『犬吠埼家の七月七日』

『犬吠埼家の七月七日』




——これは夢だ。

アタシはそう断言できた。

だってアタシが幼い樹と小さなワイの手を引いて歩いている。

確かこのころの樹は今よりもっと人見知りで甘えんぼだったっけ。

ワイは犬吠埼家に来たばかりで全然馴染んでくれなかったけど、弟ができて嬉しかったアタシは色々な所に連れ回した。

ワイは文句を言っていたけど、なんだかんだ言って最後までアタシに付き合ってくれていたのを覚えている。

ワイは小さな笹を、樹は短冊を持っていてこの日が何だったのかを嫌でもアタシは思い出して——目が覚めた。

 

 

—————

 

 

「風、気分でも悪いのか?」

「ワイ……やっぱアンタには隠せないわねー」

 

夕食を終えて、樹に洗い物をやっておくからとキッチンを追い出されて自室で寛いでいると、ワイから声がかかった。

この様子じゃあ樹にもバレてるみたいね、とアタシは嘆息する。

 

「昔の事を夢で見ちゃってね……」

「昔……今日の事か?」

 

ワイに当てられてアタシはドキリとした。

どうしてか恋人になってからのワイは鋭くなりすぎてないかしら。

アタシや樹の事も簡単に見透かされてしまっている気がするわ。

ワイの言う通り今日のアタシは丁度昔にあった今日の出来事を思い出してしまって気分が悪いのを隠していた。

 

——『ほんとうのお父さんとお母さんに会いたい』それがあのときのワイが書いた短冊の願い。

 

あの時のワイの願いが叶わないものだって当時のアタシだって知っていた。

だからワイが犬吠埼家に馴染めるように目いっぱい構ったし、スキンシップも激しくした。

でも、今度はアタシと樹の実のお父さんとお母さんが居なくなってしまった時の悲しさを知って、アタシはなんて無責任なことをワイにしてたんだろうって思った。

ワイの悲しみをアタシは何も分かってなかった。

もっとワイに寄り添ってあげれば良かったんじゃないかって。

そうしたらワイがアタシたちのお父さんとお母さんの事をもっと早く受け入れることができて、お父さんとお母さんが居なくなる前にワイ自身の思いを伝えられたんじゃないかって……。

アタシは今日という日が来るたびに思い出してしまうのだ。

 

「なあ風、確かに俺はもっと早く親父さんとお袋さんのことを受け入れたかったって、そう伝えたかったって思ってる。でもな、こう思うことができたのは風と樹がいたからなんだよ。」

「アタシと樹?」

「風が俺に構ってくれたり、樹が俺に甘えてくれなかったら俺はずっと馴染めなかった。みんなの事を好きになれなかったって思うんだ。だからありがとな。こんな俺の事を受け入れてくれて」

「ワイぃ……」

「泣くなよ風」

 

涙が溢れて止まらなかった。

嬉しくて堪らないのに次から次へと涙が零すアタシをワイは優しく抱きしめてくれた。

 

「それと、これが俺の今の願いだからな。勘違いするなよ……」

「え……」

 

ワイがポケットから取り出した短冊には『風と樹と家族になりたい』と書かれていて——

 

「昔思ってたようなのじゃないからな。ちゃんとその……結婚して家族になるっていう……」

「ワイ……」

 

照れてしまったのかだんだんと声が小さくなっていくワイが可笑しくて、それ以上に愛しくてアタシはワイの頬を両手で包むとそのまま顔を近づけてキスをした。

 

「んっ♡ ちゅう♡ んんっ♡ ちゅぷっ♡ あっ♡ んんん~~っ♡」

 

ワイもアタシのキスに応えてくれると、角度を変えてさらに深く口付けられた。

激しいキスで腰砕けになったアタシがワイにしな垂れかかると、お尻を撫でられて腰に硬くて熱いものが押し付けられた。

 

「ひゃあん♡ ワイっ♡ ああんっ♡」

「風、いいか?」

 

ワイの目はアタシを食べたくてたまらないといった感じだった。

アタシから誘ったとはいえこの先の事を期待してか、アタシの子宮はキュンと疼いた。

愛撫もされていないのに膣から愛液がつつーと太腿を伝っていくのが分かって恥ずかしさで頬が赤く染まる。

すっかり発情してワイの子を孕みたがっているアタシに言えることは一つだけだった。

 

「ワイ♡ アタシもワイと家族になりたい♡ ワイの赤ちゃん孕ませて♡」

「勿論だ風“ぅ——!!」

 

ベッドに押し倒されたアタシは今日もたくさんワイのを注がれるのだろう。

身体も心もワイの愛で満たされて、アタシはきっとワイの子を孕むのだろう。

それが今日であるかは分からないけれど、それが待ち遠しくて、早くワイと家族になりたくて、アタシはワイと深く愛し合ったのだった。

 

 

——勿論アタシとワイのほにゃほにゃに樹が気づかないはずがなく、アタシと一緒にたっぷりとワイと愛し合ったのは言うまでもないことでしょうね。

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