狩り大会②
※頂上戦争後、新世界前の時間軸
※オリジナル海賊団(敵)がいる
※エミュがうまくいってない
※画像はネットのフリー素材
※捏造がいっぱいです注意!!!
船が突然激しく揺れた。まわりを見渡すが、異常はなにも見られない。オキアミ海賊団の船長オキアミは見張り台に立つ男に声を張り上げた。
「なにか見えるか!」
「いえなにも!なんスか今の揺れ!」
「わからん!」
海面じゃなければ海中か。この海域は岩場など無かったはず。海王類のいたずらか。考え得る可能性を頭に浮かべながら、海をのぞき込む。巨大な背びれや尾びれは確認できない。しかしその代わりに見えるのは、黄色くて丸いなにかの影。
見たこともないそれに、オキアミはたっぷりとしたあごひげを撫でながら首をかしげた。それはどんどん大きくなりながら船へと迫る。やがて海が小高い丘のようにせり上がり、バカにしたような笑いをはり付けたジョリーロジャーが顔を出した。
「て、敵襲~~~!」
「戦闘用意!」
見張りの男が警鐘を打ち鳴らしたことで我に返ったオキアミは船員らに敵船を迎えうつよう指示を出した。自らも剣を抜き、金属製の黄色い船を睨みつける。そこに涙と鼻水で顔面をぐちゃぐちゃにした新入りが、バタバタと走り寄ってきた。
「オキアミ船長~!」
「何をやってる!おまえも構えろ!」
「船長、船底から、侵入者がッ」
「あァ⁉」
「2人組が、船底から、恐ろしく強ェんだ、穴開けて入って来やがってよォ!」
新入りは完全にパニックになっていた。足元から伝わる細かな衝撃と船員たちの情けない悲鳴、傾き始める船に、襲撃はずいぶんと前から始まっていたことが今さらながらにわかった。
「バカヤロウ、怖気付いてんじゃねぇ!手前ェも海賊なら武器ぐらい構えやがれ!」
新入りの胸倉を掴み上げ発破をかける、その数秒の小間のことだった。船員らに「船長!」と呼ばれて気づくと、いつの間にか白いツナギの集団が乗り込み武器を振り回していた。その人数はたったの数名ほど。何十人も乗り込んだオキアミ海賊団にとって、いつもであれば屁でもないような相手なはずである。しかし白いツナギはいっこうに減らず、味方ばかりが倒れゆく。
オキアミは掴んでいた新入りを乱暴にぶん投げ、目に止まったひとりの男と向かい合う。武器のぶつかり合う高い音、発砲音と火薬のにおい、上がる血しぶき。それらとはまるで別世界にいるような男だった。なにしろこの戦いのさなかに優雅に足を組んでタルに腰かけ、のんきに指のささくれをいじっているのだ。
「トラファルガー…ロー!」
そいつは手配書や新聞でよく見かける顔だった。いったいこれまで何をしてきたのか、若造のくせに懸賞金は億を超えた大型ルーキーのひとりである。だからといって賞金額は強さだけを語るものではないということを、オキアミは知っていた。
名前を呼ばれたローがチラリと顔をあげた。その間も、船の勾配は増すばかりだ。
「おれのことは気にするな。ただの引率だ…この遊びのな」
「フザけるな!何が遊びだこのガキが!お前はおれが相手になってやる!」
オキアミが剣を向けながらローににじり寄る。ローは長い刀を抜きもせずになおも座ったままだ。まるで公園で一息ついてるふうに、あくびをしながら足を組み替える。なんの気はない日常の行動である。しかしそこから察せられる果てしない無関心がさらにオキアミをイラつかせた。武器を持って目の前に立っていてなお、ここまでバカにされて黙っていられる海賊などいるはずもなく。
「この野郎ナメやがって!」
ついにオキアミの頭の中でプツリと何かが切れた。
剣を振りかぶる。スカした顔に刀身をぶち当てれば勝ちだ。
ローと一瞬、目線がかち合い。
「はいごめん、ちょっとどいて~」
「ぶへェッ!」
オキアミの攻撃がローに当たることは無かった。背後から知らない男の声が聞こえたと同時に頬を何かで殴られたのだ。
衝撃でオキアミが宙を舞った。顔の骨という骨から嫌な音が聞える。頭が芯から揺さぶられ一瞬気が飛んだが、海に叩きつけられたことでハッと意識が戻った。
酸素を求めて海面をめざす。やっと顔を出せたと思った矢先、息をする間もなく体が沈んだ。何者かに足を掴まれている。
ギョッとして足元を確認すると、そこにいたのはファンシーな白黒のキャスケット帽とサングラスが特徴的な男だった。ニヤリと弧を描く口から、白い歯が不気味に覗いた。
どんなにもがいても無駄だった。悲鳴すらあげることも叶わず、空気は逃げていくばかり。そうやってオキアミは暗い海中へと引きずり込まれていく。薄れゆく意識の中で、ただ「悪魔だ」とだけ思った。
ペンギンはポカンと呆けながら、自分の手と飛んで行ったオキアミを交互に見た。やっちまったなァと頭の後ろをポリポリと掻いて、目当てのローに近寄る。一連の流れを見ていたローは眉のひとつも動かさず、じつに涼しい顔である。
「ちょっと張り倒すだけのはずだったのに、ずいぶん飛ばしちゃったなぁ。話し中でした?」
「あいつが弱すぎるだけだ。気にするな」
「こんなに力加減を間違えたの久しぶりですよ。ああそうだ、船底で遊びすぎちゃいましてね、この船あと10分もちません」
「…チッ、やり過ぎだ」
いつの間にか剣のぶつかり合う音も、発砲音も止んでいた。聞こえるのはハートのクルーたちがはしゃぎながら血まみれの死屍累々を海に落とす音だけだった。もうすでに甲板はだいぶ海面と近くなっている。そろそろ頃合いだなと、ローも重い腰を上げはじめた。
そのとき、ピリっと空気が震える。ペンギンとローは同時に顔を見合わせ、反射的に動き出した。ペンギンは甲板にいるクルーらに声をかけに。そしてローは。
「シャチ、遊びは終わりだ!ここからだぞ『本番』は!」
敵船の下っ端クルーをもて遊ぶ白いツナギに、あらん限りの声を張り上げた。
続