病弱晴信さんと心配景虎♂くん、逆襲?編
カルデアでは日々様々な会話が飛び交う。笑い話、失敗談、ちょっとした知恵袋的なものや当事者のみが知る歴史の裏話まで。
その中には艶めいた話が混ざる事もある。
「やはり男性にはスマートなエスコートを期待したいですね」
「それもいいけど、ちょっとドジな所があって守ってあげたくなるのもいいなぁ」
「一途でこちらの事だけを見てくれるタイプも捨てがたい」
漏れ聞こえた話だけでも、人の好みは多種多様なのだと知る。
晴信は今、医務室に行っている。何の事はないただの定期健診。何の因果か、大幅な体力や魔力の減少、疲労の蓄積などが起こると生前の病弱さが表に出て来るようになってしまったらしい。
スキルではないので常時発動するわけではないが、それでも無理は禁物と言うのがマスターや医療班からのお達しである。
健診が終わるまで時間があるため、医務室の近くで待っていようかとも思ったのだが、晴信に「普段用のない奴がいたら、何か大事でもあったのかと思われるだろ」と言われ、待ち合わせ場所として分かりやすい食堂にやってきた訳だ。
「スマートと言えば晴信さんだよねー」
よく知った名前に意識がつられていく。
「人間観察が上手くて、相手に合わせた対応ができる。教養もあるから話が途切れることもない」
「かといって、優しいだけじゃなく、ちょっと悪い部分もある」
「こちらが知らない事を手取り足取り教えてくれそう」
「大人の階段上っちゃう感じー?きゃー」
わいわいと盛り上がる話にドキリとする。始まりは不足分の魔力を補うためとは言え、色事など何も知らなかった自分に、文字通り手取り足取り教えてくれた相手は、今話題に上がっている人物なのだ。
(なるほど、女性から見ても晴信は魅力的な人物に見えると)
そんな人物と情を交わしている自分は、周囲から見るとどう映るのだろうか?いつものやり取りを思い出す。
(どちらかというと晴信が気を使ってくれる方です。私はいつも甘えてばかりで・・・)
相手の方が年上で、感情の機微にも聡い。知識と経験もあって、数手先を読んで動く事にも慣れている。
(はたから見ると、晴信の方が抱く方に見えているのでは・・・?)
思い至った結論に、頭が真っ白になる。周囲に関係を言いふらしてはいないが、知る人ぞ知るというのが今の自分たちだ。
(そう言えばいつもリードしてもらってばかりで、こちらから何かをしたことはなかった・・・)
初めから相手に導かれて始まった関係だ。それは今でも変わらず、閨での主導権は向こうのまま。
(ここは一度、私にもこれくらいの事は出来るのだとアピールして晴信に成長したと思わせましょう!)
私だって男なんですからね!!
「何で僕たちだけ定期健診なんてものがあるんだろうね」
「まあ、これをクリアしない限りはレイシフトもシミュレーションもマスターから許可が下りないしな。それに医者や薬師の相手は慣れている」
「そうですけど・・・スキルになっていない分、検査項目が少ない人に言われても嬉しくありません」
医務室から戻ってきたのを確認すると、近付いて声をかける。
「晴信」
振り向いたその顔に口付ける。隙間から舌を差込んで絡め取る様にすると甘い吐息が漏れた。
「ふぁっ・・・んむ・・・」
腰を抱き寄せてなぞると、その身に沁みついた快楽によって震えだす。
だんだん力が抜けて立てなくなったのを支えると、蕩けた瞳がこちらを見た。
「・・・景虎?」
「なんだか皆さん誤解されている様なので訂正しておこうかと」
「訂正・・・?」
「閨の上下の話です」
それを聞いた晴信は何がおかしいのか、先程までのきょとんとした顔から真顔に戻った後、急に笑い出した。
「・・・ふふっ、あはは」
「笑い事じゃないです」
「おまっ・・・そんな事・・・気にして・・・くっ、ふっ」
「真剣に考えてもらえます!?」
「ははっ・・・そういう所が、可愛いんだよなぁ。お前」
余裕の笑みを浮かべたままそう言われてしまい、心の中に火がついた。
「今日は絶対に、泣いて縋ってもやめませんからね!!!」
「望む所だ」