甘えるつもりが甘えられてしまうエース概念
トレエスノホマレ(牡)現役を引退し、少ししてからトレーナーさんから、ある提案が有った。
「エース、今夜一緒に吞まないか?」
現役の時は、トレーナーさんの配慮で飲める年齢になっても飲酒はしなかった。
確かに、引退した身であれば飲んでも何も問題ないだろう。
「いいよ!どこで飲むんだ?」
「初めてだし、家で吞まないか。二人っきりで。」
あたしはついに初めて酒を飲むことになった。
二人っきりで晩酌か。なんか夫婦になったみたいでいいな。
―閃いた!
以前、パーマーから「酔いに任せていつも以上に甘えてみるってシチュ、いいですよねえ~」と言われたことを思い出した。
よし、やってみるか!
夕食の後、肴になるものを用意して晩酌の準備を始める。
「初めてだから飲みやすいやつをチョイスしたよ。」
トレーナーさんは何種類か用意してくれた。
あたしにとって酒はビールか日本酒のイメージだったので、ちょっと新鮮。
「じゃあ、乾杯!」「乾杯!」
二人で晩酌、なんかいいな、こういうの。
飲んでみるとアルコール独特の匂いと刺激。
あたしに気を使って度数の低いやつを選んでくれたようでジュースみたいで
飲みやすい。
さあ、作戦開始だ!
あたし自身は酒に強いのか弱いのかわからない。
弱い人は一杯でも酔っぱらうと聞く。
でも、この感じだと・・・
何本か開けてみたが、ダメだ、全然酔えねえ!
あたし結構強い方だったのか?それともウマ娘だからか?
酔いに任せて甘える作戦が出来ねえ!
・・・こうなったら酔ったふりして甘えるか?
そう考えていると、伏兵が来た。
「え~す~しゅき~」
思い出した・・・この人、酒に弱いんだった・・・
「あんた、まだ2本飲んだだけじゃないか・・・なんでもうヨレヨレなんだよ・・・」
「え~す~、おれのえ~す~、ひざまくらして~」
この人、甘え上戸だったのか。
まあ、いいか。甘えられるの嫌いじゃないし。
あたしは膝枕をしながらこの人の話を聞く。
内容は「好き」とか「愛してる」ぐらいしかないんだがな。
そのうち、眠り始めたトレーナーさんの頭を撫でながら一息つく。
あたしは、あんたが居てくれたから、ここにいる。
お休み、あたしの愛しい人。