生き続ける
あり得るかもしれない未来の話今日、蛍火さんを見送った
綺麗な最期だったと、思う
何も覚えてない、いや、正確には何もかもを覚えているけど、その姿を思い出したくないだけかもしれないから、そんなことしか言えないけど
喪失感のみが残ったまま、呆然として、遺品の整理をしている
どうにか出来る糸口を見つけて、これならなんとか出来るとこれからの展望を描いて、少しずつ、少しずつ、余命が伸びていって………
ある日突然、光となって消え始めていた
………当人には、ただの延命でしかないと分かっていたらしい。それでもと、残されている内に完成させようと試行錯誤を重ねて、重ねて、重ねて─────このまま進めば、完成出来る日も予想出来た
その日は蛍火さんの命日になるだろう日だった
何も見たくなかった
目を閉じたかった
いっそ夢であることを願った
この世界を恨んだ
かつて俺の指標となった運命を呪った
それでも生きて欲しかったから続けた
間に合わなかった
俺は、生きて欲しかった人をまた失った
いっそ楽になりたかった
楽になろうとした
その度に彼女の最期の言葉が頭に響く
「私の分も、幸せに生きて」という声が
俺の幸福なんて当の昔に失くなったのに
…………あぁ、だったら、いっその事生きよう
俺に生きてくれと願った人の分、幸福を願った人の分
生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生き続けよう
俺の中の空の器に注がれた、実験体達の思いは何処かへ流れた
俺の、俺だけの、俺のためだけの、思いで満たされる
イグナイトの形も変わった。誰かの分も背負ってその力を選び振るう賽じゃない
いつか死ぬ時のための、俺を入れる棺だ