猛暑、休日にて。

猛暑、休日にて。

死体処理専門の二級術師、傀儡呪詛師

高専2年時、夏。


「うぇ〜〜...あっぢーー...溶ける...」

「態々口に出すな、余計暑くなる」

それは途轍もなく暑い日だった。もう暑い、気温が30度とかふざけた数字を叩き出した猛暑日だった。

休みが2人揃って重なったから、デートしようだなんて誘われて。いざ街へ下ってみれば猛暑と人混み。熱帯へと移り変わったのかと言うくらいに暑かった。

夏場、7月も過ぎた頃。繁忙期半ばも過ぎた時期に、茅瀬と露鐘はいた。

「大体、なんでこんな暑い時に下ろうなんて言ったんだよ。お前身体弱いだろ」

「そ、れはそうだけど...こんな時に死体使っても腐るだけだし」

「まぁ、一理ある。でも蟲の死骸も使えるじゃん」

「何が好きで蝉やら百足やらを使役しないといけないわけぇ!?死体だって嫌なのに...」

しょぼくれた表情で木陰のベンチに座り込む。見れば日傘をしている男女に帽子を被った家族連れ。プールに向かう子供の群れもいる。それに比べてどうだ、露鐘は薄手のパーカーに短パン、帽子はしないと来た。日中暑いのに日焼け対策も一切していない。返って茅瀬は帽子を被って、最低限肌を守るような服装だ。しかも涼しそう。

「...」

「どうしたの、こっち見て」

「いや、なんでも...」

まさか服のセンスやら見た目やらで悩む日が来るとは。内心1人凹みながら、パーカーのファスナーを下ろそうと手に掛けて、ガシッと掴まれた。

「何しようとしてんの」

「そっちこそ」

「良いから眞尋、何しようとしてるの?」

「何って...ファスナー下ろすだけだけど」

「絶対ダメ」

意味深に露鐘を睨みつけて、その視線を鋭くさせる。いつにも増して強い目力に露鐘が窄み、渋々ファスナーから手を離した。

「今日絶対に下ろしちゃダメだからね。絶対だよ」

「暑さで死んだらお前のせいにするわ」

その言葉で再び立ち上がり、付近の涼める場所を探す。茅瀬も立ち上がって露鐘の手を取る。

「近い」

「近くしてるからね」

「暑い」

「日が強いからね」

「...はなれて」

「絶対やだ」

はぁ、とため息をついて歩き出す。呪霊が盛んな中取った休日。無駄にするわけにはいかないのだ。

そう思い、引かれる腕と手に従って、露鐘は茅瀬の後ろを歩いた。




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