生ぱふ
「……わかりました」
📞「恥ずかしいってこと?」
「?とりあえず、あっち向いててください」
📞「……はい」(さすがに調子乗りすぎた)
シュルルルル
2人きり部屋で、何故だか衣擦れの音が静かに響いている。
📞「……姉さん?」
「後ろは向いちゃダメですよ」
音に限らず淡々とした口調の姉さんに少し違和感は覚えた。これが日常の一コマのように、何事もないように自然な空気が漂う。
「では、目を瞑っててください」
📞「…打たない?」
「私のことをなんだと?」
ちょっと前に金色親子にビンタしたり、波動拳撃たれたのだから警戒心高くて当然である。
だけど少し期待があった。
📞(……さすがにないか)
ムニュ
顔全体を柔らかい何かが覆う。肌触りは優しく、赤ん坊の頃のような心地よい感覚が伝わる。
📞「姉さん…なに「顔上げちゃダメです…」
自分の目で確かめようとするもそれは、後ろから押さえ付けられ拒否される。
とぼけた風にしているが、実際気づいている。
最初の方はふざけてると思っていたが、姉さんは本当に喜ぶと思っているらしい。
実際喜びはするのだけど…。
📞「もしかしてさ…脱いだ?」
「別に家族ですし、問題は無いです。恥ずかしいですけど」
📞「血が繋がってるから問題なの!あと恥ずかしいならやめなって!」
「そこで喋られるとくすぐったいので…静かにしていてください……」
理不尽である。
こっちはどうにか冷静になろうとしているのに、黙ったらそれこそもう色々限界になってしまう。
喋ることに意識を削がないと、今までよりも濃い香りが脳から全身を甘く蝕む。
今までは色々なものが重なってたが、直接となると意外とハリがあってしっかり……何考えてるんだ。だけれど、顔を少し動かせば、呼応するように形を変える。
結局は、彼女の中からすれば僕はまだ子供なのだろう。実際に僕の母親は彼女より年下なわけだし。
トレセン学園行けるってなったらなんか若くなったけど…。ダイヤ兄さんもそう…アレは性別からか。
「コンちゃん。あ、答えなくていいです」
📞(なら呼びかける必要無かったのでは?)
「顔見知りは多いですけど、さすがに血縁が1人となると寂しいので」
軽く押さえ付けていた腕が、幼子がぬいぐるみを抱き締めるように固く、易しく頭を覆う。
「早くいらしてくださいね」
📞(耳元で義弟にそんな囁きダメだって……)
今の現状、顔の全てのパーツが彼女の胸に収まっている訳だが今はそれどころじゃない。
📞(家族ってこんな感じなのかな)
📞「いや絶対違っ…………」「きゃっ」
体感で1時間くらい無言だった気がする。
小さい頃は上の人達に可愛がられ風呂に一緒に入ったりした。
でももう種牡馬としてやっているうちはもう大人である。仕事とは違う雰囲気だと、色々もう……
というか年齢の割にはきれ
「きゃああああああ!」
📞「うぎミ゛」
最後の記憶は、影さえ置き去りにした姉の手のひらだった。
しばらくトレセン学園に行くには時間がかかりそうだ。
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