生存ハピエン過激派カッシー向け

生存ハピエン過激派カッシー向け


前回までのあらすじ

・なんやかんやで宿儺に勝利!

・なんやかんやで伏黒も無事!

・なんやかんやで日車も生存!

・なんやかんやで死刑も撤回!

・俺たちの人生はこれからだ!

・釘崎も生きてたし、五条は手荷物検査で引っかかった



宿儺を倒せたからといって失ったり壊れたものが全て元に戻るわけでもないし、荒れた東京には負の情念が集まり呪霊も際限なく湧いていて、ただでさえ数を減らした呪術師は以前にも増して馬車馬のように働いている。

日車は一般人を殺した件での刑罰を希望していたが、今の呪術界に両面宿儺にも認められた才能を遊ばせておく余裕はない。五条先生曰くの「腐ったミカン」は一掃されたけど、それに関わらず呪術界はどうしようもなくブラック体質だった。

今は呪術高専で身柄を預かり、罰の清算は状況が落ち着くまで保留ということになっている。職員寮の一室を宛てがわれ、一級術師扱いで忙しくしているみたいだ。


日車と俺は、宿儺との戦いの日以来ほとんど話せていない──


「というわけで、来ちゃった!」

「そうか。帰ってくれ」


◇◇◇


「あの時は…色濃い死が隣にある状況で…頭が、おかしくなっていたんだ…」


死にそうな顔しててウケんね。

話をするつもりで訪れた日車の部屋。いざ話そうとすると何も浮かんでこなくて、腰掛けたベッドの上から慣れた誘いをかけてみると、返ってきたのは拒絶の言葉だった。


「本来君は保護されるべき未成年だ。青少年保護育成条例に児童福祉法、いやそうでなくとも──」

「確かにあの時は多分俺も日車もやけになってて、罰されなきゃって思ってて。お互いに都合が良かったから相手に選んだってのもちょっとはあるよ」


つらつらとするべきでない理由を語る日車に被せるように大きめの声を出した。

幸い力は俺の方が強い。呪術師として活動するようになっても相変わらず着ているスーツの腕を引いて、力ずくでベッドの上に向かい合わせで座らせる。


「でもさ、俺はきっとそれだけじゃなかったと思ってる…そう思いたいんだ」

「……」


疲れからなのかこの状況のせいなのか血色の悪い顔に手を伸ばす。以前のように慌てて逸らされない目線にどこか安心して、冷たく感じる頬へと俺の体温を移すように両手に柔らかく力を込めた。

気づいてるんかな。さっきから一般論と法律ばっかで、"日車が"したくないとは一回も言ってないこと。


「日車は違うん…?」


自分ではどうかと思うけど、日車には効くらしい上目遣いでしおらしく聞いてみる。効果はバツグンのようだった。


◇◇◇


久しぶりであることと俺の負担を気にして下になると主張する日車を、準備はしてきたからと強引に押し切って後は挿れるだけというところまできた。

ゆっくりと押し入ってくる感覚に身を任せていると、なんだか妙な違和感に襲われる。この行為が久しぶりだからかと思ったけど、それとも違うような…


(そっか、目隠ししてないんだ)


違和感の正体に納得してなんとなく眺めていた腹のあたりから目線を上げると、日車の表情が目に入ってくる。

何かを堪えるように寄せられた眉。うっすらと開いて吐息を漏らす薄い唇。顎を伝って落ちてくる汗。…いつものどこか乾いた印象からはかけ離れた、熱を孕んでいる両目。

それらを認識した瞬間、背筋に甘い痺れが走った。


「はっ、えっ?」

「っ、虎杖、あまり締めないでくれ…」

「ごめ、ちがっ…!ぅぁ、」


日車が俺の目を見れないから付けていた目隠しだけど、それはつまり俺からも日車を見れなかったということで。むしろ目隠しを付けられる側だった分、最中の日車の姿を見るのはこれが初めてだと今更気づいた。

──こいつ、こんな顔で俺とヤってたのかよ…!


「ぁ、ちょっと、はぁ…ちょっとだけ待って、くれん…?ふ、ぅ…」

「…ああ、大丈夫だ。ゆっくりでいい。無理はしないでくれ」

「無理、とかじゃないけど…うん…」


ふぅふぅと息をついて余分な快感を散らす。うん、少し落ち着いてきたかも。…そうすると表情だけでなく、視覚以外から伝わる情報が頭に入ってきた。

あったかい。体温。鼓動。汗。吐息。──生きてる。

そう実感した途端に涙が溢れてきた。いきなり泣き出した俺にギョッとした日車が「どうした」と額を合わせて目を覗き込んでくる。その目にはっきりと俺の顔が映り込んでいるのが見えて、何故だか余計に堪らなくなって、日車の頭を両手で引き寄せるようにして泣き続けた。


「日車っ、ひぐるま…!生きてて、よかった…っ!」

「…ああ、君も。君もだ。生きいてくれてよかった、虎杖…!」


そう言った日車の両目からも涙が落ちてきた。

額をくっつけたまま、お互い涙腺がバカになったみたいに泣き続ける。二人分の涙がシーツに染み込んでいった。


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