疑心暗鬼の種
きっかけは何時だったか、今になってはもうどうでもいい事だが
「ゼハハハハ!!オメェら中々やるなァ!」
悪名名高いあの黒ひげが、口から血を垂らして笑っていた
俺も何か所か出血しているが、致命傷は喰らっていない。まだ戦える
「そりゃどうも」
「海が強ェなんてなァ、アイツを連れてくりゃあ良かったか」
39億の首が乗る船は沈没寸前、後一撃でも喰らえば真っ二つ
って所か、今はコイツより船を狙うことにしよう
「ゲホ、ゲホ、提督……これ以上戦っても、おれ達が不利になるだけ…」
「おいおい!ここまで来て引き下がれってのかドクQ!」
「…大丈夫、『アレ』はもう奴に入り込んでいる」
自身の提督の下敷きになっている忌々しい病弱男が、ニヤリと笑って
こちらを見ている。また俺に何かしてくるつもりか?いい加減にしろ
「ゼハハハハハハ!エグい事すんなァおめェはよぉ!!」
「ゴホ…それが病気の真骨頂ですぜ……」
「なら話は早い、ずらかるぞ野郎共ォ!!!!」
鶴の一声で、黒ひげの船がどんどん遠ざかって行く。逃がさねェぞ!!
そう振りかざした鬼哭の一撃は、黒ひげの黒く硬化した腕に止められた
「……よく聞け、30億の若造」
「何だ?39億の臆病者」
バリバリと覇気がぶつかり合い、凄まじい轟音が響く。人の声なぞかき消える
程の音量だ。そのはずだ、そのはずなのに
「オメェの船に内通者が居るぞ」
この一言だけは、おれの耳にハッキリと聞こえた