生存IFロシナンテ 再会編

生存IFロシナンテ 再会編

クライマックス…………一応終わり方はお前は海賊でおれは海兵で共に生きよう。会いに来いよ、ポーラータング号でを推してた。

濤声なお遠く 再会


その顔を、その姿を、自分が間違えるはずはない。呆然と立ちすくんで見上げる前で、男は手にしていた白いコートをその身に纏った。

「コラ、さん……なのか」

アロンソと名乗っていた男は、静かな目をこちらに向けた。シャツの上に羽織るコートには正義の文字が刻まれている。

「海軍……!」

ペンギンとシャチが腰を落として戦闘態勢に入る。ローはそれを制することも、自らで動くこともできずにただその男の姿を見つめていた。

「元王下七武海“死の外科医”トラファルガー・ロー。最悪の世代か」

データを読み上げているような無機質さだが、ローはその声に目を見開いた。その声を、どれだけ夢で聞いただろう。時の流れの中で消えていく記憶の中でどれだけ忘れたくないと呻いただろう。

「コラさん……、生きてたのか」

もはやそれは確信であった。縋るような声に、コラソンと同じ顔が歪む。

「違う」

「俺がアンタを見間違えると思うのか」

「……俺はお前なんて知らねえよ」

吐き捨てる声は、どこまでも冷徹だった。動けずにいるローを守るようにペンギンとシャチが前に出る。それでも、ローの意思を汲んで攻撃には転じない。

ローが一歩前に出ると、彼が一歩下がる。そのまま逃げる気なのだろう。視線が動線を確認している。

「コラさん」

その前にルームを展開して彼の前に飛び出す。とっさに身を翻そうとする彼を捉えて地面に叩き付けた。

「生きているなら、なぜ――」

「俺はコラソンじゃねえ」

ローを蹴り上げる足は相変わらず長く、鞭のように速い。武装色で硬化された足を、シャンブルズで小石と替わって避ける。並の人間なら頭蓋骨は割れるだけではすまないだろう。

「俺は世界政府の海軍将校だ、海のクズども」

膝の埃を払って冷え冷えとした目を向ける将校にローは口をゆがめる。

「その目つき、センゴクにそっくりだな」

七武海所属であった頃、海軍本部で見た冷徹怜悧な大目付が海賊を見据える目つきとまるで同じだった。研ぎ澄まされた正義のギロチンだ。

「なァ、コラさん。あんたが生きているとセンゴクは知ってたのか」

「大目付が俺になんの関係がある」

「……アンタの父親代わりだろう」

どこまでも変わらなかった視線が揺れる。

「なぜ…いや、違う」

「そんなこと言ってやるなよ。センゴクが俺に言ったんだぜ、息子のように思っていると」

途端、彼の顔が苦み走ったものに変わる。

「M.C01746。ロシナンテ中佐――だったか。今は違うのか?」

「黙れ」

軽口をたたみかけるローに銃口が向けられる。だが、その引き金にかかる指が動くことはないと、ローは確信している。

「なあ、コラさん。アンタはいつでも嘘つきだな」

両手を広げ、まっすぐに男の元に歩み寄る。ルームは解除されている。ルームの展開よりも、銃弾の方が速いだろう。

「キャプテン!」

悲鳴のような声が三つ響く。将校の視線がわずかに後ろのクルーに向けられる。その隙を突き、ローは向けられた銃口を握りこむ。

「コラさん。アンタが本当に撃ちたいならいいぜ。三十億ののこの首、持って帰れよ」

冷たい銃口を入れ墨に押しつけ、もう片方の手で彼の胸元のシャツを引き寄せる。

「でも、俺ァ一度だってアンタをコラソンと呼んじゃいねえよ、コラさん」

目を見開いた将校の顔が、ローの目の前でぐしゃりと歪む。力をなくした銃ががらんと床に落ちて転がる。

「…………ドジったな」

低い声が漏れる。銃を握っていた手が、小刻みに震えながらゆっくりと彼の顔を覆う。

「嘘が下手になったんじゃねえか」

「俺はいつでも正直な男だよ」

片手の下の口元が笑おうとして失敗した形に歪んだ。

「離してくれロー」

「やっと俺の名を呼んだな」

ローの声が弾む。びくりと彼の肩がはねて、はじかれるようにローは彼に突き飛ばされていた。

「やめてくれ……!」

けれど、突き飛ばされたローよりも傷ついた顔をしているのはロシナンテだった。引き結んだ唇が震え、頬をぼろぼろと涙が伝っている。

「俺ァ、お前に会わせる顔なんて、ねえ」

震える声とともに、彼のポケットから取り出されたものが床に叩き付けられる。途端に湧き出した煙が部屋を一瞬で包む。

「凪(カーム)」

「コラさんッ!」

毒性のないことをスキャンした一瞬、その一瞬で音もなく彼は姿を消していた。





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