこれまでにない悦楽を享受していた。
ずる、と引き抜かれる彼のペニス。わたしの蜜壷から彼の精がとろりと溢れ出した。
それがどうにも勿体なくて、わたしは溢れた精を指ですくって口に運ぶ。
すると彼は慌てて「そんなもの不味いよ!ぺっしてぺって!」と言うけれど、わたしは「エヘヘ……苦いけど、おいしいです」とごくんと呑み込んだ。
硬直する彼と、きょとんとするわたし。
お互いなんだかそれがおかしくなってしまって、あははと笑いあった。
◆
「ね、マスターさま。どうしてマスターさまは、わたしをやさしく抱こうと思ったんですか?」
「そんなの……うーん……やっぱり、好きな人にはやさしくしたいから?」
「ウフフ……好きな人。そうですよね、ゴッホがマスターの好きな人……ウフフ、エヘヘ……!」
「でも……ゴッホちゃんはさ、痛くされたかったんじゃないの?不満じゃなかった?それだけが不安で、俺……」
「……いいえ、いいえ。不満なんかではありませんでした。それだけじゃなくて、わたし……」
「?」
「ちょ、ちょっと恥ずかしいのでまた今度とかでいいですか!?エヘヘ言葉にするのはやっぱり羞恥心からは逃れられないというかああシラフに戻るとダメですゴッホはゴッホはゴッホは〜〜!!」
「ゴ……ゴッホちゃーーん!!」
こんな感じで、まあ締まらないオチにはなってしまったが。
隣で眠るきみを眺めながら、わたしはきみに微笑みかける。
ああ、これほどまでのしあわせがあろうものか。
わたしが初夜を迎えるとするならば、それは痛みを伴うものであるという固定観念をすっかり打ち砕いてしまったきみ。わたしのいとしいきみ。
ねえ聞いて、だなんて眠っているきみに言うことではないが。
(わたしは、あなたさまのやさしさにすっかり堕とされてしまったのです)
親愛なるきみへ、キスを送る。
そしてわたしも、きみと共に眠りについた。
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