生存圏
「さて、これからどうしましょうか」
ハナコが問いかける。
ひとまずの体勢を整えたことで、思案する時間が産まれた。ならば、次の目標はどうするべきか?考えることはそれだった。
「その前に、なんで『コハルちゃんが危ない』って気づいた訳を説明して欲しいんだけど?」
「あぁ...その、本当に、本当にくだらない理由なのですが...」
「被害者は全員、『ピンク色の髪をした生徒』なんですよ。」
ミカが呆気にとられた顔をする。
「はぁ...?ちょ、ちょっと本気で言ってる?」
無理もない。そんなくだらなさすぎる理由でコハルとセリナの2人が追われていたとでも言うのか?という疑問は当然であった。
「当然ながら、他になにか共通点がある可能性は有り得ます。が、何よりも強い共通点がソレなんですよ....」
「.....まあいいや、とりあえずこれからの指針は決めないと」
「....先生!先生なら助けてくれるかも!!」
「ナイスアイデア、コハルちゃん☆じゃあ早速...」prrrrrr....
3コールもせずに通話が繋がる。
『"もしもし、ミカ?"』
「先生!!」
声を聴けた安心感がミカの胸を駆け巡る。
先生ならこんな不安も吹き飛ばしてくれる。「先生、助けて欲しいの!いまトリニティ中で騒ぎが起きてて、『ピンク髪の生徒が狙われてる』みたいで!」
先生ならスマートに解決してくれる。
「それでそれで、匿ってくれると嬉しいんだけ───────『"ごめん"』──────え?」
少女達の甘い希望は。
『"今、ミカを助けることはできない。"』
無慈悲な宣告に打ち砕かれた。
「な───────なんで?私が魔女だから?私の日頃の行いが悪かったから?」
声が震える。
否定して欲しい。
『"そうじゃないんだよ、ミカ"』
『"いまミカに手を貸すと、先生も反逆者扱いになって、下手を打てばシャーレの権限すら外されるかもしれないんだ"』
『"そうすれば私が生徒を守れなくなってしまう"』
『"だから、ごめん。"』
『"直接の介入は出来ないと思って欲しい。"』
ぺたん、と崩れ落ち座るミカ。
先生の言葉は半分以上理解出来ていなかった。
「うそだよね....?何時もの先生だったら、生徒の為にシャーレの権限なんて捨てるっていうもん」
『"...今回のはいままでとは違うんだ、ミカたちを守れば他のピンク髪の子達の被害が更に酷くなってしまう。"』
『"それに、どうやらこの事件の影響は先生も受けてるみたいでね...."』
『だから、表だった支援は出来ない。』
「...なら、裏から根回しは出来るのですね?」
『"ハナコ!?"』
「電話の持ち主が放心状態ですから、少々お借りしています。それより、今の発言は信じていいんですね?」
『"うん、生徒を守る為ならなんだってやるよ、私は。"』
「そうですか....では、失礼しま『"ちょっと待って"』」
『"私は貴女たち『レジスタンス』を支援する、その代わりに其方の状況も報告して欲しいんだ"』
「....スパイでもなさるおつもりで?」
『"まあね、ひとまずはセーフハウスの確保をした方がいいと思う"』
「....わかりました、失礼します。」
「み、ミカさま...?大丈夫ですか...?」
「うん.....うん、大丈夫だよコハルちゃん。先生にも事情があるんだもんね」
「では、セーフハウス確保についてですが──「いい手があるよ☆」」
「....ティーパーティーホスト、霧藤ナギサを襲撃すれば良いんだよ☆」