甚爾君…好きだよ…♡
釣りって分かってたけど悔しかったとある冬の寒い日、狭いワンルーム。夕飯を食べ終わり、テレビを見ながらくつろいでいる時のことだった。
「どうしたの?」
のそのそと近づいてきた甚爾に声をかける。返事がなく不審に思っていると、突然ぎゅっと抱きしめられた。
「もう、甚爾君ってば……今日は甘えたさんだね」
「……うん」
小さく返事の声が聞こえる。いつもの彼からは思えないほどの静かな声、それがたまらなく愛おしいのだ。
もっと甘やかしてやろうと思い、自分の膝を軽く叩き「こっち」と声をかける。
それを見ると甚爾はゆっくりと動き、膝に頭を預ける。あんまり緩慢に動くものだから大きな動物のように思えてきて微笑ましい。そんな気持ちで彼の頭を撫でて、暫くすると規則正しい寝息が聞こえてきた。
「えっ、寝ちゃった?」
ずっとこのままは流石にしんどいなぁと思い、軽く微苦笑をたたえる。それでもこの人に心を許してもらえてる感じがして好きだ。
「……甚爾君、好きだよ」
そう呟くと、彼の寝顔がふっと笑った気がした。
とある冬の寒い日、狭いワンルーム。それでもこの空間は確かに幸せに包まれていた。