狐と人の種火

狐と人の種火

(死ネタ・未来捏造注意)


あの人が亡くなった。

「…どう言うことですか。」

それを聞いた、いや聞いてしまった時から、

日常は日常でなくなってしまった。

呼べば貴方は言葉を返し、何も言わずとも寄り添ってくれた。

そんな貴方がいなくなってから、とても辛かった。

全てを虚しく感じていた。

……最近体調が悪い

精神的な不調だろう。

そういえば『アレ』も来ていない。

後で病院にでも行こう。

(病院にて)

「…………え?」

私が妊娠していると聞いた。

まぁ十中八九あの人との間に出来たのだろう

(妖狐と人間の間に…か)

実感が湧かないが確実に命が宿っているのを確信し、私は決意した。

(この子だけは守り抜こう)




[数年後]

あの人との間に出来た子供は、無事に産まれてくれた

子供を抱いた感想は暖かいだったっけ。

(赤ちゃんの時は色々苦労したなぁ、でものびのび育ってくれている。だからかな?この子はとても愛おしい。)


「お母さ〜ん!」

あの子が呼んでいる。

(行かなきゃね。)

「何かあったの?」

「雪が降ってるから外に行こうよ!」

(あの人と付き合ったのも冬の時期だったなぁ…)

「…お母さん?」


「…何でもないよ。」


「ふ〜ん…早く行こうよ〜」


「そうだったね。何して遊びたい?」


「え〜とっ…雪合戦!」


「雪合戦かぁ、お母さん本気で行くよ〜?」


「良いよ、行くぞ〜っそれ〜!」


「わっ!?やったな〜!」


「あっ!当たっちゃた〜」


「お母さん強いでしょ〜」


「私も負けないよっ!それっ!」


[数分後]


「おやつ何食べよっか?」


「えーっとね〜お母さんの作ったガトーショコラ!あれ大好きなんだ!」


「よ〜しっお母さん腕に寄りをかけて作っちゃうぞ〜それじゃおうちに帰ろっか!」


「うんっ!」


……拝啓、愛する貴方へ。


私は今、貴方が遺してくれた大切な宝物(いのち)と

精一杯日々を噛み締めながら、

『生きています。』



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