狂気の司教【導き手の歌姫】ウタ

狂気の司教【導き手の歌姫】ウタ


ウタはループの中で書き続ける事すら放棄する程の周回中に、徐々にインクが彼女の体を覆った。


まるで動く気力が無くなるまで追い掛けた獲物を仕留める様に、インクを体に纏っても何も感じなくなったウタを飲み込んだ。


ウタは漆黒の液体に身体の半分以上を侵食されると、不思議と今まで感じていた失意や絶望といった負の感情が消えて行った。


まるで浄化でもされたかの様な爽快感!正にこのインクは救いの液だったのだ!


(今まで忌み嫌っていた私に、神は救いを齎してくれた!何万回も殺して来た罪深き私に再生のチャンスをくれた!)


そんなウタは奇跡を目の当たりにした信者の様にインクを製造し、このスタジオを汚染したインクマシーンを崇拝した。


「私達は本来踏み入るのですら赦されなかった聖なる液体を利益の為だけに使用し、かの御方を怒らせた!」


ウタは実際その目でインクマシーンが意思を持ってこんな事を仕出かしたなんて知らない。


彼女の独断により生まれた仮説に過ぎぬが、救われたと感じて人生の絶頂期に居るとすら思っているウタはそうに違いないと思って周りに伝える。


「けれど神は慈悲深い方であられた!罪深き私達は許しのチャンスとしてこのインクの溢れるスタジオ御用意してくださった!」


こんなスタジオに閉じ込められたのに、ソレが神の慈悲だと語るウタをサッチャーズ達を良く思わず、何度も攻撃をされて殺される。


しかしウタは周りに宣言するのを止めない。ソレこそが罪深き大量殺人犯の自分に出来る唯一の事だと考えて。


今日も彼女は壊れた肉体で持って動く

Report Page