狩り大会⑤

狩り大会⑤


※頂上戦争後、新世界前の時間軸

※エミュがうまくいってない

※画像はネットのフリーのやつ

※捏造妄想100%です注意



「そこだ!やっちまえ!」

「ペンギンの野郎、落ちやがった!ざまァ!」

 ローがシャンブルズでポーラータングの甲板へと戻ると、案の定クルーたちは拳を振り回してヤジを飛ばしていた。攻撃が入るたびに口笛と歓声が上がる。この狩り大会という恒例行事は、もはや娯楽の1つとしてクルーたちに楽しまれているのだ。

 そのかたわら、せっせと釣り具の用意を始める者もいる。このあと仕留めた海王類を解体すると、おこぼれを狙って魚が集まってくる。魚好きのクルーのためにそれを釣り上げるのも大切な仕事だ。

「ひるんだぞ!しゃッ仕留めた!」

「フゥー!さすがだぜ!よっ、名バッテリー!」

 やがて天を割くような海王類の断末魔が聞こえ、いっとう大きな波が起きた。ポーラータングは波壁をいくつも乗り越え、肉の島で手を振る仲間たちに近づく。それぞれの健闘をたたえ合い、狩り大会はじつに慎ましく終了をむかえたのであった。

「キャプテン」

 ジャンバールがローに声をかけた。

「これも作戦のうちか?」

「撒き餌だ。あいつらの好みは新鮮な海王類の肉だからな。数日にいっぺん似たようなことをするが、これほどの大物がかかることはめったにない」

 ローが小さく「今日は大漁だ」と言った。そしてちらりとジャンバールの腕の中にある『カルテ』を一瞥し、再び口を開く。

「読んだか」

「ああ」

「あいつらが…恐ろしいか」

 ジャンバールは口ごもるローを意外に思った。死の外科医の異名をもち、残虐と世間に知られる彼の素顔はことのほか繊細で人間味にあふれる。ほんの少しの不安をはらんだ瞳がフイと逸らされてしまわないうちに、ジャンバールは彼の問いに答えた。

「まさか。もっと恐ろしいものをいくらでも見てきた。人の形をした神に比べたら、あいつらなど天使のようなものだ」

 フッと笑ってジャンバールが言うと、ローは一瞬キョトンと目をまん丸にし、たまらずプッと吹き出した。なにしろ彼のいう天使たちが血みどろになりながら海王類を解体しているのだから、その反応も無理はない。

 ローはなおも肩をゆらしながら、手を差し出した。ジャンバールは自分のものよりはるかに小さいそれを優しく握る。

「改めてハートの海賊団へようこそ。歓迎しよう、ジャンバール。それと、」

「ん、ぐ、いだだだだ…」

「遠慮はいらねえ」

 握ったジャンバールの手を、ニヤニヤと怪しく笑ったローが締め上げる。痛みにあえぐジャンバールを見て、イタズラに成功した子供のようにご満悦だ。

「キャプテーン!切るの手伝ってくださーい!今日ロクに働いてないんだから!」

「働いただろ」

「見てただけでしょーが!」

「管理職ナメんな」

「能力で切ってくれたらすぐなんですけどねぇ!」

「チッ…」

 海王類の解体を進めていたクルーらから声がかかる。彼らが持つ剣や包丁はすでに血と脂肪でベトベトだ。塩漬け用のタルがいくつも整列してる間を、コックが忙しなくバタバタと走り回る。

 ローは口をへの字にしながらぶつくさ言うも、手に持つ鬼哭はおろさない。なんだかんだ言いながらも、クルーの頼みは断らないのが彼なのだ。いつの間にか甲板に出てきたイッカクとハクガンに手を引かれ、べポに背中を押され、四面楚歌で連れて行かれた。きっとすぐにもみくちゃにされるだろうことは、入団間もないジャンバールにも容易に想像できた。

「おーい、ジャンバール!今日は宴だと!」

「準備てつだってくれ~」

「喜べ!肉が食い放題だぞ!」

 揃いのツナギが大きく手を振る。ジャンバールは『カルテ』を汚したりしないよう、大切に大切に胸ポケットにしまった。


 『カルテ』に書き込まれた流れるような筆記体の隙間という隙間に、少し大きく無骨な文字が並ぶようになるのは、そう遠くない未来の話である。




 

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