父上の日記
あまりにも膨大な量の為重要部分のみ抜粋。
x月x日
いつものバードウォッチング中に、見慣れないカモメを見つける。
新たに入った雑用係だろう。金色のふわりと輝く癖っ毛におずおずとした足取り。中々可愛らしい。観察対象とする事に決めた。
同月x日
例の雑用係はバケツをひっくり返したり転んだ弾みで海へと転落したりと目が離せない程のドジだ。あのドジさで海兵を志望した理由は何なのだ。とにかく見ていると心臓に悪い。
x日
例の雑用係…MC01746は大将センゴクの養子であるという。至急身元を調べさせる事にした。恐らく戦争孤児であろうが、念の為だ。
x月x日
MC01746が軍曹へと昇級。連日の血の滲むような努力を考えると当然の事だろう。
x月x日
MC01746の姿が突如として消えた。まさか死んだのではあるまいかと不安になるがそれは考えられない。もし死んだ暁には遺体を寄越すよう大将センゴクに言いつけてある。何も連絡が無いのだから何処かで息をしている事だろう。
x月x日
MC01746が1ヶ月ぶりに帰還する。謀報員である事が発覚。何という事だ。観察が捗らないでは無いか。
x月x日
MC01746が少尉へと昇級。海軍将校となる。正義コートを誇らしげに羽織っている。
x月x日
MC01746がまた任務につく。我々の特権を利用しても任務先は秘匿の為、暫くはMC01746に会えない日々が続く。
x月x日
一年振りにMC01746が姿を見せる。また背が伸びたようだ。一段と美しくなった四肢で走り回るMC01746は、どのカモメよりも素晴らしい。
同月x日
MC01746の身元が判明。極秘情報につき記述は控える。
x月x日
MC01746が長期任務につくとのこと。先月中佐に昇級したばかりだが、ドジを除けば彼は優秀なカモメだ。きっとやり遂げる事だろう。(中略)MC01746の無事を案じながら今日はもう眠る。
x月x日
MC01746が死んだ。
同月x日
MC01746はドンキホーテ海賊団のコラソンとして死んだ。
兄がMC01746を殺した。かの悪名高きドンキホーテ・ドフラミンゴが私のMC01746を殺した。⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎(塗りつぶされていて先が読めない)
同月x日
MC01746の剥製が出来上がる。
こんなもので私の心が満たされるものか。
x月x日
気が進まないが、ドレスローザ王国への出張に赴く。妻と息子も同席。空を飛ぶ国王ドンキホーテ・ドフラミンゴの姿を確認。
あの時の、息子の惚けたような顔が頭から離れない。私にはもう何もできない。早く剥製MC01746に会わねば、気が狂いそうだ。MC01746にそっくりな四肢を伸ばすドンキホーテ・ドフラミンゴの姿も、取り憑かれたようにそれを見つめる我が子も、全てが苦しい。あの桃色の怪鳥を殺してしまいたい。
同月x日
あれから息子は気が狂ったように鍛錬に励んでいる。もうどうでも良い。MC01746の剥製だけが私の慰みだ。