獅子と歩む夫婦の路2

獅子と歩む夫婦の路2


微小特異点修正後、ストーム・ボーダーの通路にて。


「───しかし良かったのか、マシュよ? 明日からはせっかくの休暇だ、カルデアのマスターと共にいるチャンスだろう?」

「先輩はアーキタイプ:アースさんや他の女性と良い雰囲気ですし、それを邪魔したくはありませんから」

「…フン。多少の語弊はあれ、あの男も別の誰かから女を略奪したということか。それにかつての私同様気も多い。罪作りなことだ」

「ああ、付き合っているのは霊基第二のアルクェイドさんではなく、霊基第三のアーキタイプさんですよ? 彼女も先輩の気の多さを気にしなかったり、自分が一番になってから矯正すれば良いというタイプのようですね」

「霊基再臨毎に違う存在になるというあれか。難儀な女だな」


正直な話、ボガードは「精霊種(≒妖精)の女と仲を深めるとは分からんヤツだ」という感想しか持てなかった。まあ、何か琴線に触れるものがあったのだろう。…そして、琴線に触れた相手がいるのはボガードとて同じこと。


「……」

「? ボガード様?」

「いや、なんでもない。…で、この後はどうする?」

「今宵は静かに晩酌と洒落込みましょう。お互いお酒の味は分からぬ身ですが、雰囲気は味わえるはずですし。…その後は、もちろんベッドで……ふふ…♥」


ボガードとマシュが互いに寄り添いながら、仲睦まじい様子でストーム・ボーダーの通路を歩いていく。最早日常の一部と化したそれに何かを言う者は誰一人としていなかった。


───


深夜、ボガードの……否、ボガードとマシュの部屋にて。

部屋の主二人は激しく愛し合っていた。


「はああぁ♥ ボガード様♥ ボガードさまぁっ♥ わたしに、卑しい妻のマシュめにもっとオチンポくださいっ♥♥♥」

「稀代の妖婦め、そんなにもオレが望みか! 聞いているぞ、おまえはあのカルデアのマスターに思いを寄せていたと! それを裏切る程か、オレは!?」

「はいっ♥ はいぃ♥♥♥ 先輩のことは今も好きですけど、今はそれよりさらにボガード様を愛しているんですっ♥♥♥ わたしの運命の人はボガード様だけなんですぅぅッ♥♥♥♥♥」


…実のところ、ボガードの問いは茶番にも等しい。

───妖精國・コーンウォール近辺に存在した『名なしの森』。そこで記憶喪失に追い込まれた者は、それを取り戻す前に記憶が上書きされることがあるという。

その条件は、『強い役割を与えられること』。『ボガードの62番目の花嫁』にして『予言の子』と定義され、その上でボガードに抱き潰されたマシュは、その条件にこれ以上ない程合致していた。…藤丸立香より、ボガードを取る程に。

───マシュの愛する人は……記憶を取り戻す前、既に上書きされてしまっていたのだ。


「すごいっ♥ すごいすごいすごいぃ♥♥♥ ボガード様ボガード様ボガード様ぁ♥ ボガード様愛してますぅぅうう♥♥♥」

「ははははは! やはりおまえは、あの男などにはもったいない程素晴らしい女だッ!! では、あの男ではなくオレを選んだ慧眼に免じて褒美をくれてやろうッ! あの男の色を洗い浄め、我が花嫁となる証を受け取るが良いッ!!!」

「ぁっ♥♥♥ 好きっ♥ ボガード様好きぃ♥♥♥ 好きすぎてイくうぅぅぅううッ♥♥♥♥♥」


───ドビュッッ!!! ビュッ!! ビュルルルッッ!!!


「あ゛ぁ゛あ゛あぁぁぁぁぁッ♥♥♥」


───


事後、マシュは仰向けになったボガードの胸板に身体を預けてピロートークに興じていた。二人共全裸で、掛け布団以外に身を包むものはない。二人にとってここは、相手に裸を晒しても良い程安心できる空間だったのだ。


「あの男と真祖の姫は口づけすらまだなのだろうな。連中は揃いも揃って初心に過ぎる」

「いえ、ヤることはヤっていましたよ? わたし見ちゃいましたから」

「本当か?」

「はい。お二人の仲が気になって調べたら、わたし達みたいにいっぱいラブラブセックスしてるのを目撃しました。アーキタイプさんったら、だいしゅきホールドでめちゃくちゃ喘ぎながら先輩の名前を呼んでいて、とっても可愛かったです♥ 先輩のオチンポも人間としてはとても立派でしたから、アーキタイプさんは幸せ者ですね♥」

「…では、マシュよ。あの男と私のモノを知ったお前はどちらを選ぶ?」

「もちろんボガード様です♥ 先輩との仲は数年かけてもあまり進展しませんでしたし、今のわたしは男の基準もオチンポの基準もぜーんぶボガード様に壊されてしまいましたから♥ だから先輩が別の人を選ぶのは正直好都合でした♥ これで後腐れなく先輩とバイバイして、ボガード様とちゃんと結婚できます♥」

「クク、良い返答だ…」

「ぁっ…♥」


───ボガードとマシュの夜は、今日も情熱の色を帯びている。かつてのマシュの淡い色彩では対抗できない程に濃い色彩だ。

そんな二人の左手薬指には、銀色の結婚指輪が燦然と輝いていた。


───


マシュのマテリアルに【ボガードとの絆レベル】が追加されました。


ボガードとの絆レベル:15/15


-概念摘出-

・幸福の結婚指輪

効果:マシュ・キリエライト(シールダー)装備時のみ、自身の宝具威力を300%アップ&自身に「宝具攻撃時に自身のNPを増やす状態(+20%)」を付与

先輩。先輩はお気づきでないかもしれませんが、わたし……先輩のことが好き“だった”んですよ?

でも先輩もわたしもその気持ちには気づかなくて……そうやってまごついているうちに、先輩は別の人と恋仲になって、わたしはボガード様に新しい色彩を与えられてしまいました。

───だから、先輩なんてもういりません♡

さようなら、わたしに運命の人を勘違いさせた挙げ句他の女と添い遂げる鈍感先輩♡ …先輩最低です♡


解説:ボガードとの絆レベル項目が追加された瞬間入手できるボガマシュ絆礼装。

霊衣『シェフィールドの妖精騎士』と『デンジャラス・ビースト』以外の再臨段階では補助宝具なので実質無効となる。

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