痕

 痕


隠すために着ていた服を脱ぎ、自分の胸元に散らばるその赤色を見てシドは感心混じりの息を吐いた。

一人では見えはしないが首筋にも、尾びれの根本や太ももの裏側にも同じものがあるのだろう。


鏡を使えば見えるだろうが、それを確認する姿を義妹に見られる可能性がある以上使う気は起きなかった。

彼女には、見せるには憚られるのだから。シドにとっても、つけている相手として解られるだろうカタクリにとっても。



ふとシドは、普段は無我夢中で噛み傷をいくつもつけているカタクリのそこに自分とお揃いの同じ赤色のマークをつけたくなった。

口元を隠すための布生地で同時に首元をカタクリは隠している、そこにつければ誰にもバレないだろう。


そうと決まれば慣れないそれをするためにまず練習をせねばとシドは動き出した。自分の二の腕の、何も付いていないまっさらな所に唇を当てる。

やり方がどうにもわからず悪戦苦闘しながらも、いつもされている事を思い出し体を覆うウロコ色と同じ色に頬を染めながら、体やヒレの先にまで無数に散らばるそれと似たようなものを一つ、二つ付けれたのを確認して満足げにシドは頷いた。



次のメリエンダの時に自身がつけた覚えの無いキスマークの存在に気付き静かにキレたカタクリに

『どこの誰だ?』と詰め寄られ毒物にも似た甘ったるいお仕置きをされ

「練習で自分でつけた」と恥ずかしく白状させられればトロトロに溶かされた挙げ句練習の成果を見せてくれと、深くまで味わわれながら沢山頑張らされながら付ける羽目になるなんて。



この時のシドは知らなかった。まだまだカタクリのように、未来が見えてはいないのだから。

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