理解者

理解者


私は洞窟で寝ていた...はずだった。

私が目を覚ますと、柔らかいベッドの上に横たわっていた。

一瞬海軍に捕まったのではないか!と思ったが、どうやらそれは違うらしい。

女の人がこの部屋に入ってきたからだ。

「あら、目が覚めたのね。」

びっくりして身を硬くした私を見て女の人は安心してほしそうな顔をした。

「そんなに警戒しなくて大丈夫よ。あなたの名前は?」

「わ、私?私はウタ。」

「そう。ところでウタ、なんであんなところで寝ていたの?」

「え、えっとなんだか海軍の人たちに追いかけられて、逃げなきゃ捕まっちゃうから。」

「お、お姉さんの名前は?」

「私?私はロビンよ。」

「ウタ、あなた新聞に出てたでしょ。確か海軍が情報を求めてるとか。」

「・・・・」

「お姉さんも私を海軍に通報するの?」

「私も海軍に追われているのよ。通報なんてできないわ。」

私はほっとして周りを改めて見まわした。

「ねぇロビンさん。ここはどこなの?」

「ここは私の家よ。高台だから街の様子もよく見えるわ。」

それならばと私は立ち上がり、もうすっかり明るくなった玄関の扉を開いた。

周りは予想していたがかなりの森の中だ。

藪に囲まれたこの小さな家は確かに見晴らしは良さそうだ。

私は藪の間から外の街の様子を確かめた。海軍の軍艦が何隻かきているようだ。

ついこの前まで安心できたものが今では怖い。見えるわけないのに、海軍の人に見つからないかヒヤヒヤした。

「ここから外の様子、よく見えるでしょう。」

いつのまにか隣にロビンさんが立っていた。

「‼︎びっくりした...」

「ふふっ、気配を消すのは得意なのよ。」

気配を消すって...まるでスパイだ。

「ところでウタ、連れて来て早々悪いけど、私、この島から別の島へ行かなきゃならないのよ。ウタ、あなたもついて来てくれるかしら。」

そう言ってロビンさんは船の切符を差し出した。

「うん!」

私は嬉しかった。二回も育ててくれた人と離れ離れになってしまったから。私について来てと言ってくれたことがたまらなく嬉しかったのだ。

「じゃあ、今からその服を着替えてらっしゃい。その目立つ髪色も隠れるように私の帽子を貸してあげるわ。」

私は家に戻り、持って来たワンピースと今着ている服を取り替えた。

今来ている服をよく見ると、あちこちに穴が空いておりボロ雑巾のようだった。

「この服気に入ってたのに…」

そう愚痴をこぼしていると、ロビンさんが家に入ってきていた。  

相変わらず全然分からなかった。

「とりあえず、私のお下がりのこの帽子被ってなさい。」

ロビンさんが持ってきたのは、黒いかっこいいキャップだった。

「ねぇ、ロビンさん。この島から出るって、どこへ行くの?」   

「変装をして、ここの港からウエストブルー行きの船に乗るのよ。」

ロビンさんは長い髪をまとめてポニーテールにし、シャツにカーディガンととてもカジュアルな雰囲気を纏っている。

「ウタ、そろそろ行くわよ。荷物を持って。」

「うん!分かったよ"お姉ちゃん"!」

「私はウタのお姉さんではないんだけどね。」

お姉ちゃんは苦笑いをしながら、でもどこか嬉しそうな顔をした。

「ほら、もう行くわよ!」

「はーい!」

私はお姉ちゃんの後に続いて家を出た。二人で道なき道を歩いている間に私はふと思ったことがあった。

「ねぇ、お姉ちゃん、なんでお姉ちゃんは私を助けてくれたの?」

「そうね...」

お姉ちゃんは考えて言った。

「私と似てるから...かな。」

あれこれ話している間に街外れへ到着した。

足を止めて周りを見渡しても海軍の人たちは見えずほっとしていると、お姉ちゃんが、

「ほら早くしないと船に乗れないわよ。」

と言ってきたので私は止まっていた足を動かして前へ歩いていった。

やがて人の通りも多くなり、港が見えてきた。 

「あれが私達の乗る船よ。」

そう言ってお姉ちゃんは一つの船を指差した。

その船には荷物を載せている人たちが忙しそうに行き来していた。

私とお姉ちゃんは船員の人に切符を見せて船に乗った。  

私達は一緒の部屋だった。その部屋はベッドが二つに机が一つ上にはランプとなかなか居心地の良い部屋だった。

しばらくくつろいでいると、

「ボー、ボー、」

っと汽笛を鳴らし、船がウエストブルーへ向け島から出航した。

Report Page