猫天与編幕間:食呪編④
「・・・一つ聞かせてもらうぜ、何故お前は俺達を食おうとする?」
「何故?不思議な事を聞きますね?」
愚潤は笑みを保ったまま狂ったように語り出した。
「私は嘆かわしいのですよ・・・人間や獣や虫のような犠牲が無くては生活できない下等生命体がこの地球上を闊歩している姿が・・・!」
愚潤の表情はどんどん歪んでいき涙がで始める。
「だからせめて私のような生物として圧倒的に優れた存在の糧として食べてあげているのです!ああ・・・なんと素晴らしい・・・やがて世界から劣等種は消え失せ私の子孫達が地球の霊長類となる・・・この星も私に感謝する事でしょう・・・!」
愚潤は涙を流した、この使命を成し遂げた時の地球の姿、ゴミを有効活用している自分の優しさ、そしてそれを成し遂げようとしている自分の尊さに・・・
「・・・人間の糞如きがよく粋がるもんだぜ」
猫天与のその言葉に愚潤の動きは止まりわなわなと身体を震わせ始めた。
「違う・・・私達は産み落とされたんだ!!貴様達のような下等生物を殲滅する為にいいいいいいいいいいいいいい!!」
愚潤は奇声を上げながら自分の素晴らしい使命を再確認し涙を激しく流し始める、だが突如としてその涙はすんと止まり笑みを浮かべながら猫天与をしっかりと見つめる。
「まぁいいでしょう・・・この身体の試運転になってもらいますよ!!」
地面を蹴り上げ愚潤は猫天与に鉤爪を突き立てた、だが猫天与の身体は凄まじい速さにてその鉤爪を回避し足元に滑り込み背中に蹴りを叩き込む。
人類最速の速さは時速37Km、しかしながら猫は野良猫が時速50㎞で走る事ができ猫天与はそれに加えて常人なら死ぬような・・・というか何回か死んだ鍛錬や呪力強化も加わるのでその速度は大体時速100 ㎞前後である。
因みに伏黒甚爾や投射は作中の描写から時速108kmを軽く超えていると推測される、少なくともこの場ではそう扱う。
「少しはやるようですねぇ・・・」
愚潤は猫天与の蹴りを物ともせず振り向いた。あの鱗がある限り物理攻撃は大幅に軽減されてしまいほとんどダメージにはならない。
「オラァっ!!!」
猫天与は愚潤に真正面から飛びかかり爪を赤い目に向かって突き刺そうとする。
「おやおや・・・真面目にやらないとダメですよ?」
愚潤は猫天与の腕をがっしりと掴み止め爪は眼前にて止まる。
だがその瞬間猫天与の爪先から軽い呪力砲が放たれ愚潤の眼球に直撃きた。
「がア"ア"ア"ア"っ"!?」
目は大量の神経が通っておりさらには脳と繋がっている重要な器官である、ここを攻撃されたら呪霊とてひとたまりではない。
更には食らったのが呪力砲なのも相まって眼球の水分は沸騰し泡立って絶え間ない激痛と吐き気が愚潤を襲っていた。
「今だぁ!!!」
猫天与は愚潤が怯んだその瞬間尻尾を愚潤の腕に巻きつけ回転しその回転力で飛び上がり距離を取る。
そして一瞬にて愚潤に向かって勢い付けながら
拳を肥大化させて殴りかかる。
「ぐあ"あ"あ"あ"あ"あ"っ!!」
人類最速のパンチ力は秒速13.8mである。しかし一般猫の猫パンチの速度は秒速22m・・・デフォルトでこの速度のパンチを繰り出せる生物がそれに加えて鍛錬と呪力強化、更に飛びかかった速度が加わり目を潰されノーガード状態で食らえばばいくら特級呪霊であり高い防御力を持つ鱗がある愚潤でも防ぎきれずダメージを喰らいながら吹き飛ばされる。
「よし・・・今のうちに・・・!」
※※※
「お"の"れ"え"え"え"え"え"え"!!!!」
愚潤は目を一旦流体化し再構成し始める。
そして風を切る音と共に猫天与の前に現れる。
「もう遊びは終わりだ・・・!」
「・・・!!」
愚潤は口にメガホンを装着し奇声を上げた。
「コ"ケ"コ"ッ"コ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"!!!!!!!!」
そして愚潤は同時に猫天与を狙い撃つために指先に呪力砲を溜める。
その音は猫天与に直撃し意識を・・・
特に狩ることは無く猫天与は愚潤の指先に掴みかかる。
ポキリ
「ぐあ"あ"あ"あ"あ"あ"っ!!」
指をへし折られた激痛に愚潤の表情が歪んだ。
「何故だ・・・!何故この音で動け・・・!!」
愚潤は気づいた、猫天与の耳から血が流れている事に。
「まさか・・・!!さっきの一緒で自分の鼓膜を潰したのか!?だが・・・!!」
「・・・・・・」
猫天与は危機感を抱いていた、一級が対処出来る並の特級ならまだしも相手は大量の術師(獣)を取り込んだ呪霊である。
それに先程の攻撃もダメージこそ入っているがそれで致命傷を負っている様子は無い。
「ここで死ねぇ!!!!」
愚潤は蹴りを放つも猫天与は咄嗟身体をU時に背中同士くっつくまで曲げて回避する。
(クソ・・・まだかよ・・・!?)
「ここで・・・死ねぇ!!!」
そして愚潤の蛇の口が猫天与に向かって伸び・・・
その口の中に大きな槍が突き刺さった。
「・・・やっと来たか空・・・!?」
猫天与は驚愕する、何故から隣には本来猫天与が時間を稼いでいる間逃がす予定だった・・・
「なんできやがった六月!?」
「・・・ごめん」
空鼠は愚潤の前に立ち塞がる。
「・・・時間稼ぎの役の交代というまでだ」
「・・・はぁ!?何を・・・!?」
「・・・我が時間を稼いでいる間に・・・もう一度夢馬の時の合体をしろ!!」